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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
19/63

16 使い魔

「答えろ!貴様が死霊使いなら、なぜ死霊を召喚しない!?」


 どうするか。

 俺は本気で悩んだ。

 まず、生かすか殺すか。

 このまま殺してもいいと思う。

 でも、なにか使い道があるかもしれん。


 そして、生かす場合。

 死霊軍から逃げてきた。なんて口が裂けても言えない。

 死霊使いが死霊から逃げてくるなんて・・・。

 一体どう話せばいいものか。


「死霊は、召喚できん」


「ほら見ろ!嘘じゃないか!」


「偽りではない!我は・・・。我は、今・・・死霊を召喚する事は出来ないのだ」


「なぜ死霊使いが、死霊を召喚できないのだ?何か理由があるのか?同族として、見苦しいぞ!」


「う、うるさい!俺にも俺の事情があるんだっ!」


 彼女も、決して攻撃はしてこない。

 サキュバスは特殊能力こそあるものの、実力で言えば弱い。先ほどの攻撃の中で、俺には勝てないと理解はしているのだろう。

 しかし、このままではらちがあかない。


「仕方ない・・。殺すか。」


 俺は剣に魔力を集中し、サキュバスにゆっくりと近づく。


「ま、まって!殺さないで!ここから出て行くから!もう、あなたたち二人にちょっかいは出さないわっ!」


「信用できない。それに、出て行かれて魔王軍にでも通報されたら厄介だ」


 そう、逃がして一番困るのが魔王軍へこの場所のことを告げ口されることだ。

 まぁ、魔界には随分帰っていないようだから、その可能性は低いのだが万が一リーヴァイあたりの耳に入ったら終わりだ。

 従って、逃すわけにはいかない。


「本当よ!ここにいたのだって、外の世界が怖かったのよ!だから、ひっそりと隠れてたの!」


「外が・・・怖い?」


「そ、そうよ!天使や魔族が今世界中で何かしているみたいだし、はぐれ魔族の私なんて、天使に見つかっても殺される。同族に見つかっても尋問やらでただでは済まないわ。・・・だから、一人気配を殺してここにいたの!あなたも・・・私の気持ちわかるでしょ?」


 彼女は涙を流しながら俺に命乞いをしているようだった。


(魔族が涙を流し命乞いとはな・・・)


 魔族も、長い間人間界にいると、人間に当てられ、変化するのかもしれないな。

 ・・・変化。

 俺の足が止まった。


(変化。人間に近づく。・・・人間の心が理解できるようになる?)


 俺はルナを一瞬見た。

 もしかしたら、ルナの心をわかる日が来るかも知れない。

 それに、コイツは今の俺と似ている。

 誰にも見つからないで、ひっそりと暮らしたい。

 その気持ちは十分に分かる。・・・が、どうしたものか。


「わ、私の心臓。取ればいいわ。私はあなたの使い魔になる。あなたの、あなただけの下僕よ・・・」


「使い魔・・・」


 俺には使い魔がいない。

 使い魔とは、上級魔族が持つことができる最も信頼できる部下である。

 使い魔の心臓を契約者がもち、いつでも殺すことができる。

 よって使い魔は契約者が死なない限り永遠に下僕のままだ。

 実際には、心臓に刻印を打つ事になる。契約者が死ぬときに、一緒に死ぬ事になる死の刻印。

 契約者が解除するしか、逃れる術はない。


「お前みたいなやつ、信用できない」


「あ、あなたに言われたくないわよ!でも、悪い話ではないはずよ?あなた、魔王軍を警戒してたみたいだし、私みたいなはぐれ魔族だったら使役しても身元がバレることはないわ。」


(たしかに・・・)


 万が一、魔王軍に捕まっても、刻印さえ解除すればこいつとの関係性もバレない。

 さらに、どこかの部隊に所属していたわけではないから、他の腹心たちと連絡を取ることもないだろう。


「妙な真似をすれば・・・即殺すぞ?」


「うん、いいわ!大丈夫!もし、またご希望とあればあの娘を操っていいことしてもいいわよ?」


「ず、図に乗るな!!」


 俺は剣を床に差し、契約の魔法陣を展開する。


「いいな、今日のことは忘れろ。口に出したら殺す。」


「はいはい。わかりましたぁ。でも、私にだったらちょっとくらいエッチな事してもいいわよ?」


「・・・始めるぞ」


 この女、何言っても無駄だな。


「闇の眷族サキュバスよ。我と汝を結ぶ黒き光。悠久の時を過ごす者よ。その心の臓を我に捧げよ!」


「ん・・あぁぁぁあ!!」


 サキュバスの胸が赤く光る。

 その光に呼応してサキュバスが悶え苦しみ、暗い空間に、彼女の声が響き渡る。


「デア・フェラーク」


 俺の言葉を最後に、一瞬強い閃光がきらめくと彼女の胸にはうっすらと刻印が浮かび上がっていた。

 死の契約を結んだ印。俺が死んで、やつも死ぬか、俺が契約解除するしか自由になる道は残っていない。


「本当に・・・良かったのか?」


「よかったもなにも、あのまま殺されるよりマシでしょ?」


 剣を鞘に戻すと、俺はルナを抱き上げ、サキュバスに視線を送る。

 サキュバスは何も言わずに異空間を閉じた。

 異空間から出ると、外はもう朝日が登っている。


「もう、朝か・・・」


 俺はルナをベッドに寝かせると、昨晩脱いでいた上着のボタンを一つ一つ元に戻す。

 胸にうっすら赤い指の跡があるが、これは消せないので本人が気にしないことを祈ろう。


「とりあえず、下に行こう。お前も、人の姿にはなれるのか?」


「まぁ、一応・・・。」


「俺たちは魔族だ。だが、魔族として生きるのではない。人間として生きるのだ。この世界で、身を隠し過

 ごしたい。それが今の俺の考えだ」


「仮にも、魔王軍最強なのに?」


「・・・そうだ。」


「へんなの」


 俺は静かにルナの寝室を出ると、そのまま下へ向かった。

 人間界ではぐれ魔族に会うとは想定外だったが、・・・こいつ。


(いらぬ手間を増やさねば良いが・・・。)


 俺は初めて出来た使い魔に対し、疑念しかなくこの空家を借りたことを後悔していた。

 新居初日は、最悪だ。

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