0色目の後悔
――これは未来の断片。彼女がまだ知らない“終わり”の残像。
世界はこんなにも鮮やかなのに、あなたの体だけが冷たかった。
視界を埋め尽くすのは、目が痛くなるほどの黄金色だ。
甘ったるい、腐った果実のような幸福の色。
私たちが目指した場所。
私たちが救おうとした世界。
けれど、その代償がこれなら――救済なんて、ただの悪趣味な冗談でしかない。
「……ねえ、アイゼン」
返事はない。
巨大なその鉄の指は、もう二度と、私の頭を撫でてはくれない。
ただの鉄塊に戻ってしまった彼が、最後に守ろうとしたのが「私」だなんて。そんなの、計算間違いにも程があるよ。
ズキリ、と右腕が熱を持った。
袖をめくり上げると、皮膚を侵食していたどす黒い痣の根が、心臓にまで侵食しかかっている。あと数センチ。あと数分。
そこまで届いていれば――私はきっと、もう二度と“色”を使えなくなって、楽になれたのに。
生き残ってしまった。
世界に色を取り戻して、あなたを失って、私だけが「勇者」として讃えられる……。
そんな結末、私は認めない。
「――戻そう」
私は、まだ温かい自分の血を、冷え切った鉄の装甲に擦り付けた。
色彩をあげる。私の全部をあげるから。
だから目を覚まして。
そしてまた、あの灰色の砂漠から――“始まってしまう”んだね。
世界なんて救わなくていい。
あなたが隣にいてくれるなら、私は地獄だって愛せるんだ。
視界が白く弾ける。
巻き戻るみたいに掠れていく意識の風切り音、私は祈るようにその魔法を口にした。
「これは時間じゃない。私のほうが壊れて、“戻る”だけだ」
「彩よ、還れ――色彩回帰」




