表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
2章 砂の海の迷い子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/164

第2節:赤い禁断症状

限界でした 。

 村から逃げてきてから三日 。まともな食事も摂らず、不眠不休で「鉄の騎士」を引きずり続けているのです 。

 膝から力が抜け、私は熱い砂の上へと崩れ落ちました 。


「ぅ……」


 受け身も取れず、頬を砂利に打ち付けます 。

 視界が黒い斑点で埋め尽くされ、遠くで耳鳴りがしていました 。

 空腹と渇きで、内臓がねじ切れるような感覚 。

(でも、水は飲めない)

 なら、どうする?

 答えは、私の身体の中にありました 。


 私は震える手で腰のナイフを抜き、自分の指先へ押し当てました 。

 スッ、と刃を走らせると、ぷくりと赤い雫が浮かび上がります 。

 灰色だらけの世界で、それだけが刺すように赤い。「命」の色 。


 私はその指を口に含み、強く吸いました 。

 鉄錆のような味が、舌の上に広がります 。

 以前よりも、味が濃い気がしました 。それに、色も……記憶の中にある鮮やかな赤より、どこか黒く黒く濁っているような 。


(……まずい)


 けれど、それが喉を通って胃に落ちた瞬間、カッと灼熱のような熱さが体内に灯りました 。

 私の「色」が、私の中で循環する 。

 尽きかけた命に、無理やり火をくべ直すような、(いびつ)で危うい全能感 。


 けれど、それは新しく増えた命じゃない 。

 自分の中の残りカスを、無理やりかき集めて燃やし直しているだけだ――そう、どこかで分かっているのに 。


 ふと見ると、血を舐めとった指先が、ありえないほど白く変色していました 。

 ……いいえ、白いだけではありません 。まるで蝋細工のように、骨が透けて見えるほど透明になっているのです 。


「……なに、これ……?」


 テオの時と、同じだ 。


「……また、透けてる」


 他人にあげた時だけじゃない 。自分で自分の色を回しただけでも、こうなるの? まるで「色」に触れるたび、私という存在の輪郭が削り取られていくみたい 。


 ドクン。

 心臓が早鐘を打ちました 。

 右手の「(あざ)」が、ミチリ――裂けるような音を立てて脈打ちます 。


 手首から(あざ)が、ゆっくりと皮膚の内側を這い上がっていく 。袖を捲り上げなくても分かります 。

「色」を使うたび、「黒」が警告してくる 。


 自分で自分の命を削り、その削りカスを燃やして足を動かす 。

 それは、止まれば死に、進んでも死ぬ道でした 。


「はぁ……あぁ……」


 荒い息を吐きながら、私は立ち上がりました 。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ