第23話 調査地へと
更新、ゆっくりではありますが再開しようと思います
「そう言えばさ、俺この国を救いに来たんだよね......?」
妹と二人きりの馬車の中で、俺は大目的を思い出す。2人だけなので、男の口調だ。
そうだよ。俺、そもそもこの国が危機に瀕してるみたいな事言ってたから来たのに、至って平和じゃないか。
「今のうちは、ね」
「なんだよ、その含みのある言い方」
まるで、未来のことまで知っているかのような。
神様の右腕なんだし、それくらいは知ってるかもしれないけど。
「とにかく、今はまだ......教えられない」
「そうか」
それ以上は聞くまい。
無理な詮索は時間の無駄だしな。
「ってことで、ルナはどうしたんだよ」
王女様、来てない。
ちなみに、ルナ王女って言ったら王女は要らないと言われたので呼び捨てにしてます。
あの百合、俺と行くために死に物狂いで仕事やってたのに......終わんなかったのかな。
「いや、なんか急な用が入ったみたい」
「えぇ......」
なんだろう。
まあ急ならしょうがないけど。
「あと、俺......魔術とか使えないけど大丈夫?」
「何言ってるの。そもそもここには魔術と言えるほど立派なものは無いし、剣術と盾に頼るだけだよ」
「これほどまでにこの世界をクソだと思ったことはねぇ...」
何を当たり前のことを、と言わんばかりの妹のセリフにため息を零しつつ、俺は窓に凭れかかる。
窓を開けると、心地のいい風が頬を撫でる。
俺達は今、新しい調査地へと向かっている。
かれこれ数時間乗っているが、景観の移り変わりが思ったより激しかったりする。
「しかし、景色だけはいいな、ここ」
車窓に映る山里と巨大な湖に感嘆しながら、俺は誰にともなくつぶやく。
「魔法も何も無いんだから、これくらいはしとかないと、ね?」
「まあ......そういうもんか...?」
よく分からないが、とにかく魔法なんで使えないんだよ。魔法に夢が詰まってんだぞ?夢なき世界で何を夢見ろって話ですよ。
「......じゃあ自分で作ってみろって話じゃない?」
私はそう言いたい、と妹が言う。
「どゆこと?」
「......なんでもない」
よく分からない。が、妹が不貞腐れたので頭を撫でてやる。
「......」
無言&無表情のままだが、明らかに俺の手の感触を楽しんでいるな。俺にはわかるぞ。務めて平生を装っているだろう。
「......そうじゃないけど......まあそう」
「どっちだよ」
返事は帰ってこなかった。
と、そこで馬車が止まった。突然だったので、俺とヴィオラは座っていてもふらついてしまう。
「...どうしたんだ?」
「わからない」
急停止する程の何かがあったのだろうか?
降りて見ればわかるか。
「よいしょ、と」
俺は馬車を降り、馬引きに問うた。
「どうしたんですか?」
俺がいることに驚いたのか、すこし言葉が遅れて帰ってくる。
「あ、いえ...。あれ、見てください」
そう言って前方を指さす。
見ると、そこには何やら謎の生物の群れが道を横断していた。
「なんです、あれ?」
「あれは恐らく野生のシヌカです。シヌカの肉はとても美味しいので、家畜としてこの一帯で放牧されているんですよ」
「なるほど」
これは仕方ない。
俺達は、シヌカの群れが去るまで待ち続けた。




