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俺の知ってる戦国時代と違う! ~歴史知識が通じない世界で、優秀すぎる家臣たちが天下を目指す~  作者: チャプタさん


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第五十六話 魔王の御前会議

第五十六話 魔王の御前会議


寺社ネットワークをはじめ、保護圏内の様々な仕組みが、着実に機能し始めていた頃、拠点には、これまで以上に重要な意思決定が求められる場面が、増えつつあった。義元本隊による、さらなる兵の派遣という報せは、拠点全体に、確かな緊張感をもたらしていたのである。


ある日、この重要な案件について、緊急の軍議が開かれることとなった。四天王をはじめ、林秀貞ら旧臣、そして、佐々家をはじめとする豪族の代表者たちまでもが、拠点に集結した。これまでにない、大規模な会議であった。


私は、その会議の開始を前に、これまでにない重圧を感じていた。(義元本隊が、本格的に動くかもしれない。これは、絶対に、生半可な判断で済ませてはいけない問題だ)


会議が始まると、居並ぶ面々は、次々と、それぞれの立場からの意見を述べていった。ある旧臣は、より積極的な防衛体制の構築を主張し、別の豪族は、和睦の可能性を探るべきだと提案した。議論は、次第に白熱し、様々な意見が、複雑に交錯していった。


私は、その議論を聞きながら、次第に、精神的な限界を感じ始めていた。(みんなの言うことは、それぞれもっともに聞こえる。でも、俺には、この中から、最も正しい答えを選ぶ自信なんて、全然ない……)


議論が長時間に及ぶ中、私は、これまでにないほどの疲労を感じていた。頭が重く、思考がまとまらない。責任の重さが、これまで以上に、私の心を圧迫していた。


(もう、限界だ……。これ以上、この重圧に、耐えられない)


会議の途中、私は、ついに、その場で、意識が朦朧とするのを感じた。誰かが、私の名を呼ぶ声が、遠くから聞こえてくるような気がした。しかし、私は、その声に応える気力すら、もはや残っていなかった。私は、その場で、静かに、深い眠りへと落ちていったのである。


会議の場は、突然の私の様子に、一瞬、動揺の色を見せた。しかし、四天王たちは、すぐに、いつもの解釈へと切り替えていった。


「殿は、この重大な局面において、あえて、深い熟考に入られたのだ」一益が、落ち着いた声で告げた。「我らは、殿の御下知を待つのではなく、これまでの殿の御方針を胸に、自らの判断で、事に当たらねばなるまい」


利家が、その言葉に、深く頷いた。「まさに、その通りにござる。殿は、我らを信じ、この重大な決断を、我らに委ねられたのだ」


こうして、私が意識を失っている間、四天王を中心とした軍議は、私の与り知らぬところで、着々と進められていった。彼らは、これまでの拠点の方針――正面決戦を避け、犠牲を最小限に抑えながら、確実に相手を疲弊させていくという戦略を、改めて確認し、義元本隊の新たな動きに対する、具体的な対策を、練り上げていったのである。


数時間後、私は、ようやく意識を取り戻した。目を開けると、拠点の一室に、静かに横たわっている自分に気づいた。傍らには、心配そうな表情を浮かべた、お市の姿があった。


「兄上……。お目覚めになられたのですね」お市が、安堵の声を漏らした。


私は、ぼんやりとした頭で、身を起こした。「あれ、俺、どうしたんだ……」


お市は、優しく答えた。「軍議の最中に、お倒れになったのです。皆、たいそう心配しておりました」


私は、その言葉に、慌てて周囲を見回した。「軍議は、どうなったんだ?」


利家が、その場に現れ、誇らしげに報告した。「殿、御安心くだされ。殿の御沈黙の間、我らは、殿のこれまでの御方針に従い、義元本隊への対策を、しっかりと取りまとめましてございます」


私は、その報告に、複雑な思いを抱いた。(俺が倒れている間に、みんなが、ちゃんと物事を進めてくれていたのか……)


一益も、続けて報告した。「殿の御沈黙、まことに大きな意味を持っておりました。あの重大な局面において、殿が、あえて動じることなく、静かに構えておられたことで、我らも、冷静に議論を進めることができました」


私は、その解釈に、もはや、訂正する気力もなく、ただ曖昧に頷くしかなかった。(俺、単純に、疲れすぎて倒れただけなんだけどな……。でも、結果的に、みんなが、ちゃんと対策を立ててくれたなら、それでいいのかもしれない)


その夜、私は、寝所で静かに休みながら、この日の出来事を振り返っていた。(俺一人が、すべてを決めなくても、みんなが、ちゃんと考えて、道を切り開いてくれる。それって、本当に、ありがたいことなんだよな)


その素朴な感慨を胸に、私は、静かに、再び眠りへと落ちていったのだった。以後、こうした重要な局面で、私が精神的な限界から、意識を失う――あるいは、深い眠りに落ちる――という出来事は、「魔王の御前会議」の、一つの恒例行事として、拠点の中で、確かな伝説として、定着していくこととなるのである。

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