世界、調整前
勇者は基本、給料がない。
そもそも、支度金すらもらっていない。
王城に呼び出されたあの日。
「勇者よ」
「……はい」
この日の呼び出しは、やたらと早かった。
「このタロス大陸において、
各国をまとめておった――バルドラム帝国が落ちた」
「はい」
「秩序は崩れ、各国は孤立しておる」
「はい」
(長いなこれ)
「各国も勇者をかき集めているそうだが――」
「……はい」
(今どの辺や)
意識が飛ぶ。
気づけば、
「ゆえに――
グレイン王国の勇者として、レオよ。
魔王討伐の任を与える」
「……は?」
そういう話になっていた。
「なお、我が国も余裕があるわけではない」
「はい」
「そなた、普段より人助けをしておると聞く」
「……?」
「父は医者であろう」
「はい」
「ならば問題あるまい」
「いやあるやろ」
無一文で放り出された。
王城からの帰り。
「なんで支度金ないねん!!」
ぐぅ。
腹が鳴る。
「はぁ……腹も減ったし、やる気も出ねぇ」
「おっ、レオ。今帰りか?」
「おうよ。ちょっと王城までな。その帰りだ」
「そうか、ちょうどよかったぜ! こないだうちのばあさんが世話になったし、これ、よかったら食ってくれ!」
「気にせんでもええって。俺もたまたま通りがかっただけやしな」
「いやいや、それでも助かったんだ! 持っててくれよ」
「わーったよ! ありがとな!」
一口かじる。
「……うま」
(なんか今ならやれる気がする!)
「いっちょ世界でも救ってやりますか!」
意気揚々と街を出る。
スライムたちが、草むらから現れた。
一体。
二体。
三体。
四体。
五体。
「ちょっと多い気もするが……やってやるぜ!」
瞬く間に囲まれる。
「あれ? 無理くない?」
死んだ。
――
「勇者よ。死んでしまうとは情けない」
目を開ける。
王様と目が合う。
わずかに、驚いた顔をしていた。
「……さっき、オレ死んだよな?」
「そのようだな」
「やはり勇者とは、この世の理から外れた存在――」
「?」
「先ほども説明したが、
勇者のパーティが全滅した場合、ここに戻る」
「……マジか」
「ただし」
王様が続ける。
「仲間は戻らぬ」
「は?」
「遺体は棺に収められる。教会で金を払えば蘇生も可能だ」
「いや金払ったら蘇るんかい」
「運ぶのはお前だ」
「……一人で?」
「当然だ」
「無理やろ」
次の日。
「レオ! ちょうどいいところに!」
声をかけられる。
見ると、大きな荷物を抱えている。
「これ、ちょっと手ぇ貸してくれんか?」
「おう」
軽く持ち上げる。
「おお、さすがレオやな!」
「いやまぁ、これくらいならな」
荷物を運び終える。
「助かった! 飯でも食ってけ!」
「ええんか?」
「もちろんや!」
座らされる。
飯を食う。
「……うま」
水を飲んで、一息つく。
「……」
(街の人たちよりは強いよな?)
街を出る。
――スライム5体。
「多いて!!」
死んだ。
――王様。
「勇者よ。死んでしまうとは情けない」
(またかよ)
「……」
(これ……詰んでない?)
――暗転。
消えていく人影を、見送る影が一つ。
「……見つけた、勇者の加護」
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