決定
僕の言葉にニュースベック大将閣下が頷く。
「どういうことですか?彼に何かあると?」
それを横からずっと不服そうに聞いていたエマ第二王女殿下が疑問の声を上げる。
「彼が生まれ持った属性は土属性なんだよ」
「はぁー?土塊に何が出来るというのですか!?」
ニュースベック大将閣下の答えに対し、彼女はド直球な侮蔑の言葉を吐き捨てる。
「うわっ」
何度も聞きなれたその言葉。
だけど、戦争が始まってから言われることが少なくなっていたそれを久しぶりに浴びた僕は思わず変な声をあげてしまう。
「……何です?」
そんな僕をエマ第二王女殿下がにらみつける。
「何だ?君ともあろうものが時代の遅れかぁ?魔法なんて既に無用の長物と成り果てたぞ。そんな魔法の属性一つで他人を貶める必要があると?」
「……それは事実ですが、かといって土塊に何が出来ると?」
「塹壕が一瞬で掘れる。そうだろう?」
「えぇ、掘れますね。何十キロという単位で」
ニュースベック大将閣下の言葉に対し、僕は力強くうなずく。
「……はい?」
「待て待て待て!?そんな広範囲に行けるのか!?」
そんな僕の頷きにエマ第二王女殿下は目を点にし、ニュースベック大将閣下は動揺の声を上げる。
「僕はこれでも貴族の生まれですよ?火属性の魔法使いと言えば、街一つ飲みこむような業火を用いて戦争を決めていた存在だったじゃないですか。それを土属性に変換したらこんなものでしょうよ」
事実、シーアお姉さまなんかはエゲツない。
あの人、ガチでやろうと思えば一瞬で王都を灰に出来るからな。まぁ、今は対魔法結界があって無理なんだけど。
「……いや、流石に何十キロは規格外だと思うがっ」
「ウィルアード侯爵家は武勇にとんだ家なので」
魔法を自在に操り、武勇にとんだ家だったからこそ、緒戦で意気揚々と前に出すぎて早々にぶっ潰されたわけですが。
「……ま、まぁ!こんな異常能力なんだ!戦場で大活躍を見込めるのもわかるだろう?」
「にわかには信じ難いですが……」
「土で壁を作ったりも出来ますし、防御なら任せて欲しいですね」
「それを信じて進めよう!ウィルアード准将の大胆な作戦は考慮に十分値する。西部方面から引き抜いた軍でここを突破するのはわかったが……どこまで進むつもりか?旧ポルン王国領の全土解放か?」
「いえ、流石にそれは進み過ぎでしょう。旧ポルン王国領を東西で分断しているナーレ川を目指しましょう。ここまではちょうど平地が続いていますから。ここまで進み、川も利用して防衛線を築きましょう」
「あぁ、それが一番現実的だろうな」
僕の言葉にニュースベック大将閣下は頷いてくれる。
「……本当にこの作戦で行くのですか?当初の作戦で十分じゃないですか!」
その態度から僕の作戦を正式に採用する流れであると察したのだろう。
改めて、エマ第二王女殿下が静止の声をあげる。
「戦争というのは大胆に行動してこそだ。勝算はある。我々で戦争を終わらせに行こうではないか」
「欲張り過ぎです……!」
「私はそれでもって新大陸で名を挙げたのだ」
「……くっ」
ニュースベック大将閣下の態度が硬くなであると見たエマ第二王女殿下が下唇を噛む。
「では、エマ第二王女殿下。貴方がウィルアード准将と共に東サンドロスを守り抜いてくれ」
「はい!?」
そんなエマ第二王女殿下へと軽く告げたニュースベック大将閣下の言葉に彼女は大きく反応する。
「どうした?」
「私がそこを担当するのですか?!」
「上からのお達しでな。お前の下にウィルアード准将をつけ、彼があれ以上に手柄をあげても目立たなくなるようにとな。これは飲みこんでくれ」
「……それを僕の前で言っていいやつですか?」
「隠しておくのも気持ち悪いだろう?」
「そ、そんなことより私です……!なんで私がっ!?」
「ここは軍だ。そして、私が告げたのは上からの命令だ。理解しろ」
「……はいっ」
今、告げられたニュースベック大将閣下の言葉に拒否感はない。
エマ第二王女殿下は頷くほかない……いやぁー、可哀想。すべては僕のせいだけど。
「ウィルアード准将の作戦を採択しよう。我々は三つに軍を分ける。エマ第二王女殿下の率いる第一軍。私が率いる第二軍。西方から転身してきた第三軍だ。それぞれの行動指針は以下の通りだ!」
第一軍の目的は戦線維持。
第二軍の目的はローシャ帝国の第二軍を包囲殲滅した後、オースティン帝国の救援に向かう。
第三軍の目的は釣り出したローシャ帝国軍を包囲殲滅した後、ナーレ川を目指して東進し、防衛線を築く。
「相違はないな?」
「ありません」
「……ありません」
「うむ!良き返事だ。さぁ、我が国の命運を決めようじゃないか」
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