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【本編完結】 少女だけの部隊を率いたのは魔を狩る者と恐れられた男だった  作者: 犬尾剣聖


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20 ご褒美







「ラムラ分隊とソニア分隊は後方をサリサ分隊は左側を守れ。右側は俺が担当する。フェイ・ロー伍長、後は頼むぞ。隊列変更!」


「え、どうしろというのじゃ?」


 俺の「あとは任せた」発言に困惑するロー伍長。

 こいつなら大丈夫だろうという俺の勝手な判断だが。


 そんなロー伍長は放って置いて、ペルル小隊長に何か言われる前にこの場を走り去る。


 俺が守ると言った右側だが、道とその両端に生える草しかない。

 主に道を横断させないことが俺の仕事だ。

 

 草むらの中に入るとゴブリン兵が見えなくなって戦いにくいし、味方からの誤射も怖い。

 だから大人しく道の真ん中にいるつもりだった。

 そう、最初はそう思っていた。


「逃がすかぁあっ」


 道を横断しようとしたゴブリン兵に俺は襲い掛かかり2匹は仕留め、2匹に戦闘不能なほどの手傷を負わせたが、残る一匹が元来た方向へ逃走した。

 草むらに逃げたゴブリン兵を追っていき、その背中へ手斧を振り下ろす。


 俺の手に背骨を砕く感触が伝わってきた。

 するとゴブリン兵は痙攣けいれんを起こしながら崩れ落ちる。


 俺は高揚こうようしていく自分を感じる。


 さらに俺の視界に風とは違う動きの草を発見。


「そこかぁっ」


 その草むらを剣でぎ払う。

 すると何かの手ごたえがあり、剣を振り抜いたと同時に宙にゴブリンの首が舞う。


 よおし、調子が出て来たか。


 そう思った時、草の中をゴブリン兵の頭が幾つも疾走するのが見えた。

 

 動きが早い。


「ゴブリンライダーか!」


 その数6匹。


 その内の3匹が正面から槍を俺に向けて突進してくる。

 

 面白い、受けて立とうかその攻撃。

 

 俺はその場で身構える。


 来る!


 先頭のゴブリン兵の鬼気迫る表情までが見える距離。


 物凄い勢いで槍の穂先が俺の胸へと迫り来る。


 上半身だけをわずかにひねると、槍の穂先が俺の胸部分の革鎧をかすめて行く。

 くそ、脇腹が痛い。

 前の戦いでの骨折の影響だ。


 それでも何とかわしきる。


 ゴブリンライダーが俺の横を通り過ぎようとした時、間近で舌打ちするのが分かった。

 その瞬間、俺はそいつの首の位置に剣を移動した。


 途端にゴブリンの首が血飛沫と共に宙を舞う。


 だが攻撃はまだ続く。

 あと2匹のゴブリンライダーが立て続けに迫り来る。


 再び俺の胸を狙って槍の穂先が迫るが、またしても脇腹の負傷が俺の行動を邪魔する。

 再度身体をひねろうとするも、痛みがそれを許さない。

 

 苦し紛れに左手の手斧を槍に叩きつける。

 それで槍の軌道がそれた。


 と同時に、片足をひょいっと横に出す。


 すると思惑通り、俺の脚につまづいた銀狼が、前のめりに転倒して「ギャン」と小さく悲鳴を上げた。

 その勢いで騎手のゴブリン兵は顔面から地面に突っ込み、「ゴキッ」と何かが折れる音が響く。


 あと一騎。


 最後の3匹目は簡単だった。


 2匹目の転倒で軌道を乱されたそいつは、大きくコースを変更しようとして、曲がり切れずに銀狼が転倒した。


 地面に転がるゴブリン兵を足の裏で止め、「残念だったな」と言葉を送って、そいつの頭に剣を振り下ろした。


 騎手を失った銀狼が立ち上がって俺に牙を向けて来る。

 騎手のいなくなった銀狼は、パッチウルフと大差ない。

 そいつに向かって手斧を投げつけて終了だ。


 さあて、あと3匹か。

 俺を楽しましてくれ。


 俺は残りの3匹のゴブリンライダーを探すのだが、近くにそれらしい動きが見つけられない。

 それどころか、ゴブリン兵の集団が逃げて行く姿が見えて来た。

 

 敵が逃走して行く?


「待て、戦いはこれからだぞ、逃げるとは卑怯だぞ!」


 思わず声に出てしまうも、ゴブリン兵は何度も振り返りながら逃げて行く。

 そのゴブリンへの視線の先を俺も見た。


 そこで初めて異変に気が付いた。


「火事……なのか?」


 俺の後方の草むらが燃えていた。

 灰色の煙がモクモクと空に昇っていく。


 そこで俺は思い浮かんだ。


 ミイニャのブレスか!


 小隊のいる方を見れば、少女達が草の無い道に寄り添うように固まっている。

 もはや隊列は無い。

 ペルル少尉もその塊にいる。


 俺は火を避けながら小隊へと向かった。


「ペルル少尉、ここはまずそうです。本隊に向かいましょう!」


 こうしてゴブリンの襲撃を退けた俺達小隊は、本隊と合流すべく道を急ぐのだった。


 

 襲撃があったことを本隊に知らせないといけない。


 こういう時に馬があればよいのだが、生憎あいにくうちに小隊は馬を持っていない。

 小隊長クラスだったら馬の一頭くらい持っていてもおかしくないのだが、ペルル少尉はどういう訳か一頭も持っていない。

 せめて荷運び用のロバか使役獣があればだいぶ違うんだが、それを俺らが口にすることなどできない。

 いっそのこと、金持ちそうなロー伍長に買ってもらうのも手かもしれない。


 馬の値段はピンキリだが、中流階級の平民でも買える金額の馬もある。

 ただ、用途にもよるが養育の費用がソコソコかかるらしい。

 だから俺達が荷物を運ぶときは荷馬を借りて来るか、人力で運ぶしかない。


 もちろん負傷兵も同様に人力になる。

 少女に負傷者が出ていた。

 幸いにも軽傷で済んだが、負傷者は足をやられている。

 だが戦闘での負傷ではなく、隊列を組む時に足首をひねってしまったという負傷だ。


 戦闘中といえば戦闘中なのか。

 足首が結構腫れていて、自力で歩くのは辛そうだった。


 ペルル少尉には理由をゴブリンとの戦闘で負傷とだけ伝え、今は俺の肩に座っている。

 別の言い方をすれば肩車だ。


 俺に肩車をされている少女の名はメイケ。


 周囲からは黄色い声援みたいなのが聞こえてくるんだが。

 茶化すのはやめてくれ、結構これはきついぞ。

 こういう時に男が他にいないのは苦労する。

 全部俺が負担を強いられるって訳だ。


 自分の装備が背中にある為、この方法しか運ぶ手立てがなかった。

 

 初めは何の気なしに肩車を提案したんだが、当のメイケが顔を赤くしてうつむいてしまった。

 その時、彼女の代わりにラムラ伍長が「それは良い考えですよ」と言ってくれて、そこでやっとメイケを運ぶことが出来た。


 それで今、俺の両頬りょうほほの直ぐ横には、若い少女の真っ白な生足が二つある。


 これは新手の拷問だった。

 完全に俺の失策だ。


「金メッケ、何赤くなってんのさ」

「いいなあ、私も肩車してほし~な~」

「私はお姫様抱っこが良いいかなっ」


 少女達が勝手なことを言って茶化してくる。


 だいたい、俺の両手はどこに置けばよいんだ。

 メイケをしっかり安定させるのは、その艶めかしい両足を抱えればよい。

 だけど今、それをやったらなんか色々気まずい。

 

 俺が手の置き場に困っていると、ラムラ伍長が出て来て俺の両手首を掴んでメイケの両足に持っていっていった。


「ボルフ曹長、しっかり持たないと落としちゃいますよ、ふへへへへ」


 な、なんだその薄気味悪い笑いは!


 他の小隊が見ていたらきっと大変な事になったと思う。

 きっと変な噂が広がるよな。


 そこでペルル少尉が俺をチラリと見ながらつぶやいた。


「それって、ご褒美にしか見えないよね」


 聞かなかったことにした。





 



自転車操業になってましたが、マンボウで少し時間が取れるようになりまして。


頑張りましたよ。

ストックが一話増えました(パンパカパーン♪)


なので明日も多分投稿します。

ただ投降後に推敲になりそうです。


ではでは。







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