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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 鮮血の姫君
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9 盲目の王子様

 俺の前に無言で立ち、その表情はどこか曇っていたが彼は決して自分の忠誠を曲げようとはしなかった。


(おいおい。本気か?さすがに首をはねられたら動き回るのは不自然だろう。いやいや、仮にも魔王の腹心がこの老いぼれの剣で首がはねられるのか?斬られはしたけど無傷でした。とかは逆にまずいだろう。どうすればいい?抵抗するか?おそらく、逃げることも可能だろう。しかし、・・・)


 こいつは・・・時間を稼いでいるのか?斬りかかってこない意図が不明だ。

 シュバリエが斬りかかってこない理由は分からないが俺はあらゆる可能性を考えた。

 人間相手に、殺さずに解決する。なんて日が来るとは予想にもしなかったが。ここまで難しいこととはね。


「すまぬ、主君の命令は絶対なのだ。それが、騎士たる忠誠・・・。」


 俺に言っているのか?って、まだ迷っているのか?

 自分に言い聞かせているのか?だったら思い込みだぞ。

 シュバリエは瞑想したまま呼吸を整えゆっくりと歩み寄ってくる。


(まずいな。これは)


 俺はこのままやられるのも困るが、一番困るのは騒ぎを起こしてルナたちになんらかの報復があることが怖い。しかし、くび斬られて生きていていいものか・・・。


「すまない。」


 すまない。で片付くほど簡単な問題じゃねーよ!!と、心の中で叫び倒してもこいつには聞こえないんだろうな。


(どうする、どうする、どうする!!!)


「ま、待ちなさい!!」


 寸前になったら一瞬魔力を解放してでもシュバリエを殺そうと目論む俺。

 従うべき命令ではない。騎士道に反していると自覚のあるシュバリエ。

 その光景を終始無言で見物しているジーク。

 その間に、ルナとマナが入ってきた。


「あ、あなたがやろうとしていることは人道に反しています!」


「助けに入った人間まで処刑するなど、何を考えているのですか!」


 剣を持つシュバリエの前に、俺をかばうような格好で二人は立ちはだかる。

 小刻みに震える手足が、二人の心境を表している。


「ふたりとも・・・。ありがとう。だが、ここは危険だ。離れるんだ。いざとなれば・・・」


 まだ若い娘に助けられたこと。それは恥よりも、嬉しかった。

 仲間というのは、いいものだ。俺は、仲間を失いたくはない。


「娘よ。これは我がジーク様の命令。抗う事は許されぬ。わかってくれ」


「わ、わかるもんですか!!」


 シュバリエが伸ばした手を払いのけるルナ。


「さっきから聞いてれば命令命令。命令、また命令。あなたは、自分で進むべき道が選べない人間ですか!?この者は自らの仕事。ここの警備をしていただけです!その中に乱入した賊を捕獲することで責務を全うしているだけなのに、なぜ処刑されなければいけないのですか!?そこまで隠れて王都へ行きたいのであれば、迷惑かけずに森の中でも通ればいいでしょう!わざわざ人が多いところに混乱を呼び寄せて、何様だと思っているんですか!!」


 肩を上下に揺らしながら、頬や耳を赤らめてルナは珍しく怒った表情だった。

 マナはそれを黙って聞いている。

 魂を選定する女神であれば、もしかしたら今この状況で不本意にも殺された人間の魂を見たこともあるのかもしれないな。

 その記憶や、思いが二人を動かしているのか。


(って、いやいや!!これは下手したらこの場で戦闘、下手したら戦争になるのではないか!?)


 ボーッと二人の後ろ姿を見ていたが、これは非常にまずい展開だ。少なくとも、二人まで処刑。と言われる可能性が増えた。

 シュバリエは既に言葉を失って何も言い返せていない。

 それよりも、自分の後ろ。ジークの放つ圧力が彼をその場に拘束しているようにも感じる。


「娘、言いたいことはそれだけか」


 低い、か細い声でジークは呟いた。

 どのような表情をしているか分からないが、やつはこの状況を楽しんでいるようにも思えた。


「えぇ!そうよ!私はあなたには屈しない!絶対に負けないわ!」


「お姉ちゃん、今日はかっこいい!うちも、一肌脱ごうかなぁ・・・。」


 俺とシュバリエは既に蚊帳の外。こうなれば、相手の動き次第では俺がこいつらを・・・。


「ふはは、ふあははは!!気に入った、気に入ったぞ小娘たち!」


 フードの中から、急に笑い声が聴こえてくることに俺たちは驚き、身構えた。

 今までのジークとは違う何かが、そこにいるように感じた。


「ジ、ジーク様・・・?」


 シュバリエさえも、自分の主人の変貌ぶりに驚いた様子が隠せないでいた。

 冷たい口調から、人が変わったかのような明るい笑い声。その場の全員が状況を理解できないでいた。


「下がれ、シュバリエ」


「御意」


 戸惑いながらもジークの後ろに下がる。

 ジークは目深にかぶったフードに手をかけると一気に捲り上げる。

 その姿が現れると、再び多くの歓声が町を包んだ。

 金色の長い髪。日に当たっていないかのような白い肌。そして・・・そして。


「その、ジーク様。・・・たいへん申し上げにくのですが・・・」


「この眼か?」


 まぶたを閉じたまま開かないその姿に違和感と、不信感を覚えるも、聞き方がわからなかったがジーク本人からラッキーなことに話してくれた。


「これは事故でね。両目が見えなくなってしまったんだ。我としても民の顔が見れないのは辛い。だが、我には忠実に手足となってくれる。耳や目になってくれる家臣がいるのでな。部下に恵まれたことの代償だな。これは」


 笑い飛ばして明るく言う話ではないのだがな。

 それに、部下に恵まれない俺にいうのは嫌味か?こいつ。


「王子様、申し訳ございません。お気に触れるような事を・・・」


「よいよい!気にするでない。我が勝手に喋ったのだから責任を感じることはない。独り言だ」


 ルナが可哀想。とでも言いたそうな顔をしているところ、マナはすかさずフォローを入れるも王子は大して気にしていない様子だった。

 自分から喋ったのも、独り言。と言うためなのであれば頭の回転が早いな。こいつは。


「それよりも娘たち、この度の行い。仮にも王族への我に対しての無礼は責任を取ってもらわなければいけないが、覚悟はいいできてるな?」


「・・・はい。」


「ごめんね、ヴァレット。私たち、見てられなくて・・・。あなた一人ならどうにかなったかもしれないの

に」


「いや、お前たちは悪くなかろう。俺が、・・・俺がすぐに決めずにいたせいで」


「うるさいぞお前たち!王子がお前たちに罰を与える。しかと聞くがいい」


 シュバリエが大地に剣を勢いよく刺し、声を張り上げる。

 こうなったのは、俺がいけないんだ。いざとなれば全魔力を開放してでもこいつらを・・・。


「罪人4人に告ぐ!休める場所を用意せよ。」


「・・・・」


 なに?


「ね、ねぇ。なんて言った?」


「ごめん、お姉ちゃん。うちも聞こえなかったわ」


「・・・」


 俺も、聞こえなかったかな。よく。


「お主たち、そこでのびている女を連れて王子が休めるような場所はないか?長旅でな。少し休養をとりたいんだ。」


 聞き間違いではなかったらしい。

 やはり、ご休憩がご所望なようだ。

 確かに、半日以上盲目の人間が馬に乗っているんだから大変だわな。かと言って、この群衆が多い中、休めるところといわれても・・・。


「あぁ・・・」


「どこか思いついたの?」


「まぁ、心当たりはある。」


 俺の意味深な言い方に二人プラス王子御一行は理解できていなかったが、俺は隣で縛られたまま気を失っている女を担ぐと王子が休めそうな場所へと向かうことにした。


「ジーク様、ご案内いたします。どうぞこちらへ」


「うむ。頼む」


 かくして、王子様御一行の先頭は俺になったわけだが。

 今この場にいる人間全員に注目されるのはなんとも、いい気分ではないな。

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