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俺の知ってる戦国時代と違う! ~歴史知識が通じない世界で、優秀すぎる家臣たちが天下を目指す~  作者: チャプタさん


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第三十六話 魔王の裁き

第三十六話 魔王の裁き


保護圏が拡大し、その範囲が街道の要所にまで及ぶようになると、これまでとは異なる種類の問題も、少しずつ表面化するようになっていた。ある日、拠点に、切羽詰まった様子の商人が駆け込んできた。


「信照様、お助けください!」商人は、荒い息を整えながら訴えた。「街道にて、盗賊の一味に、商隊が襲われました。仲間が数名、負傷しております」


私は、その報せに、胸の奥が締め付けられるような感覚を覚えた。(せっかく、みんなが安心して行き来できるようになってきたのに……)


私は、四天王を呼び集め、事の詳細を確認した。一益が、すでに情報を集めていたようで、簡潔に報告した。


「殿。この盗賊の一味、これまでも度々、周辺の商人を狙っておったようにございます。人数は十数名ほど、いずれも荒くれ者の集まりとのこと」


私は、その説明を聞きながら、複雑な思いを抱いた。(盗賊っていうのも、きっと、何か事情があるのかもしれない。でも、傷ついた商人たちのことを考えたら、放っておくわけにはいかない)


「利家、討伐してくれ」私は、そう告げた。


(訳:本当は、あまり戦いたくないんだけど、これ以上、無関係な人たちが傷つくのは、絶対に避けたいんだ)


利家は、力強く頷いた。「承知いたしました。この利家、必ずや、その盗賊どもを、討ち果たして御覧に入れましょう」


その夜のうちに、利家は少数精鋭の部隊を率いて、盗賊の根城へと向かった。事前の情報により、彼らの隠れ家の位置は、すでに一益によって特定されていた。奇襲は成功し、盗賊たちは、ほとんど抵抗する間もなく、捕らえられることとなった。


翌朝、利家は、この討伐の成果を、私の前に報告した。「殿、盗賊どもの討伐、無事に完了いたしました。頭目をはじめ、主だった者たちは、すべて捕縛いたしております」


私は、その報告に、安堵の息をついた。「よかった……。負傷者は出なかったか?」


「はい、我らの側に、軽傷者が一名出た程度にございます」


私は、少し考え込んだ後、尋ねた。「その、捕まえた盗賊たちは、これから、どうなるんだ?」


一益が、その問いに答えた。「通常であれば、厳しい処罰が課されるところにございますが……殿の御意向は、いかがでございましょうか」


私は、その問いに、正直なところ、答えに窮した。(俺、そんな厳しい処罰とか、決めたくないんだけどな……。でも、放っておくわけにもいかないし)


私は、しばし考えた末に、告げた。「話を、聞いてみたい」


(訳:どうしてそんなことをしたのか、まず、事情を知りたいんだ)


私の前に連れてこられた盗賊たちは、皆、痩せこけた、貧しい身なりをしていた。頭目と思しき男が、震える声で告げた。


「信照様……。我らは、元々、この付近の百姓にございました。しかし、度重なる戦乱で田畑を焼かれ、生きるすべを失い、やむなく、このような真似を……」


私は、その話に、胸を痛めた。(そうか……。この人たちも、戦乱の被害者だったのか)


私は、四天王たちに向かって告げた。「この人たちに、もう一度、暮らしていく場所を、与えてやれないか」


(訳:処罰するんじゃなくて、生きていけるようにしてあげたいんだ)


その言葉に、居並ぶ者たちは、しばし言葉を失った様子であった。やがて、藤吉郎が静かに口を開いた。「殿は、罪を裁くのではなく、その根にある苦しみに、目を向けられるのですな」


「まあ、そんな大層な考えじゃないけど……」私は、曖昧に答えた。


藤吉郎は、深く頷いた。「承知いたしました。この者たちには、拠点周辺の開墾を任せてみるのは、いかがでしょうか。田畑を開けば、再び、まっとうな暮らしを取り戻せましょう」


私は、その提案に、素直に賛同した。「うん、それがいいと思う」


こうして、捕らえられた盗賊たちは、処罰されることなく、拠点周辺の未開の地を開墾する役目を与えられることとなった。彼らは、その恩情に、深く感謝し、以後、拠点への忠誠を誓う者たちとなっていったのである。


この一連の出来事は、瞬く間に、周辺の村々に伝わっていった。「信照様は、罪を犯した者すら、慈悲深く扱われる」――そんな評判が、さらに広まっていくこととなった。


「魔王の裁き」――誰かが、そう呼び始めたこの評判は、単なる厳格な処罰とは異なる、独特の意味合いを帯びていった。悪事を働いた者を、力で徹底的に打ち砕く一方で、その根にある事情には、確かな慈悲を示す――そんな、二面性を持った評判として、拠点の名は、さらに広く知られていくこととなったのである。


私は、その頃、開墾に励む元盗賊たちの様子を、遠くから見守っていた。彼らは、真剣な表情で、土を耕し、種を蒔いている。その姿を見つめながら、私は、静かな充実感を覚えていた。


(誰かを罰することより、誰かが、もう一度、まっとうに生きていけるようにすることの方が、俺には、ずっと大事なことに思えるんだ)


その素朴な想いを胸に、私は、この日もまた、拠点の平穏な日常へと、静かに戻っていったのだった。

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