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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
28/63

25 再会した部下はすでに新しい上司に染まっていた。

(さて、どうしたものか)


 俺は1人、南門を出たところに立っていた。

 門番もいなくなり、ここから見た街は、破壊する魔王軍からしたらなんの価値もないだろう。

 殺す人間もいない。

 断末魔の声も聞こえない。

 べつに活動的に拠点にするわけでもない。


 しかし、住むべくところを奪われた人間たちからしたらそうではないらしい。

 住み慣れた街。

 苦労して手に入れた我が家。

 人間同士での思い出。

 もちろん、愛すべくものとの思い出・・・。

 それは、決してもう一度作れるようなモノではなかった。今の俺ならそれが分かる。


「リアも、ルナも無事に逃げているだろうか・・・。あのお転婆娘と頑固娘じゃあな。」


 いつもならルナが。

 小馬鹿にしたようにリアが。

 なにか言い返してくれるが誰もそこにはいない。

 妙に背中や、隣がスースーする感じがする。

 すでに、俺の索敵スキルの圏外に出たようで2人の反応は感じない。


 あとは、リアを信じるのみ。

 俺が死ねば、リアの契約も解除だ。短い間だったが、いい使い魔だったな。


 ・・・。


 その瞬間、森に異変が起こった。

 街のそばにある森がゆっくりと枯れ始めた。なにかが、一直線にこちらへ向かってくる。

 おそらく、『魂を喰らう者』がいるのだろう。

 触れたものの生命力を奪う魔物、タコのような、動きが鈍い大目玉の不気味な生き物だ。魔界でも好かれてはいない。動きが遅いのが救いで、魔法で攻撃すればすぐに死ぬ。ただ、一撃必殺の触手を持っているだけだ。


 ・・・カラカラ。


 森の奥から、物音が聞こえる。

 それは、枯れた枝が落ちるような・・・。棒が倒れたような響きだった。

 そして、俺はその音をよく知っている。

 骨の音。

 乾いて乾燥した骨が地面に転がる音だ。死霊兵の下っ端が肋骨などたまに落としている。


(まさか・・・)


 俺が目を凝らすと、そこには茶色や白い骨の兵士がゆっくりとこちらへ歩み寄ってきていた・・・。

 不気味な骨の音を鳴らしながら、あいつらは近づいて来る。

 俺が、ここでヴァネットの姿になったらどうなるのだろうか・・・。話し合いで解決できるのではないか?

 もし、戦わずに魔界に戻ってくれるのであれば俺はそれで助かる。

 ここにはもういられないかもしれないが、部下たちと殺り合うのは気が引ける。


「おい、人間がいるぞ?」


「あぁ。勇敢というよりも、無謀にも俺らと戦うきか?」


 カタカタと音を立てながら骸骨兵は笑っている。

 人間の目線では。このように見えるのだな。


「きけ!死霊たちよ!我は魔王様腹心が一人、死霊使いのヴァネットだ!今は訳がありこの街で人間として潜伏している。汝らが主の命により、ここより立ち去れ!」


 一瞬、動いていた骸骨兵の動きが鈍くなった。

 死霊使いヴァネット。魔界の民なら聞いたことがないわけがない。


「ヴァネット??」


「あの、ヴァネット様か?」


 おぉ!ちゃんと俺のことを理解しているようだ。リアの時は知らぬ存ぜぬと言われたが、やはり持つべきものは頼りになる部下たちだ。


「でも、あいつ人間の姿をしている・・・」


「臭いも人間。」


 そう、俺はこの姿を辞めるわけにはいかない。理由がある。カエルの顔は、人間には違いがわからないのと同じで、人間の顔の違いも、俺にはわからない。・・・いや、わからなかった。この人間の姿、形。今は記憶から消えつつある。人間への変身魔法は、意識した者へ返信する。今の俺は、ルナの事しか頭にない。また、人間界で2人といろいろ食べ過ぎたせいで臭いも変わってきているらしい・・・。

 これでは、人間と思われても仕方ない。

 上級魔族、腹心クラスでなくとも、我の魔力に気がつくものがいれば・・。


「獣王ガスト、海王リーヴァイに連絡は取れないか?我の魔力を見れば、あの2人ならすぐにわかるはず」


「黙れ人間!」


「人間の分際で海王様、獣王様に対しなんて口の利き方をする!」


「貴様の肉体なんぞ、魔界の犬の餌にしかならんわ!」


 あぁ、獣王、海王の前に、俺は死霊使いと名乗ったのだが、ヴァネット様への礼儀ってのはないのか?


(ダメだ、この感じ、絶望的かも知れない。こいつらも俺への忠誠心がない。ライダー派のようだ)


 俺にはため息しか出ない。

 こいつら、新人なのか?新人であればいいな・・・。こいつらに愛情がなくなってきたのか、もはや俺にもただの骸骨兵にしか見えなくなってきた。人間のほうがよほど温かいぞ。


「何をしている。さっさとこのような街壊してしまえ。スカルライダー様がお見えになるぞ」


 骨の剣士スカルナイトが1体後ろから現れる。

 やつは、骸骨兵のまとめ役。雑兵を取りまとめる役目を持つ。知能は人間並み。戦闘力は骸骨兵3体分程度。決して強いわけではない。

 それにしても・・・スカルライダー?なんだ、ゴーストライダーから改名したのか?


「おい、スカルライダーってのは誰だ?」


「んぅ、貴様、馴れ馴れしいぞ人間の分際で・・・我等魔王軍に対しなんて無礼な!」


「いいから答えろ。ゴーストライダーはどうした?」


「ご、ゴーストライダー様までも侮辱するとは・・・。貴様には最高に苦しい死に方がお似合いのようだな!スカルライダー様のお手を煩わせるまでもなく、この場で肉片にしてくれる!」


 随分とライダー1号と2号は人気らしいな。こいつらの話し方からなんとなく別人ってことはわかった。しかし、俺のいない数日で中堅クラスの魔族が生まれたのか?


 魔族が生まれる方法は2つ。

 上級魔族により作られる場合。

 我等魔王様の腹心は魔王さまより直々に創造された魔族。

 その配下に我らが創りだす魔族、さらにその下には・・・。

 と続いていく、自分の力を与えて作成するタイプ。


 そして、俺が死霊を召喚するのと同じく、自分の魔力を使い、第三者の依代を使う場合。

 ・・・。

 どっちにしろ、俺の知らない魔族がいるようだ。


「悪いな、ライダー1号、2号が来る前に片付けさせてもらおう。」


 俺は今は無き門番の代わりに死霊たちの前に立ち塞がる。そして、ゆっくりと抜刀し最初の骸骨兵へと斬りかかった。

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