26・取り敢えず奴等をどうするか話し合います
ブックマーク登録ありがとうございますm(__)m
※注・今回は人によっては大変不快または凄惨に感じられるであろう表現が使われております。ご注意下さい。
どうやら、俺達が拵えた拠点を、利用者たる俺達が居ない事を好機と見たのか、いつぞやの阿呆共が占拠してくれたみたいなので、どうするのか、どう対処するのかを話し合うべく、女性陣の元へと移動し会議を始める。
「……で、まず初めにコレだけはハッキリさせておきたいんだが、あいつらを『どうする』かだけは、予め決めさせてもらっても良いか?」
そう、口火を切ると、俺が何を言わんとしているのかを、これまでの付き合いからほぼほぼ把握している二人と、俺達がどうするのかに興味が無いらしい、欠伸を漏らしているリンドヴルム以外の面子が顔を見合わせる。
そして、しばらく隣の面子等と小声で話していた女性陣だったが、意を決した様子で先生が手を上げて、俺に発言の許可を求めて来た。
それに俺が『どうぞ』と手で示すと、上げていた手を下ろして、議題を挙げた俺へと質問してくる。
「……小鳥遊君、その……『どうする』か、って言うのは、具体的にはどんな事を想定しているのか、教えてもらっても良い、かな?」
……ふむ……。
ここで、表現をぼかしても、後々実際にヤる事になるかも知れんのだから、やはりストレートに言っておくべきかねぇ?
「……そうですね、ここで変に取り繕っても後々面倒になるでしょうから、俺が今考えているプランを提示しますが、『最後まで大人しく聞く』と約束してもらえますか?」
それを聞いた女性陣は、互いに視線をやり取りするが、一応は合意を得られたらしく、代表で先生が肯定の意を表し、俺に続きを促して来る。
「では、まず一つ目。
『あの拠点は諦めて奴等にくれてやり、俺達は別の場所を拠点とする』
……まぁ、コレはぶっちゃけ『取りうる手段の内の一つ』として提示しているだけなので、俺自身もあまりオススメ出来ません。
心情的に嫌だから、と言うのもある程度の割合で有りますが、ここで奴等に『譲歩』してしまうと、その次やそのまた次の『何か』でも譲歩する事になりかねませんし、何より相手を調子付かせる事に繋がります。
……もっとも、奴等が『怪我人山盛りでもう行き場が有りません』何て状況だったりすれば、話は別かも知れませんけどね」
言外に『多分それは無いだろうけど』と含めた上で伝えてみるが、見回した顔には全て『もしそうだったとしても、この案だけは有り得無い』と書いてあった。
善き哉、善き哉。
ここで『どうあっても助けるべき!』みたいな世迷い事を言い出す間抜けが居ない事に、予想よりも強い安堵感を抱く。
……まぁ、大なり小なり俺達の方が生き残れる確率が高そうだから、と奴等と別離してきた連中なのだから、そんな阿呆な事を抜かす馬鹿は居ないだろうけど。
「問題が無い様なので、残りの二つ目と三つ目も提示しても構わないですよね?
……では、二つ目ですが
『このまま奴等と合流し、いつか来るはずの助けを待つ』
コレが、今のところ一番手っ取り早くて確実かつ、損耗の類いが少ないであろう案になります。
メリットとしては、純粋に人手が増えるので、やれることが多くなる事と、一人辺りのやらねばならない事が減少する事、ですね。
……デメリットとしては、人数が多くなる為に、人のコントロールが難しくなることと、食料等の必要物資が多くなる事ですね。
まぁ、そこに付け加えると、わざわざ切り離した『嫌な奴等』が合流する事になるのと、奴等が大人しく俺達の言うことに従うとは思えない事もデメリットの一つとしてカウントしても良いかと」
コレが今のところ最も安全な案ではあるが、正直言っている俺でも、あまり採りたい案では無い。
何せ、出際にあれだけ跡を濁す別れかたをしたのだから、当然の様に恨まれ、憎まれているだろうし、別段ここで人手が増えた処で手間やら調整やらを考えると、大したメリットが無いのだ。
自分達の事は自分達でやるから、ここに置くだけ置いて下さい、とか言って来るのであれば、まぁ、別に構わない……かな?とは思うが、どうせ向こうのグループのリーダーは大神なのだから、ほぼほぼそうはならないだろう。
むしろ、迎え入れたとしたら、向こうのグループの方が人数が多いから、と主権を主張されてしっちゃかめっちゃかにされたり、自分達の世話は自分達で、とか言って入ってきたとしても、何だかんだでこちらの邪魔ばかりして来そうな予感すらするのだ。
……試しに、予めタツとレオにもこの懸念を話してみた処
「……勘だが、おそらくそうなる」
「僕も~、多分だけどそうなりそうな気がするな~」
とのお墨付きを頂いてしまっている。
なので、余程の事が無い限りは、この案は採りたくないのが心情だ。
……だが、おそらくは、この案に纏まる事になるだろうけど。
……まぁ、別段、リーダーやりたい!って言うのであれば、やらせてやっても構わないと言えば構わないのだが、そうしたらそうしたで、また俺達を『道具』として使いに来るだろうから、あまり歓迎は出来ないし、そうでなくても最低限現状と同じかそれ以上で回せる人でないと、譲ってやる事は出来ないのだけれども。
……誰か変わってくれないかなぁ……。
そんなことを思いつつも、第二案を聞いた女性陣の反応を観察してみると、どうやら第一案よりはまだまし、と言った感じには受け入れられているみたいである。
……まぁ、これならどうにか、俺をして『最悪』と言わざるを得ない第三案を実行しなくても済む……かも知れないね。
「では、次に三つ目の案なのですがーーーーー」
もっとも、この案については、予め『最悪のケース』を想定して貰いたいが為に提案したモノであって、最初から彼女らに実行させるつもりは無いのだけれども。
そして、俺が予め想定しておいた三つ目の案を皆に説明してから、暫しの間反応を伺う。
此方から見受けられる反応としてはまちまちだが、大体半々くらいの割合で『万が一想定通りになった場合実行する』と言う意味で『yes』を選択する人と、『もしそうなっていたとしても実行出来るか分からない』と言う意味で『no』を選択している人に別れている様に見てとれる。
「……小鳥遊君、私達が取れる選択肢って、それしか無いの?他の選択は取れないの、かな……?」
そう、何やら判断が揺らめいている様子の乾が聞いてくるが、俺も今回は厳しく行かざるを得ないので、バッサリと切り捨てるかの様に、少々強目な言葉を使って返事をする。
「悪いが、俺から出せる選択肢としては、この三つだけだ。それ以外の何かが有るのなら、案として出してもらって構わないが、俺としては、出した案が現実性を最優先に考案したモノだと自負している。
……それを否定し別の考えを出す以上、最低でも俺のソレよりもマシな案をお願いしたいね」
半ば喧嘩を売るような口調で、まるで突き放す様な言葉を使っているが、それでもこの問題はどちらかと言うと俺達よりも女性陣の方が、選択をミスった際のダメージが大きくなる問題なので、出来るだけ自分達の頭で考えて決めて欲しいのだ。
……まぁ、万が一に選択を間違える様であれば、全力でケア無いしカバーするつもりではあるけどね?
……いつぞやの連中と扱いが違いすぎる?
そりゃ、当然。
何せ、こちらは女性しか居ない上に、一度はこちらの懐に入ってきた相手なのだから、甘くもなるし助けたくもなる。
……まぁ、それも此方に害が無ければ、の話だけどもね?
そんなことを考えていると、女性陣の間で一通り話し合いが終わったらしく、今度は先生ではなく乾が代表として口を開いてきた。
「……小鳥遊君、決まったよ」
「そうか……で?結局どうするんだ?俺が出した案の中から選んだのか、それとも全く別の案を出すのか?」
「うん、私達は、二番目の案を基本とするけど、場合によっては三番目の案を実行する、って事で意見が纏まったの。
……だから、万が一の場合は、小鳥遊君達に手伝って貰う事になるかも知れないけど、その……お願い……出来る?」
……成る程、折衷案ね。
それならば、確かに判断を誤らないで済む……かも知れなけれど、行動選択肢の多さは現場での混乱に直結するのだよ?
「……それで、そっちの全員が納得しているのか?ぶっちゃけ、先生とかはまだ呑み込めて無いんじゃないのか?」
そう、いつぞやみたいに表情を強張らせている先生へと視線を向けつつ問い掛ける。
「他の案も勿論そうだが、『第三案』を採用するってことは、可能性としてでもどう成りかねないのかは理解しているのでしょう?それを踏まえた上で、貴女は『yes』と言っていると思って間違いは無いのですね?」
どうやら、乾は『覚悟』が決まっている様子だが、パッと見で揺れていそうな先生へと意地悪する矛先を切り換える。
そんな俺の行動で、若干雰囲気が悪くなりかけるが、俺とて好きでやっている事では無い為、半ば無理やり無視して視線で答えを促す。
「……そう、だね……。確かに、私はまだ、そうなった時、ちゃんと行動出来るかは分からないし、それをするだけの覚悟も、まだ出来てない……かな?
……でもね?それでも、こんなにダメダメでも、ここに居る『大人』で『教師』は私だけなんだから、生徒である乾さん達にもそうだけど、小鳥遊君達にも、やらせちゃいけないと思うかな?
だから、もし、やらなくちゃいかなくなったら、キチンと私が、他の誰でもない私がやるってきめたの!なので、私からの答えは『yes』になる、かな?」
……やれやれ……。
内心で溜め息を突き、半ば以上呆れを含んだ視線を彼女らに向けつつも、その覚悟に何処か嬉しくも思ってしまった俺は、軽く首を左右に振りながら両手を挙げて降参の意を示してから皆に謝罪し、その後で実行する際の作戦を詰めていったのであった。
******
作戦を詰め終えた俺達は、わざと大神達に気付かれ、かつ俺達はまだ向こうの存在に気付いていない風に装って森の中を進み、拠点へと近付いて行く。
そして、案の定と言うか、お決まりと言うかは悩ましい処だが、ある程度小屋へと近付いた段階で隠れていた連中が後ろから飛び出して来て退路を塞ぎ、俺達九人を取り囲む。
そんな突然の出来事に動揺しながらも、それまで培ってきた生存本能による反射で、咄嗟に陣形を組んだ……ふりをするが、俺とタツを含んだ四人を陣形の中心に押し込めてしまっている為、今一防御力にも攻撃力にも欠ける状態となってしまっている……様に見えるハズ。
……多分。
……まぁ、その企みが成功(?)したお陰か、こちらの戦力ががた落ちしていると錯覚して、ノコノコとリーダーであると思わしき大神が俺達の前へとやって来てくれているのだけど。
「やぁ、諸君!コレはコレはお揃いで!
それで?わざわざ僕のグループから出て行った君達が、僕達が作ったこの拠点に何用かな?何も無いのであれば、早くお引き取り願いたいのだけど?」
そう、嫌味たらしく俺とタツへと、まるで蔑みの色を隠さずに視線を向けつつ、あたかもこの拠点を築いたのは自分である、と言わんばかりの態度で、本格的に俺達を見下して来る大神。
とは言え、それも仕方の無い事なのかも知れないが。
何せ、今のこちらの状態は、端から見ると大変悲惨なモノに見えるであろうソレを装っているのだから。
女性陣は全員、肌や服を泥や埃で汚し、不自然で無い程度に服のあちこちに切れ目を付けたり、極力傷痕の残らない深さと角度で、浅目かつ少々遠目でも分かる様な傷口を付けさせてもらっている。
装備も、ダンジョンで得たモノは一時的に回収し、俺が出したモノと交換した上で、まだまだ使えるが、遠目に見ると傷物になっている風に見える様に加工してある。
そして俺とタツなのだが、俺は、他の皆曰く『瞳が金色になっている』らしい左目を隠すべく、左側を中心に顔の半分と左腕(鱗等を隠すため)を布でグルグル巻きにした上で、足を引き摺りながら槍を杖にしてようやっと歩いている、と言う感じに偽装し、タツはタツで右腕を吊り、額に巻いている包帯からは赤いモノが滲んでいる、と言った見た目に加工してある。
勿論、俺の顔と腕に巻き付けた布にも、赤いモノが滲んでいる風に加工してある為、遠目から見なくても、『戦闘によってボロボロになった一団』みたいな風に見えるハズである。
そんな俺達の見た目に油断して出てきた大神を相手にするために、俺は前に出ている乾へと視線を送り作戦の進行を伝えると、乾は軽く頷いてから大神へと返事を返す。
「ここは私達が作った拠点よ!勝手に使っているのは大神くん達の方じゃないの!!コレは一体どう言うつもりなの!!?」
「おや?君達のリーダーは、そこのボロ雑巾から紗知に変わっていたのかい?
なら、尚更『僕達が作った』で合っているじゃないか?何せ、そこのボロ雑巾達を除いた君達は僕のモノなんだから、君達のモノは僕のモノで大丈夫だろう?」
そんな事を、自身の言っている事が、一欠片も間違いを含んでいないと信じている声色で言い切りながら、女性陣へと流し目をくれている大神。
そんな大神の言葉に、こちらの女性陣全員が気持ちの悪さを感じたのか、それぞれで身震いをさせたり、肌が出ているところを手で擦ったりしている。
他の面子よりも耐性のあるハズの乾ですら、肌が泡立つ事を抑えられていないらしく、後ろに居る俺の位置から見ると、鳥肌が立っているのがよく分かる。
そんな大神から発せられる言葉の数々を、精神的なダメージを負わない様に聞き流しながら周囲を窺う。
……ふむ、最初に感じた気配の数と言い、実際にこうして見ている限りの人数と言い、やはり数が少ない様に見える。
俺達のクラスは男子が少し多めな19:17の計36名であり、それに先生を加えた37名が総勢である。
そして、その37名から俺率いる10名が離脱し、残りが男子16名、女子11名の計27名であるハズなのだが、俺達を取り囲んで居る連中や、おそらく小屋の中にまだ居るであろう女子達をカウントに入れたとしても、俺達を除いたこの場に居る人数は、どれだけ多く見積もったとしても15名位でしかない。
一瞬、魔物の襲撃でも受けたのかと思ったが、それにしては今居る連中の中で、傷を負っていた痕跡の有る奴は居なさそうだし、現在進行形で怪我の治療をしている様子の有る奴も居ない。
かと言って、食料や水の不足による枯渇死なのか?と言われても、やはり残っている連中に、そんな状態になりかかっている様子の者は居ないし、そもそも人間が餓死するまでにはもっと時間が掛かるので、これも有り得ない。
更に、何か病気の類いか……?とも考えていたのだが、その時、ふと俺達へと向けられている視線の種類が気になり出した。
その視線は、俺達全員へと等しく注がれており、何やら野生の獣を彷彿とさせられる様な種類のモノであった。
しかし、その手の『獣性』とも呼べるようなモノを含んだ視線を向けられるのは、えてして女性と相場が決まっているハズだし、この場に居る大神サイドの連中は、全員が男なので、集まるとしたら女性陣に対してであるハズなのに、何故か俺達にまで集まってきている様に感じられる。
そこで俺は、数年前に経験したとある出来事、修行と称して放り込まれたある場所で遭遇した、とある部族の事を思い出した。
(……まさか、ね……)
そう思いはしたものの、改めて周囲の視線を窺ってみると、どうしてもそうであるとしか思えなくなってしまったのだ。
「ーーーよって、ここは僕達のモノだ!まぁ、君達が合流することは歓迎するが、そこのボロ雑巾達は出て行ってもらうけどね!!」
そして、丁度良く大神の演説が終わり、ドヤ顔で俺達を見下している所に、乾が怒りで引き釣った顔をしながら反論しようとした時、俺が乾の前に出て乾を制し、大神へと問い掛ける。
「……なぁ、一つ良いか?」
「何かな?僕は寛大だから、最後に答えてあげようかな?」
「……なら、一つ聞きたいんだが……
……お前ら、一体何人喰ったんだ?」
そう、この場に居る奴らの視線に混じっているそれは、見間違える事なき『食欲』。
本来であれば、他の生物へと向けるハズのソレを、同族であるハズの人へと向けている連中に数えても俺は一度だけ会った事がある。
そして、俺達へと向けられていた視線は、正しくその時のソレと同じモノであった。
そんな、最大の禁忌を行っている事を前提とした俺の問い掛けに、大神はその笑顔を崩す事なくあっけらかんとこう答える。
「そうだね、男子はここに居ない奴は全部。女子の方は、僕達も色々と発散しなけりゃならないから、僕のモノは残してあるけど、僕からの誘いを断った残りの半分は喰べちゃったかな?」
ソレを聞いた、聞いてしまった俺は、即座に重傷を負っているフリを辞め、タツと共に前へと出る。
そして、視線を大神から外さずに、俺達の後ろに居る形となった乾達へと声を掛ける。
「総員、戦闘体勢を取れ……」
そこで一旦言葉を切り、出来ればこれだけは言いたくは無かった言葉を口から発する。
「……奴等は、既に『人』を辞めて人喰いの『鬼』になっている。コレは放置しては置けないし、出来ない存在だ。故に、こいつらはここで駆逐する。殺さなければ殺されると思って掛かれ!!」
そう、想定はしてはいたが、彼女達には実行させるつもりは無かった第三案、『力ずくでの奪還』ではなく、全く想定外の『敵勢力の殲滅』を実行することになるのであった。
面白いと思っていただけたのでしたら、ブックマークや評価、感想等をお願いしますm(__)m




