買い食いをしよう2
楓も同じ道で帰る(?)ことになり、目的の寄り道をすることに。
「寄り道と言えば買い食いだろ!」
と言う楓の言葉で、チェーン店が並ぶ場所へと向かう一行。
ラーメン屋やカフェ、ジャンクフード店が並ぶ街に目を輝かせるボッチ二人組は目を輝かせていた。
「一人で来るのと複数で来るのとでは景色が違うように感じるな」
「これが噂で聞く『リア充』の見る光景か」
「馬鹿なこと言ってないで入る店決めますよ」
ノープランで来たためにまだどこに入るかは決まっていない。
そのためみんなの意見を聞いて店を決めることに。
「我あそこがいい! あのラーメン屋!」
「よく僕の前であんな長蛇の列ができたラーメン屋を提案できたなおい」
こめかみを正確に捉えてゲンコツでぐりぐりされ、美夜佳は苦しみ悶える。
「私は夕飯があるからラーメンはちょっと。飲み物だけならいいかしら」
静流の要望により、ラーメンは却下された。
「ならあそこのコーヒーショップはどうだ?」
「ごめん、私は夕飯を兼ねたい」
楓の提案は千百合によって却下。
「進君は並ぶのが嫌。静流は飲み物だけ。そして千百合は夕飯として何か食べたい。これは店選びで苦労しそうだな」
その時、進に妙案ひらめく。
「部長、ここは間を取って帰るのはどうでしょうか」
「どこの間を取ったのそれ?」
「でも、他に何があるんです? 後はイートインもテイクアウトもできるハンバーガーショップで買うぐらいしか思いつきませんが」
「なんで最善策を先に出さないの?」
というわけで行き先が決まり、近くのハンバーガーショップ『マスドナルド』へ入店した。
「ここがマスドナルドの店内か!」
「あら、美夜佳ちゃん来たことないの?」
「親と一緒にドライブスルーで来たことはあるが、店内は一度も」
「ふふっ、美夜佳はマスドナルド初心者ということか」
「その言い方……もしや部長!」
「何を隠そう私は店内で食事をしたことがある! 団体客の隣に座っていつもリア充感を味わっていたぞ」
「おおっ!」
「部長、みっともないですから絶対にやめてください」
「当然だ。今回はみんながいるからな!」
そういうことではないと言いたげな表情も浮かべるも、面倒くさいため進はスルーする。
「ところでどのタイミングで言おうか迷ってたんですけど、質問いいですか?」
「なんだ?」
「初めてここに来たんですけど、マ○ドナルドか○スバーガーの系列店ですか?」
「まったく関係ないが?」
「すんごく見覚えのあるMのマーク付いてましたけど、商標権大丈夫なんですかこの店」
「大丈夫じゃないかしら。いざという時に訴えてお金を回収する用に見逃してるんじゃない?」
「僕的には高宮先輩の発言を名誉毀損で訴えてほしいですね」
「大丈夫大丈夫。たしかに名前は似てるけど、坂本君が思ってるほど似てないから」
「そうですか」
と言いながらも千百合の言葉に半信半疑だった。
「ちなみにマスド、マッス、マスバーガーの呼称で派閥ができてる」
「最後のは○スバーガーに引っ張られてるじゃないですか」
「我が友。この際細かいことはいいではないか! 早く注文しよう! あ、注文は我に任せろ! 我の話術で華麗に注文しよう」
ただの注文で妙にやる気な美夜佳。
壁に貼られたメニューに皆が視線を向ける。
「私はレモンティーのMサイズで」
「私はマスバーガーセット。飲み物はオレンジ」
「ちゃんとマスバーガーって商品はあるんですね。あ、俺はチーズバーガーのセット。コーラで」
「なら私はテリヤキバーガーとフライドポテトのMだ。覚えたか?」
「任せろ。我を誰だと思っている」
不思議と全員が不安を覚えるも、ここは美夜佳に任せて席を探す。
が、席は空いていない。仕方なく楓が並んでいる美夜佳にお持ち帰るように伝え、邪魔にならないところで美夜佳の勇姿を眺めることに。
「先輩達、どちらだと思いますか?」
「何が?」
代表して千百合が聞き返すと、美夜佳から視線を外さずに進は答える。
「星川がテイクアウトをテイクオフって素で間違えるかどうか」
「さすがに美夜佳ちゃんでも合わないんじゃないかしら」
「わからないぞ? 美夜佳ならいいかねん」
(((部長(楓)(月城)も人のこと言えないけどね)))
そうこうしてるうちにとうとう美夜佳が注文する番が回ってきた。
女性店員はスマイルで元気良く美夜佳を出迎える。
「いらっしゃいませ!」
「ひゃいっ!」
「僕もうすでに不安でいっぱいなんですが」
「耐えるんだ進君。見守ろう」
「ご注文をどうぞ」
「え、えーっと……レ、レモンティーをMサイズで」
「はい! レモンティーのMサイズを一つですね」
つまりながらもまず一つ目の静流の注文を無事に済ませる。
「あと、ち、ちち、チーズバーガーのセット……コー、ラ」
「チーズバーガーセット、飲み物がコーラが一つ」
思っていたよりもちゃんと注文ができていることに失礼ながらも皆が驚く。
このまま問題なく注文を終えられると思われた。
「それと……○スバーガーセットのオレンジ」
「おいあいつ○スバーガーって言っちゃったよ」
「はい! ○スバーガーセット、オレンジが一つですね!」
「なんで訂正せずにはっきりと繰り返した」
「あと、テリヤキバーガーと、フライドポテトのMサイズ」
「テリヤキバーガーとフライドポテトのMサイズが一つずつですね。テリヤキバーガーはただいま販売中止決定記念として無料でバイバイ仕様にできますが」
「販売中止を記念って色々おかしいなこの店」
「なぁ千百合。バイバイ仕様って?」
「バンズの枚数そのままで肉の枚数とタレの量が四倍になるみたい」
「じゃあ、それで」
「ちょ!?」
楓がために入ろうとしたが、率先して進が行手を阻む。
「あと、バニラシェイクMサイズください」
「バニシェイクですね」
なにわともあれ全員分の注文を終えた。
あとは会計を済ませれば終了━━なのだが。
「ただいまアップルパイがお安くなっていますがいかがでしょうか?」
「え、アップル、パイ?」
「大変人気の商品です。まだ食べたことがなければこの機会にいかがでしょうか?」
「じ……じゃあ」
「ありがとうございます! それと今期間限定でフライトチキンに柚子胡椒が付きますが、注文されてみてはどうですか?」
「は、はい……」
色々と別のものも注文することに。
そして最後にきた当然の問いかけ。
「こちらでお召し上がりですか?」
(きた、この質問)
(星川さんはテイクアウトって言うのか)
(それともテイクオフって言うのか)
(さぁ! どっちなんだ! 美夜佳!)
皆が固唾を飲んで見守る中、美夜佳ははっきりと答える。
「その……テイクミーで!」
その瞬間、四人が目を丸くするのは当然のことだった。
「まさかのテイクミーとは、さすが星川。でもあながち間違ってないから店員も複雑な顔ですね」
「言ってる本人は大真面目に言ってやったって感じで立ってるな」
「高宮。大丈夫?」
美夜佳のテイクミーがツボに入ってしまった静流はその場で腹を抱えて笑っている。
さすがにこのまま見過ごすわけにも行かずにフォローに向かう。
「星川、テイクミーってなんだよ」
「我が友!」
「あの……」
困った様子の店員にまだテイクミーがツボに入っている静流がかわりに答える。
「ご、ごめんなさい。困らせてしまって」
「いえ。お気になさらずに」
店員ももう気にしていない様子でスマイルを振る舞う。
「それで、こちらでお召し上がりですか?」
「いえ、テイクオフで」
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