実践、調整前
宿を出て、少し歩いた先。
町の外れを抜ける。
「てかお前、酒場どうすんねん」
「問題ないわ」
「何が問題ないねん……お前しか見たことないぞ……」
しばらく歩く。
やがて、人通りも途絶えたあたりで。
「で?」
アスタリアが、ちらりとこちらを見る。
「どこ?」
「……あの奥の草むらや」
レオが指差す。
「そう」
アスタリアは小さく頷いた。
「レオはどうやってスライム、戦っていたの?」
「殴って」
「べとべとになるわよね?」
「せやで?」
「……」
アスタリアはわずかに眉をひそめた。
「危ないわよ」
「今さらやろ?」
「……まあでも普段は一人やし、どうせ死んだらリセットやしな」
「本当に雑ね」
「そこまで言うかね!!」
ぽい、と何かが投げられる。
「危なっ!!」
慌てて受け取る。
剣だった。
「いや投げるなや!!」
「鞘に入ってるじゃない?」
「鞘に入ってるからって剣投げたら危ないやろ!!」
「でも受け取れたでしょ?」
「結果論やろそれ!!」
「あとこれ、今どっから出した!!」
「さあ?」
「さあってお前」
ざわり。
「ほら、来たわよ」
スライムが、次々と現れる。
一体。
二体。
三体。
四体。
五体。
「ほらやっぱり五体おるやろ?」
「なるほどそういう配置なのね」
「どういう配置や!」
「多すぎるやろ!!」
「ここは本来、パーティで来る場所なのよ」
「なんでそんなんわかんねん!!」
アスタリアが指をさす。
草むらの影に、小さな看板。
『この先、魔物多し。一人危うし』
「見えるか!!」
レオが声を荒げた、その瞬間。
スライムが一斉に跳ねた。
「おい危なっ!!」
アスタリアが一歩前に出る。
三体を引き受ける。
残り二体が、レオへと迫る。
「ってこっち来てる来てる来てる!!」
跳ねる。
一体。
もう一体。
「無理やって!!」
剣を振る。
ぐしゃっ。
「……あ?」
まぐれか、実力か。
一体が直撃し、弾けた。
「よっしゃ――っ!」
だが。
もう一体が、すぐ目の前まで迫っている。
「うわっ!!」
とっさに剣を引く。
ぎりぎりで受ける。
ぬるり、と嫌な感触。
「うわ気持ち悪っ!!」
距離を取る。
構え直す。
「……落ち着け」
跳ねる。
来る。
「今や!!」
振り抜く。
ぐしゃっ。
二体目が弾けた。
「はぁ……っ」
息を荒げたまま、顔を上げる。
視線の先――
アスタリアは、三体のスライムに囲まれていた。
跳ねる。
迫る。
連続で襲いかかる。
「おい危なっ!!」
だが――
すべて、ぎりぎりで外れていく。
「……おい」
「逃げ回ってるだけよ」
「いやどう見ても紙一重で避けてるやん」
「そんなことないわよ」
「いや絶対そうやろ!!」
その瞬間。
一体が、アスタリアに直撃する。
「ちょっ――」
――ぼふっ。
だが。
何事もなかったように立っている。
スライムが、ぶるりと震え――弾けた。
「……は?」
残り二体が、ぴたりと止まる。
そして――
レオの方を向いた。
「また俺かい!!」
「逃げても倒せないわよ」
「お前に言われたくないわ!!」
歯を食いしばる。
「……やったらぁ!!」
跳ねる。
来る。
「はぁ……っ」
体が思うように動かない。
(まずい……このままじゃ――)
「……あれ」
スライムの動きが、さっきより遅い。
「……いける」
振る。
ぐしゃっ。
一体。
もう一体が迫る。
踏み込む。
振り抜く。
ぐしゃっ。
二体目も弾けた。
「……はぁ……はぁ……」
「……やれた」
じわりと、実感が湧く。
「……やった……」
その瞬間。
膝から、力が抜けた。
どさり、と地面に倒れ込む。
「……無理……」
「立ちなさい」
「無理やって……」
「もう一回よ」
「鬼か!!」
ざわり。
草むらが揺れる。
「嘘やろ……」
「ほら、来たわよ」
「スパルタすぎるやろ!!」
跳ねる。
迫る。
「いやちょっ――」
――ぼふっ。
視界が白く弾けた。
王が、深いため息をつく。
「勇者よ。死んでしまうとは情けない」
「せめて三日はもたんのか」
「情けないっていうな!!」
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