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光輝士セイグリッター  作者: なろうスパーク
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第12話「時和中学の人々」

そして授業が終わり、お昼休み。

シャルルは4班メンバーに連れられて、学校の屋上でお昼を食べに来ていた。


通常、屋上は封鎖されている。

が、時和中学においては屋上は解放されており、カフェのようなイスとテーブルが置いてある。

お昼休みには生徒で賑わう、ちょっとした人気スポットだ。



「えっと………五三、五三匠です、さっきはありがとうございます」



あの時のメガネの男子「五三匠(いつみたくみ)」が、ガーゼの張られた顔でシャルルに礼を言う。

彼を加えた五人で、4班メンバーは屋上にてお弁当を食べていた。



「あの、皆さん友達なんですか?」

「んむんむ………ん?まあそんな所」



シャルルの問いに、勝一はお弁当のカツを頬張りながら答える。

シャルルも、春香がわざわざ作ってくれたお弁当を広げている。



「勝一、食べながら答えないの、お行儀悪いよ」

「悪い悪い」



行儀の悪さを早苗に咎められ、はいはいと言うように軽く返す勝一。

まるで母親と子供だ。



「シャルル君、私ね、ユアチューブでお菓子作りの動画投稿してるの、よかったら見て頂戴ね」

「はい、烈華さん」

「響でいいよ、響で」



そう話す響のお弁当は、他と比べるとやや豪華に見える。

ユアチューブ………動画サイトにお菓子作りの動画を上げている事も合わせて考えると、彼女は料理が趣味のよう。

好きこそ物の上手なれ、というやつだ。



「そうだ!学校終わった後ゲーム屋寄ろうぜ!シャルルの歓迎会も兼ねてさ!」

「いつもの所ね、いいわよ」



そんな、他愛のない会話を交わす、4班の面々。


その中で、シャルルは久々に、温かさを感じていた。


故郷・惑星アマデウスで過ごした、友との日々。

4班の面々のように、共に勉学に励み、共に遊んだかけがえのない思い出。


そんな、もう二度と帰らぬ日々が、シャルルの脳裏に甦ってきた。



「………シャルル君?」



異変に気付いた早苗が、心配そうに声をかける。

シャルルの目から、一筋の雫がこぼれ、頬を伝う。


泣いていた。

惑星アマデウスでの、友と過ごした日々を。

戦火の中置いてきた、あの思い出して。



「ど、どうしたんだよシャルル?」



勝一もそれに気付き、心配して声をかけてきた。

麗香と匠も、心配そうに見つめている。



「………ちょっと、昔あった事を思い出してしまっただけです、ごめんなさい」



涙を拭い、シャルルは彼等に心配をかけまいと微笑んだ。

だが、4班の面々は、それが無理をして作った笑顔である事は解っていた。



「………シャルル」



勝一が、先程とは打って変わっての、真剣な表情を浮かべている。



「何か悩んでいる事があるなら言ってくれよ、俺達はもう友達なんだ、遠慮する事は無ぇよ」



まるで言い聞かせるように、勝一はシャルルに語りかける。

本気で心配してくれているという事が、彼の口調と言葉から伝わってくる。



「………はい、ありがとうございます」



勝一の優しさに、シャルルは涙を拭い礼を言う。

次に浮かべた笑顔は、彼等の友情に感動しての、心からの笑顔だった。



「そうだ!これ、昨日作ったんだけど、よかったら皆食べて!」



響が、お弁当を入れていたバスケット籠から一つのケースを取り出した。

開くと、そこには響が作ったクッキーが詰められていた。

熊の顔やハートを象っており、どれも可愛らしく、美味しそうだ。



「おっ、こりゃ美味そう!いただきまーす!」



お弁当を食べ終えた勝一が手を伸ばしたのを皮切りに、早苗や匠もクッキーに手を伸ばす。



「………いただきます」



シャルルも、彼等に続き響のクッキーに手を伸ばし、口の中に放り込む。

砂糖の甘い味が、口の中に広がった。





………………





ガンッ!


塗料を入れるための大きな缶が蹴飛ばされ、地面を転がる。

蹴飛ばしたのは、あの時の三白眼の不良。

金髪やピアスの不良達も、ふて腐れるように立っている。



「チッ!面白くねぇ!」



体育館の裏。

そこは不良達の溜まり場である。


昼休みの時間を考えると、教室から離れたこの場所にいると遅れてしまう可能性が出てくる。

が、不良の彼等は最初からサボるつもりでいる為問題はない。



「ったく何様のつもりだよあの転校生野郎が!」

「まったくだぜ、カッコつけやがってよ!」



金髪もピアスも、口々に罵声を吐く。

どれもこれも、自分達の邪魔をした転校生………シャルルに向けた悪口だ。



「女子も女子だ!あんなナヨナヨした野郎にキャーキャー言いやがって!」



三白眼の不良もそれに続く。


外国から来た美形の転校生=シャルルの噂は、瞬く間に学校中に広まった。


当然、多感な時期の女子達が、そんな少女漫画や乙女ゲーから飛び出してきたようなシャルルの事を放っておくはずもない。


そして、三白眼の不良はその事を酷く不快に思っていた。



「あの転校生野郎、今日帰りにシメてやろうぜ!」

「そりゃいい!あの女みてーな顔を判別できねぇぐらいボコボコにしてやる!」



金髪とピアスが立ち上がり、拳を鳴らす。

この拳をあの憎きシャルルにぶつけてやると言わんばかりに。



「そうだ、あのクソ転校生には、イキったらどうなるかをたっぷり教えてやらねぇとなァァ!!」



蹴飛ばした缶を踏みつけながら三白眼も怒る。

缶をシャルルに見立てて、ガンガンと何度も踏みつけながら。


三人揃えばなんとやらか、三人が揃ってシャルルに憎悪を燃やし、叫ぶ度にシャルルへの怒りはますます増幅される。



その時であった。



「へぇ、面白そうな事考えてますね」



突然、女の声が聞こえた。

この場所には不良達以外誰もいないハズなのに。



「誰だッ!?」



先生でも来たのかと思い、三人の不良は声の聞こえた方向を向く。



そこには、一人の女性が立っていた。


春先だというのに、着ているだけでも暑そうな白いコートのような服を着込み、サングラスをかけた銀髪の女性。


不良達は、彼女がこの学校の教師ではない事が解った。

そして、少なくとも彼女がこの学校からすれば部外者だという事も。



「………誰だよ、あんた」



音も立てずに現れた彼女に、不良達は警戒心を剥き出しにする。

彼女が不審者だという事もあるが、それ以上に何か「(おそ)れ」のような物を、彼女は感じさせる。



「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ、私は貴殿方の事を学校に喋ったりはしませんよ」



そう言って笑ってみせる彼女だが、それすらも異質な物に感じてしまう。

何かを含んだ笑いというのだろうか。

少なくとも、彼女が本心で笑っているわけではないのは解る。



「………むしろ、私は貴殿方に協力してあげようと思いましてねぇ」



彼女が、懐から何かを取り出した。


黒光りする鉄塊のようなそれは、リンゴほどの大きさで、彼女の手の中に収まっている。

赤や青の無数の配線が繋がれ、まるで心臓のようにドクンドクンと蠢いていた。



「………な、なんだよ、これ」



蛇に睨まれたカエルがごとく、不良達は固まってしまう。

全身の遺伝子が、彼等に「逃げろ」と叫んでいた。


しかし、彼等の足は地面に釘付けになり、視線は彼女の持つ歪な鉄の塊に集中していた。



「………貴殿方の報復を、もっと面白くする物ですよ」



彼女………竜将軍ジャクスが、妖しく笑った。





………………





ふと勝一が携帯の画面を見る。

時計が示していたのは、昼の12時54分。

あと5分ほどでお昼休みは終わりを告げる。



「そろそろ教室の方戻ろうぜ」

「そうね、五分前行動五分前行動」



広げたお弁当を片付け、教室に向かう勝一達。

シャルルも、食べ終わったお弁当を、再び巾着の中に仕舞う。


あと2時間の授業をこなし、放課後に勝一の言っていたゲーム屋に行こうと考えていた。


その時だった。



ドワオッ!



突然、体育館の方から爆音が響く。

何事かと視線をやれば、体育館の裏から白い爆 煙が上がっている。



「な、何だ?!」

「爆発!?」



突然の出来事に、体育館の方に目をやる勝一達。

そんな中、シャルルも驚いていた。

だが、勝一達のように爆発その物に驚いていた訳ではない。



「あの爆発………まさか!?」



何故なら、シャルルはあれが何なのかを知っていたから。


そう、かつての惑星アマデウスでの戦いで、ウィーズがアマデウスの軍隊を最も苦戦させた物。

それが出現する際の現象が、あれなのだ。



「な………何アレ?!」



最初に、匠がその姿を見て叫んだ。



煙の中より立ち上がる、一体の巨影。


昔の図鑑に載ってるような、尻尾を引きずっている二足歩行の恐竜のような身体。


ダガーナイフのような太く鋭い牙の生えた、狼のような頭。

それが三つ、その頭部として存在している。


機械化した背中には、原子炉の制御棒を思わせるユニットが、四本生えている。



『グルルル!』

『ガグゥ!』



以前現れたアーマイゼやシュピンネとは違う、有機的な生物を思わせる姿。

だが、それは間違いなく、かつて惑星アマデウスを破戒し尽くした軍勢の中に居た。



『ガグゥオオオーーーッ!!』



天に向かい産声を挙げるがごとく「インベイドベム・ヘルヴェロス」が、その咆哮を空高く響かせた。



「怪獣だ!」

「逃げろ!」



何の前触れもなく現れた驚異を前に、時和中学はあっという間にパニックに陥った。


相手は地震や家事のような災害と違い、意思を持って動き回るインベイドベム。


普段から行っていた避難訓練など役に立たず、全校生徒が揉みくちゃになりながら、出口に殺到する。



「うわっ………皆いるかー?!」



人ごみに揉まれながら、勝一が叫ぶ。

彼等4班メンバーも、そんな中に居た。


先程まで屋上に居たからか、避難も遅れてしまっていた。


見た所、何時ものメンバーはちゃんと一緒に避難している。

早苗も、響も、匠も居た。


だが。



「待って!」



人混みに流されながら早苗が叫んだ。

その顔は、まるで重大な失敗に気付いた時のように、ひどく青ざめていた。



「………シャルル君がいない!」





………………





一方その頃。

シャルルは、誰もいなくなった校舎の片隅に居た。

人混みに紛れ、一人抜け出してきたのだ。



「………あれ、間違いないよね」

『はい、惑星アマデウス進行時に確認された、人間を変質させるタイプのインベイドベムです』



制服の中に隠していた、ペンダント状態のデオンを取り出すシャルル。

窓の外では、体育館を破壊したヘルヴェロスが遠吠えをしている。



………アマデウス軍を苦しめたのは、何もインベイドベムの純粋な強さだけではない。


インベイドベムには、機械を人間と融合させ、変質させたタイプの物もあった。

その時、その人間の持つストレスや心の闇に比例して、より強力な物が誕生する。


敗戦を続けていたアマデウス軍において、それは驚異となった。

共に戦った仲間がインベイドベムとなって向かってくる上に、敗戦続きの為にインベイドベム化する兵士はいくらでも居たからだ。


取り除けない訳ではなかったが、何十体何百体も現れるインベイドベムの一体一体に、それを施す程の余裕は無かった。



「デオン、あのインベイドベムの中にいるのは?」

『スキャンの結果は三人です』

「よし………!」



瞬間、デオンから閃光が広がる。



『戦闘礼装!展開!』



光の中で、シャルルの着ていた服が分子レベルにまで分解され、デオンの中へと吸い込まれる。


一糸纏わぬ姿になったシャルルの身体に、今度はデオンの中に圧縮格納してあった戦闘礼装………戦う為の戦闘服が展開する。


シャツに包まれていた上半身には、肩章のついた青いきらびやかな服が。

ズボンを履いていた下半身には、白く長いズボンが、それぞれ展開する。


手の周りに白い手袋。

足には黒いブーツ。

背中に白いマントが靡く。

そして仮面が、その顔を覆う。


最後に、デオンが光に包まれる。

デオンはペンダントの姿から、柄に赤い宝石の輝く一振りの剣の姿「デオンカリバー」へと変化。

それをシャルルが持ち、構える。


変身が完了した。



「よし、行くか!」



マントを靡かせ、シャルルはヘルヴェロス向けて飛び立つ。

愛する友のいるこの学校を、ヘルヴェロスの魔の手から守るために。

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