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エタニティオンライン  作者: 足立韋護
深淵
105/157

契約満了

 朝の日差しで目が覚め、眠気の取り払われたような頭でアキは起き上がった。一度データであると感じてしまったこの世界は、アキにとって違和感だらけの世界だった。

 エタニティオンラインを始めた当初はゲームだと割り切っていたものが、どこでその感覚を狂わせたのだろうか。


 アキは部屋中を凝視する。木製の質素な部屋だ。匂いも色合いもまさに木製を再現し尽くしていた。だが惜しいことにその壁はいくら叩こうとも壊れることはない。ゲーム性が失われかねないからだ。


「慣れ、か」


 そう呟いたアキは、感覚を狂わせた原因にたどり着いた。

 プレイ時間の長さに比例して、このゲームから感じていた違和感は消え去っていく。『そういう世界』だと認識し、納得してしまった。そうして一つの世界が完成されていくのだ。

 NPCや使役モンスターに対して情が湧くことこそ、その最たる証拠だ。


 アキはベッドから立ち上がり、冷静になった頭のまま円卓の部屋へと赴いた。

 中にはクオン、テンマ、カトレア、青龍が座っていた。テンマがこちらを見ながら腕組みする。


「クオンから話は聞いている。ディザイアに戻るそうだな?」


 アキは全員と視線を合わせてから頷いた。


「……そうだ。まだ知り合いがいるし、白虎もそこにいるみたいなんだ。今はディザイアへ行くしかないと俺は思ってる」


「私はもちろん同行しまーす!」


 クオンが飛び跳ねながら挙手した。


「ボクはそろそろディザイアの家に帰ろっかなー」


「私も、もうこの世界にいる意味はなくなったわ。せっかくアキから家を買い取ったのだから、満喫しなくては勿体無い。ディザイアに行かせてもらうわ」


 青龍とカトレアもまた、ディザイアへと帰る旨をこぼした。テンマはそれを聞き、口元に手を添えて何か思案し始めた。

 アビスにもヴァルカンにもほとんどプレイヤーは残っておらず、僅かに残っている者は皆、家の中で安全を確保している状況だった。仮面の一味のような者達も目立たなくなった。

 この場の誰もが、アビス、ヴァルカンの二都市にいる意味がないことを理解していた。


「ユウの一件以来ディザイアに戻っていないのも確かだ。私もディザイアに戻る頃合いなのだろうな」


 満場一致によって、精鋭隊はディザイアを目指すこととになった。

 一行が準備を整えて支部から出たところで、道端に座るキュータを見つけた。キュータもこちらを見つけると、素早く駆け寄ってきた。背後のテンマ達は足を止めてくれた。


「アキさん」


「キュータ君! まさか待ってたのか?」


「二つだけ、用事があって」


 キュータは両脇に控えるプチエンジェルとプチゴーレムを前に優しく押し出した。


「この子達、お返しします」


「良いのか?」


「もう何度も何度もログアウトホールを逃してますから、さすがに懲りました。俺はもうこの町から出ることはしません。ここでログアウトホールが開くのを待つことにします。そんな俺にはもう、この子達を借りる資格なんてないんです」


「……わかった。契約満了。『プチエンジェル』、『プチゴーレム』返還」


「二人とも、ありがとう!」


 プチゴーレムは軽く頷き、プチエンジェルは短い腕を精一杯伸ばして、笑顔のまま手を振りながら歪みの中へ帰っていった。


「それで、もう一つの用ってのは?」


「それが俺にもよくわかってないんですけど、仮面を付けた金髪の女の人が、アキさんへ伝言をお願いしたいって、つい昨夜に来たんです」


「……まさか。その人はなんて言っていたんだ?」


「『私について全てを話すことに決めました。ディザイアにて、お待ちしています』とだけ言って、去って行きました」


 今更何を話すって言うんだ? なんで俺に? 意図はわからない。けれど、このタイミングだとあまり良い知らせではないのかもしれない。もしかしてオルフェが『協力者』なのか?


「ああ、ありがとう。それじゃみんなを待たせるといけない。もう行くよ」


「アキさん。どうか生きて、またどこかで会いましょう!」


 アキは頷いてから、テンマ達に目で合図を送った。立ち止まっていたテンマ達は再び歩き出し、アキもそこに合流する。


 またどこかで、か。エタニティオンラインから脱出したら現実でみんなと集まろうか。その時なら、ちゃんと笑いあって過ごせる気がする。

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