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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
欲望
120/157

増えゆく槍先

────青龍は何をやっているのかしら。

 カトレアは減少して残り少なくなったMPバーを眺めつつ、そう苛立っていた。

 眼前には三人の信者が武器を構えている。



 カトレアと青龍は、アキの指示に従いアイアンゴーレムの後に続いてモガミを追っていた。

 スカウトをメイン職業に持つ青龍が先行し、逃げ行くモガミの足を止めようとした。その時、モガミの背後に追随していた信者二人に、前方からやってきたであろう四人の信者が新たに加わった。


 一言二言交わした後、新たに加わった四人の信者がアイアンゴーレムを避け、カトレアと青龍の前に立ちはだかった。二人は足止めを強いられることとなった。


「増援……。青龍、やるわよ」


「先手打たれたってわけじゃん。面倒くさー」


「前衛三人、後衛一人、作戦は……いらないわね」


 カトレアが杖を構えたと同時に口元で何か呟いた。杖の先端の空間に赤色の古代文字が円形に浮かび上がる。

 円形の中からは何も出現しない。その代わりに信者四人の足下の地面が橙色に変色し始めた。それはイラプションの下位互換スペルである『ボイル』であった。


「散開ッ!」


 鋭い指示とともに信者達は四方向へ飛び退いた。信者達のいた地面からは小さなマグマが溢れ出した。

 信者の一人がカトレアへと駆け出す。そのまま手に持つロングソードで斬りかかってきた。


「くうっ……!」


 杖でロングソードを防いだカトレアだったが、ロングソードの持ち主は力任せにカトレアを森の奥へと押し飛ばした。青龍の元へ二人残り、カトレアのほうへ後衛職含む二人が向かっていった。


 統率された動きのできる厄介な相手。青龍はそう直感しスキルメニューに指を這わせる。


「スカウト最高峰の実力、見せてあげるよ。奥の手は残すけどね。『レックレスソウル』『ブーストアップ』『スカウトフィジカル』」


 青龍の体が様々な色に輝き始める。

 防御力を犠牲にして敏捷性を著しく上昇させる効果のある『レックレスソウル』、敏捷性の上昇効果のある『ブーストアップ』、そして腕力以外のステータスを上昇させる『スカウトフィジカル』を一度に発動させた。


 腰に携えた双剣を取り出し、手の中で器用に弄び始めた。槍と棍。敵二人の武器がそれであることを確認した。


「んじゃ、お手並み拝見」


 棍の信者もまたスキルメニューから、スキルを選び出そうとしたが、その前に青龍が眼前へと到着していた。


「は、早っ……!」


 青龍は信者の両腕に、真下から刃を突き刺した。痛みに耐え兼ねた信者はその場でうずくまる。青龍は棍を奪って森の中へ投げ飛ばした。ついでと言わんばかりに両足へと刃を振り下ろし、しばらく身動きを取れないようにする。


 一方で槍の信者は槍を両手で構え、青龍をじっと見据えた。スキルメニューは表示しつつ、戦闘に集中することにした。

 槍の信者を目視もせずに、青龍は槍の信者へと斬りかかった。信者は不意打ちに戸惑いつつ槍で数回、双剣の刃を跳ね除けた。しかし青龍の猛攻は続く。


 右の剣で槍を押さえ込みつつ、左の剣で本体を突きにいく。槍の信者は一度完全に持ち手を離して、刺突を完全に避けてから落とした槍を素早く拾い上げた。


「やるねぇ」


 その一言から青龍の攻撃は更に激しさを増していく。双剣はまるで流れるように槍の信者へ襲いかかった。

 弾き、受け流し、受け止め、後退する。防戦一方となった槍の信者は後方に大きく跳躍し、カトレアの飛ばされた方面の森へ逃げ込んで行った。


「合流するつもりってわけ」


 青龍は気の抜けたようにため息をついて、その後を追いかけようとした。その瞬間、背中に違和感を感じた。手で背中を撫で、目の前に持ってくる。

 手のひらに赤い血がべっとりと付着していた。


「あー、いったた……。『リカバリー』」


 青龍は自らの傷口をサブ職業プリーストのスペルによって回復した。

 振り向くと、先程まで倒れていた棍の信者はすっかり傷口を治癒し終え、おまけに棍の代わりとなる斧を構えている。

 背中は斧で切りつけられたようだった。


「ボクにとっては、生かすとか殺すとかあんまり興味ないんだけどさぁ。もしかして死にたい人?」


 斧の信者はなりふり構わず青龍へ飛びかかった。青龍は斧を二つの剣で弾き飛ばし、体勢の崩れた信者の腹を搔っ捌いた。一連の動作は舞っているように鮮やかであった。

 地べたで悶え苦しんでいる信者。その髪を青龍は掴み上げた。


「ボクは良いとしても、カメさん達にこれ以上迷惑かけたくないんだよね」


「や、やめ……」


「あとHPどのくらいあんの? 痛くない方法を選んであげるよ」


「誰か! 誰か助けてぇ!」


「ま、いいか。首切れば。もし生まれ変わってまた会ったらよろしくー。じゃあね」


 青龍は表情一つ変えずに信者の首を横一文字に斬り、絶命させた。空に舞っていく輝く塵を見上げながら呟いた。


「与えるのには慣れてる。だからこそ与えられると返したくなる。これがログアウトできない理由だから困ってるんだ。

 ……あーあ。面倒だけど朱雀の応援に行かなくちゃ」


 カトレアの苛立ちをよそに、青龍はゆったりと森の中へと歩いていった。

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