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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
欲望
123/157

魔法雨

 精鋭隊とエンジェル、サキュバスは幾多もの洞窟を順に駆け巡った。

 しかし、それらは全てもぬけの殻。食糧のために信者となった人々はおろか、モガミを狂信する信者の見張りすらいなかった。


 そんな中、とある洞窟の最奥部。テンマが突然その場にしゃがみ込んだ。

 入り口から今いる最奥部まですぐに着き、洞窟はそこで終わっている。洞窟としては珍しい、規模の小さい場所であった。


「これは……篝火をかき消した跡と、野菜か? 食材は太陽光のある外の田畑でのみ生産できるため、洞窟内では生産できない。となるとここは食材の調理場といったところか」


 テンマの隣にいる白虎が腕を組み、篝火跡を見下ろす。


「……他の洞窟も、またそういった役割があったということだろう」


「そう考えるのが妥当ね」とカトレア。


 アキはふと白虎の素顔を目の当たりにしても、誰一人として驚いていないことに気がついた。

 くだらない思考を巡らせ始めた頭を振り払い、緊張することを心がける。


「では信者達はどこへ消え────」


 テンマの言葉を、叩きつけるような音が遮った。

 クオンを初めとした皆が音の鳴った方へ顔を向けると、精鋭隊の背後にあった洞窟の扉が開け放たれていた。扉から篝火跡までは直線、その距離は二十メートルほど。


 そこにいくつかの人影が現れた。暗闇によって姿は判然としない。しかし、彼らの前に描かれ始める五つの魔法陣によって、こちらに敵意を示していることだけは明らかだった。


「皆! 私の後ろに隠れろ!」


 テンマが叫んだと同時に魔法陣から氷塊が放たれた。


「エンジェル!」


「相変わらず人使いが荒いことで! 人じゃないけど!」


 一メートル程の氷塊はテンマのワームホールに飲み込まれる。氷塊が洞窟後方に転移すると、土壁に激突して砕け散った。

 ワームホールの範囲外に飛来した氷塊は、エンジェルのプロテクトによって弾かれた。


「まずいわね。こんなところではスペルを使われ続ければジリ貧真っしぐらよ。範囲系のスペルなんか使われたに日には、おしまいね。

 ええい。『ファイアボルト』!」


 カトレアの放った速度の早い火球はあっさりと避けられ、扉の向こうの空へと抜けていった。


 その場の誰もが最悪の事態を想定した。

 広範囲にダメージ判定のあるスペルをもし壁に当てられでもすれば、ダメージ判定のみが精鋭隊に襲いかかることになる。その場合、テンマのワームホールでは到底防ぎきれるものではないし、エンジェルのプロテクトも長くもつわけでもない。


「テンマがワームホールで脱出してさ、外からあのウィザード達をぶっとばせないの?」


 クオンの提案に青龍が首を振った。


「いやいや外で複数人に待ち構えられてたら、さすがのテンマでも厳しいでしょ。それに外でテンマが対処に追われてる間にボク達がやられちゃ意味がない」


 そうこう話し合っている間に、一際巨大な魔法陣が描かれ始めた。

 テンマはそれを一度睨みつけてから、静かにアキの方へと視線を飛ばす。


「……アキ、許してくれ」


 テンマはアキの反応を待たずに、アイテムチェストから『羅刹天』を取り出した。

 白虎以外の精鋭隊は、覚えのある妖刀に眉をひそめる。

 その刀で斬られたことのあるカトレアと青龍、そしてアキは親友の命を吸いきった刀に怪訝な表情を向けた。


「テンマ……どうしてそれを、どうしてその刀を持ってる……?」


「説明は後でする……。皆、プロテクトから出てついて来い!」


 テンマが歩き出した。アキは混乱しきって立ち尽くしていたが、クオンが手を引いてくれたことによって次第に我に返っていく。


 『羅刹天』は消えたはずじゃ……。いや、最後にあの場所にいたのはテンマだ。ユウの刀をどうして? そこまでして最強を目指したかったのか?

 いや、今はそれはいい。それより命が吸い取られてるなら、今のテンマがスペルを食らい続けたらまずいんじゃ? スペルが斬れても、壁に広範囲のスペルを当てられでもすれば回避のしようがない。


 じゃあ俺に今、何ができる?


「────回復薬!」


 アキが回復薬を二本取り出したところで、一発目の雷球をテンマが切り裂いた。

 アキは後に続く精鋭隊のメンバーに回復薬を手渡していく。その時、二発目の大火球がテンマの切っ先が触れる直前、天井へ衝突した。


 酷く熱い熱風が洞窟内に吹き荒ぶ。と同時にアキはテンマへと回復薬を振り撒いた。他の皆もアキの回復薬を飲み干し、次の攻撃に備えた。

 テンマはちらと背後のアキを一瞥する。


「アキ……!」


「質問は生き抜いてからでも遅くない!」


 テンマは前方を見据えながら、強く頷いた。

 アキの後方から気の抜けた声が響いてくる。


「カメさーん、ボクはプリーストだから次は回復薬いらないよ。他の人に回したげて」


 アキは頷きつつ、回復薬を皆に渡した。テンマにはスペルの対処に全力を注いでもらうため、背後から回復薬を振りまく態勢をとる。


 精鋭隊は少しずつ、確実に出口を目指していった。

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