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クラス丸ごと異世界召喚~無人島から始まる異世界冒険譚~  作者: 久遠
第三章・獣人国編

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81・取り敢えず上を目指します

ブックマークにて応援して下さった方々に感謝ですm(__)m

熊モドキがドロップしたらしき宝箱(状況的におそらく)や、熊モドキの魔核と『迷宮』の砕けた『核』をかき集めて一つに纏め、リルの背中へと乗せさせて貰う。


ついでに、全力での練気を行ってしまった代償として、身動きがとり辛くなってしまっている俺本体も乗せて貰う事にする。


「重くは無いかね?辛かったら降りるから、止まるなり何なりして知らせておくれよ?」


『ワッフワッフ♪』


一応、乗せて『貰う』立場に在る以上は、嫌がられているのならばやはり歩こう、と思っていたのだが、リル本人(本狼?)から感じられる雰囲気的に、どうやら楽しんでいると言うか、俺から頼られて嬉しい、とでも言う様な感情を感じられるし、何よりリルのモフモフでフサフサな尻尾が元気にブンブンと振られている事から、おそらくは嫌がってはいないのだろう。


そんなリルに何となく申し訳ない様な気持ちになりながら、肩と首との境目辺りに跨がらせて貰い、荷物の類いを背もたれにするように持っていたロープやワイヤーで固定する。


『ワフン?』


こちらを振り返りながら、『ちゃんと乗った?』とでも聞いて来ている様な視線を向けて来るリルに対して、そのモフモフな首筋の毛皮に身体を倒し、両手を使ってかるくモフる事で準備が出来た事を知らせておく。


すると、一目でテンションが上がっているのが分かる程に耳がピン!と立ち、それまで緩く揺られるだけだった尻尾も勢い良くブオン!ブオン!と音が聞こえて来そうな程の速度で振られ始める。


ハイテンションワンコ可愛いなぁ……何て思いながらその様を眺めていると、若干呆れ気味ながらも、何処か『嫉妬』の感情が混ざっている様にも見受けられる表情にて、ジットリとした視線を送って来ていたリンドヴルムが、まるで自分が言い出さなければ話が進まない、とでも言う様な口振りで話始める。


『……して、これからはどうするつもりなのかのぅ?主殿よ?

一応、主殿らが受けておった依頼である『『迷宮』の『核』を破壊して『迷宮』を殺してしまう』事は先程完遂しておるが、その副題でもあった『魔物の間引き』はまだ完遂した、とは言い難いのが現状じゃ。じゃが、妾達はまだしも、主殿は現状戦力には数えられぬし、そもそもの話として物資の類いが圧倒的に足らぬ。

どのみち、上を目指さねば死ぬしかないのは確定じゃが、取り敢えず合流を目標とするのか、はたまた出会う処を良い事に殲滅しながら進むのか。どちらにするのかのぅ?それとも、それら以外の第三の道を選ぶのか、それだけは明言しておいては貰えぬかのぅ?』


……oh、そう言えばそうだったね……。


リンドヴルムに言われて思い出した危機的な状況に、一応の確認の為に腰のポーチに仕舞っておいた携帯食料の残数の確認と、荷物として一緒に括り付けておいた水筒を確認する。


……ふむ、携帯食料の方は、タツ謹製のカロリーバーが熊モドキとの戦闘の余波で粉砕される憂き目に逢ってはいるが、特には問題なく食べられそうなのがまだ何本か残っているし、俺特性の干し肉もまだ数枚は残っている。

もっとも、この人数で分けて食べるとなると、満腹になるかどうかを無視して分けたとしても、精々持って二回か三回分、と言った処だろう。


水筒として使用している皮袋にしても、幸いにも破れたり漏れたりした形跡は無い為に、最後に飲んだ時から減っている、と言う事は無いにしても、それほどの量が残っている訳でもないので、軽く口を湿らせる程度に抑えたとしても、そう何日も持つ程の量は残っていないだろう。


今まででもっと節約出来ていればまだ話は違ったかも知れないが、さすがにそれは言わぬが華、と言うモノだろう。


……確かに、やろうと思えば、食料や水等の物資を今の倍位は残しておく事は可能ではあった。


今まで受けさせられた修行により、俺達は予め食い溜め等の準備が出来ていれば、大体一週間位は飲まず食わずでも平気で生きる事が出来はするし、そうでなかったとしても、物資を長く持たせる、と言う事に着眼しての節約をするのであれば、ぶっちゃけ多少水を消費はしただろうが、俺だけであれば殆ど物資を使わずに今に至る事は可能ではあっただろう。


……だが、それはあくまでもここに居るのが『俺だけ』であり、その上で『戦闘行為をしない』事が大前提として条件が付く事になる。


ぶっちゃけた話、戦闘行為もこなしつつ、碌に休息やら睡眠やらも取れない様な状況で、物質も節約しながら生き残れ、なんて言われても不可能だからね?


適当に流す程度で良いのなら話は別だけど、普通に命の危機が伴う様な戦闘行為と言うヤツはかなりエネルギーを消費するモノだ。

それ故に、幾ら食い溜めによるエネルギーの貯蓄が下地として用意されているとは言っても、ある程度以上に補給しながらでないと最初はまぁ良いとしても、その次やそのまた次位から動きが鈍り出して来るのはほぼ確定だし、更にその次まで無補給でやるとなると、もはや自殺行為以外の何物でもなくなってしまうだろう。


よって、現在の残物資量は『妥当』なモノであり、別段無駄遣いやら摘まみ食いやらの結果として現在の窮状が在るわけでは無いのである!と心の中だけで抗弁してみるが、それで物資が無い現実が変わる訳でもなく、現状況を再確認させられる事となっただけであった。


「…………うん、取り敢えずは合流を優先目標にしようか?じゃないと、本当に死にかねないから、ね」


『まぁ、それが妥当じゃろうのぅ。して、各階層の魔物は如何するのかのぅ?』


「それは基本放置で構わないだろう。今倒しておけば後が楽になるんだろうけど、それをするには物資が足りなさすぎるし、何より戦闘員が足りてないからね。少なくとも、俺はしばらくは戦えないから、リンドヴルムとリルにお願いするしかなくなるからね」


『……まぁ、あれだけ無茶をすれば、当然じゃろうのぅ。なら、道中見掛けたモノであれば、行き掛けの駄賃に倒しておいても良い、と言う事じゃろうかのぅ?』


「増えるのお前さん達の手間だから俺はどうとも言えないけど、そうしてもらえると有難い、かな?まぁ、無理をしない範囲でお願いね?」


『魔物の件は、それで了解したのじゃ。それと、一応聞いておくが、宝箱の類いを発見した場合はどうするのじゃ?今は放置するのかぇ?』


「あーっと……それは、どうしようか?別段、俺達とメインターゲットでない以上、無視しちゃっても構わないと言えば構わないんだけど、何か面白いモノが入っていたりすれば純粋に嬉しいし、何より『目に見える成果』として残るモノが在るかどうかは、結構士気に関係するからねぇ……。

まぁ、見付けていない現状で考える事じゃあ無い、か。取り敢えず、故意に探す事はせずに、見付かったらその時に考える、ってことで良いかね?」


『うむ、任された。では、そろそろ行くとするかのぅ?流石に大丈夫じゃろうとは思うが、主殿の仲間達の方も、先程の様な事が無いとも限らぬのじゃから、早めに合流を図るに越したことは無かろうのぅ』


「……で?本心の方は?」


『主殿謹製の干し肉も悪くないのじゃが、いい加減携帯食料は飽きたのじゃ!さっさと合流して、早い処旨いモノを思う存分食いたいのじゃ!』


「……さいですか……。まぁ、俺もさっさと合流する事に異議は無いから、早い処合流を図るとしますかね。と言う訳で、リル、頼んだ!」


『ウォン!』


まるで『任せて!』とでも言いたげな表情と視線にて、意外な程に円滑な意志の疎通を見せるリルと、自らの食欲の為にやる気を見せるリンドヴルム。


そんな二人(二頭?)の様子に笑みを溢しながら、両者の更なるやる気を引き出す為に、魔法の一言を付け加えておく。


「良し!じゃあ、さっさと合流して、タツに頼んで旨いモノでも作って貰おうぜ!俺はいい加減魚が食いたい!」


『おお!それは名案じゃのう!タツロウ殿の料理は絶品故、早く合流するとしようかのぅ!』


『ワフン……?』


一人だけ情報の足りないリルが首を傾げるが、そんなリルに対してリンドヴルムが色々と吹き込んで行く。


『お主は知らぬじゃろうが、主殿の仲間であるタツロウ殿の手掛けた料理は素晴らしいの一言に尽きるのじゃよ!あの料理の味を知らぬままで居るのは、食を必要とはせぬ妾達にとってさえも『人生の損失』と言っても間違いではないじゃろうのぅ!

……いかん、思い出したら、減るハズの無い腹が減って来てしまったのぅ……。嗚呼、タツロウ殿の手掛けた『はんばーぐ』が食いたくなって来たのぅ……』


『ウォン!?』


リンドヴルムの説明に『マジで!?』とでも言いたげな視線を向けた直後に、首を回して俺へと視線を向け、まるで『早く行こう!』とでも言って急かす様な雰囲気を纏い出したリルに対して、あまりの可愛らしさから思わず顔を綻ばせながら、首筋を叩いて出発の合図を出してやると、待ってました!と言わんばかりの勢いでボス部屋から飛び出し、飛びながら並走するリンドヴルムを置き去りにしかねない程の速度で、俺達が降りてきたのとは別の階段へと突入して行くのであった。





******





血塗れな大男が、喪った右腕の根元を押さえながら、自身と同じかそれ以上に赤く染まっている小柄な影へと声を掛ける。


「…………生きているか……?」


「……まだ、ギリギリ、ね……」


そう、血痰が込み上げるのを咳払いで無理やり抑え込みつつ、最期の足掻きとして貰ってしまった一撃により腹部に大きな裂傷を受け、(はらわた)が飛び出しそうになっているのを無理やりに手で抑え込みながら応える影は、力なく壁へともたれ掛かってはいるものの、その声と目からは未だに死の気配を感じ取る事が出来ない程度には、生命力を感じさせるだけの力が未だに込められていた。


その二人の近くには、未だ消滅仕切っていない魔物の無惨な死体が二つ転がっている。


それぞれ、元は前足が四本在った獅子であったり、翼を生やした双頭の虎であったのであろう事は、残されている原型や周囲に散っているパーツから推測するのは不可能ではないが、ほぼ確実に『多分』や『きっと』が頭に付く事は間違い程度には激しく損傷してしまっている。


……一見、無惨に殺戮を行う為だけに成された惨劇である様に見えるかも知れないが、それを行った二人がタツとレオであり、その二人の事を多少なりとも知っていたのであれば、この状況が起こるべくして起きた現象であるか、もしくはそうせざるを得なかった状況まで追い詰められていたのか、の二択であった事を理解するのは、そう難しくは無いだろう。


そんな二人が失血のショックや、物理的に受けたダメージ等で倒れ込みそうになるのを、二人の指示で後方に下げられていた他の女性陣が駆け寄ろうとするが、本人達の『来るな』と言う身振りによって拒否された為に中途半端な位置で止まってしまう。


だが、そんな女性陣の中から長大な影としなやかで素早い影が飛び出して行き、二人の拒否を無視して血止めの為に傷へと手を当てたり、自身の救命キットから包帯を取り出そうとしたりする。


「……汚れるから来るな、と言ったつもりだったのだが……?」


「そう言われたからと言ってぇ、愛しい旦那様に駆け寄らない女は居ませんよぉ?少なくともぉ、私は違いますからねぇ?」


「……変な奴だ……」


「うふふぅ♪変で結構ですよぉ」


そう、視線に悲しそうな色を混ぜながらも、それを気取られまいとして、半ば無理やりに笑みを浮かべながら、タツの喪われた右腕を止血しようと試みるサーフェス。


「……ちょっと~?結構痛いんだけど~、もう少し優しくしてくれないかなぁ~?」


「そう言うのは良いから!早く血を止めないと!あぁ、何で!?何で止まってくれないの!?早く、お願いだから、早く止まってよ!!?ボクの血で良ければ好きなだけ上げるから、お願いだから止まってよ!!!」


「……パニックになりたくもなるのは分からなくも無いけど~、そうやってモタモタされたりワタワタして無駄に物資を使われるのは好きじゃないからさ~、ちょっと落ち着こうか~?」


サーフェスと同じ様にレオへと駆け寄ったシンシアだったが、余りと言えば余りな光景に持っていたハズの冷静な判断力をおもわず手離してしまい、焦りとパニックによって無駄にガーゼや包帯を傷口に押し付けて止血しようとしたり、手元を狂わせて傷口から溢れそうになっていた内臓に、直接触ったりしてしまっている。


そんな風に動転してしまっている二人に対し、ほぼ同じタイミングで溜め息を漏らしたタツとレオは、二人の暴走を止める為に一旦傷口を抑えていた手を離すと、それぞれにすがり付く様にしていたサーフェスとシンシアの頭に手刀を落とす。


「「痛っ!?」」


突然の衝撃に、思わず、と言った感じで手の動きを止めるサーフェスとシンシアに対して、タツとレオはそのまま傷口を抑えておくように、と指示を出しながら、タツは自身のポーチから、レオは『技能』である『空間収納』から特徴的な蒼さの液体が入った瓶を取り出して、『これが在るから大丈夫だろう?』と言い聞かせる様に、目の前で軽く振るって見せる。


それを見て思わず


「「あっ!?」」


と声を漏らすサーフェスとシンシア。


どうやら、目の前の出来事に動転し過ぎて、自分達も配給されていた命の水(エリクサー)について忘れてしまっていた様子である。


そんな二人を尻目に、四肢の欠損やそれに準ずる大怪我を負っている二人が瓶から直接飲み下し、襲い来るであろう『その感覚』に備えて壁を背にして座り込む。


「…………!?……ぐっ!?これは……なかなか……!」


「うわぁ……。確かに、これは~、タカが言うだけの事はある!……みたいだねぇ~……!?」


自身の身の内から沸き上がる、痛い様な熱い様な痒い様な、そんな形容し難い感覚に襲われた二人は、予め経験者であったタカから話を聞いていた為、ある程度の覚悟を持っては居たのだが、下手をすればその心構えを突破され、その場で転がり回る事になりかねない程の内側からの衝動と感覚を、必死にその場で抑え込む。


そんな二人の様子を、経験の有る獣人族(ベスタ)組は『あぁ、アレって結構キツいんだよねぇ……』とでも言いたげな遠い視線を向け、それ以外の女性陣は『決して使うような羽目にはならないでおこう』と固く心に誓いを立てる。


そんな二人がどうにか再生(見た目的に『治療』では無かった)を終え、もぎ取られた腕に付けられたままであった籠手を回収したり、突き立ったままになっていた得物を回収してから、練気による反動が降りかかりつつある身体を押して他の面子に行軍の指示を出し始める。


そして、先程の戦闘には参加出来なかったから、と言う理由から、女性陣が率先して戦闘を受け持ってくれる、との流れになった為に、休息も兼ねて後方に下がっていた二人が、互いにしか聞こえない程度の音量にて会話を始める。


(……どう思う?)


(……それは『どれ』について?本当なら、俺達全員さっきの魔物に殺されていた(・・・・・・)事?それとも、さっきの魔物達が、突然弱体化した原因について?もしくは、逃げていった魔物が襲いに来ない処か、新しく湧いて来ない(・・・・・・)事についてかな?)


(……どれも、だ。……正直な話、俺はそれらの原因が全部同じだと思っている)


(……つまり、タカが何かやらかした、と?)


(……状況を見る限り、おそらくそれしか在るまい)


(……まぁ、そうだとしても、そうでなかったとしても、どのみち下まで降りて行かないと確かめ様が無いけどね?)


(……それは、確かに、な。……あいつも酔狂な事だ。何処まで落ちたのかは知らないが、態々下に降りて行く何て、な)


(……それを僕らが言わない方が良いんじゃないの?)


(……違いない)


そんな風に会話を締め括り、他の面子に足並みを揃える為に歩き出した二人だったが、その予想が的外れ等ではなく、思いの外正鵠を射抜いていた事を知るのは、もう少し後のお話。

面白い、かも?と思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等にて応援して頂けると大変有難いですm(__)m

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新作始めてみました 『血塗れの殺し合いはもうお腹いっぱいだったので、テンプレ展開を期待して追放される為にわざと非戦闘系スキルばかり選んだら、何故か戦闘系スキルの連中を差し置いて『救世主』扱いされる様になりました』 珍しく戦闘少なめなコメディよりの作品になってます ……なってるハズです 良かったら読んでみて下さいm(_ _)m
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