2-10 西村攻略戦Ⅲ
あー何か面白そうなことやってるな?(レオン・ハザード)
ギィン!
ギィン!
剣と剣もしくは剣と盾がぶつかるたびに戦場に金属の鋭い音が響く
音の一つ一つに互いの命を削りあっているような鬼気迫るものが宿っていた
「アアァ!!」
「ガアァ!!」
吠える二人は今いったい何を思って戦っているのか
二人の男はある意味対照的に生きてきた、一人は地獄に、もう一人は生き地獄に
そんな二人がここで出会ったのは何か意味があるのだろうか?
きっと何の意味もないだろう。
少なくともこの世界の管理者は何も考えていない
それでもただこの瞬間に意味があるようにふるまうのだ
それがこの世界のルールだから、そうだったから
だが今戦っているの彼らはそう見せているだけなのか?それとも………
この世界は変わった、見世物から本物へ
ならば彼らも変わるべきだろう、見世物から本物へ
◇
響く金属音にハラハラしながら、ヤキモキしながら俺たちは二人の戦いを見守る。
一つ疑問なのはガラの武器だ。
随分とキレイな形をしている、少なくともベンジャミンの使っている剣よりはかなり出来がいい。
何か画像で見たことあるんだよな~。
「なんだっけ?あの剣?ナイフ?…オルトロスじゃなくて…オリエンタルじゃなくて…」
「知ってるんですか?」
「昔、漫画に影響されて調べたことがあるんだよ。何か山刀みたいなナタみたいな使い方する軍用のナイフだと思うんだけど………何だったかなー…知ってる?」
「知りません、だけど納得は出来ました」
「?、と言いますと」
「ガラの出身は年中戦争を行っていた国で、彼自身も戦争を経験しています。軍用のナイフならガラが持っていてもおかしくはないでしょう」
「ほー、何で知ってんの?」
「前に言いましたよね?西村とはつながりがあるんですよ、その伝手からの情報です」
「なるほどなるほど。つまり使い慣れた武器をこの世界でも再現した訳だ」
「いいえ?多分持ち込み物だと思いますよ?」
「持ち込み物?」
「知りません?じゃあアキラさんはこの世界に来た時裸でしたか?」
「いや、ちゃんと服着てたよ?…そういえば制服ハルマの家に干したまんまだ、どうしよう?」
「まあ、そう言う事です。この世界に来るときに元の世界で身に着けていた物は持ち込めるんです」
「へー、何か条件とかあるの?」
「確か限界が自分の体重と同じだけで、あとは特に制限は無かった気がしますね」
結構重要な情報なのに何で今まで気づかなかったのだろう?
持ち込み物か……。
ん?ちょっとヤバくない?
アイツ戦争してたんだよね?
だとしたら……。
オオオォォォ!!
そのタイミングで俺の思考は遮られる、原因はこちら側の歓声で。
どうやら戦いは佳境に入ったらしい。
◇
「オオォ!」
ガンッッ!
俺の剣がガラの盾の上半分を切り裂いた、後ろから歓声が上がる。
どうやら盾だけしか切れていないのか血は出ていない。
だが、これでかなり有利になった。
今まであの盾に何度となく阻まれた、それだけでなく盾を構えたと思ったらそのまま殴ってきたこともあるので結構邪魔だったのだ。
ガラの剣は俺のよりも短い、なのでどうしても接近戦になるのだ。それを補うための盾だったのだろうがこれでガラの強みが消えたことになる。
「(行ける!)」
俺は確信していた。
今まで一度も勝ったことのないガラに今日俺は勝つ!
今日のガラは毒煙のよって弱っている、少なくともいつもの冷静な判断はできない。
ガギィィン!
ガラの剣と俺の剣が真正面からぶつかる。
単純な力比べならガラの方が上だろう、だが今の俺には『先頭』の二つ名によって補正が掛かっている。
この状態なら押し切れる!
そもそもいつものガラなら補正のかかった俺と真正面から剣での押し合いはしない、押し負けると知っているからだ。
やはり今日のガラは冷静ではない。
こんな日に戦うのは卑怯な気もしないが今回だけは確実に勝たなければならない。
でなければ今までのみんなの苦労が無駄になってしまう。
クリスの気持ちも、ペドロの頑張りも、ダニエルの努力も、そしてアキラの作戦も、みんな無駄になってしまう。
そんなの
「ぜってーだめだぁぁぁ!!!!」
俺の力ずくの一撃にガラは押し飛ばされ体制を崩した、その拍子に数歩引く。
その数歩を詰め俺は剣を振り上げガラの剣を吹き飛ばした。
「俺の勝ちだぁぁ!!」
返す刀を振り下ろす
ガギィ!
ガラは最後の抵抗なのか半分になった盾でその一撃を防ぐ、が、先ほど証明した通り今ならこのまま押し切れるのだ。
俺は念のため剣を両手で握り力いっぱい押した。
盾で押し返そうとするが片手では力不足。
上から押しつぶされ体勢を崩したガラはそのまま地面に膝をついた。
「(勝つ!勝つ!勝つぅぅ!!)」
俺は勝利を確信していた。だから気づかなかった。
なぜガラが片手で盾を構えていたのか。
俺は勝利を確信してしまった。だから見えていなかった。
ガラの目に冷静さが戻っていたことを。
「マズい!」
誰かが言った。
誰が言ったのだろう?
アキラかクリスかそれとも両方か。
その言葉と同時に
ダァン!
戦場に乾いた音が響いた。
「え?」
膝が砕けた。
言葉通りの意味だ。
俺の膝が燃えるように熱い。
それに気づくと同時に左足に力が入らなくなった。
見下ろすと血が出ている。
「え?」
視線を戻すとガラが立ち上がろうとしていた。
その右手に銃を構えて。
「え?」
馬鹿みたいな言葉しか出てこない俺にガラは銃を突きつけ冷静に言った。
「お前の負けだ」
そしてその引き金を引いて……
べちゃ
それより一瞬早くガラの顔に何かが直撃した。
「が!」
ダァン!
結果ガラの弾丸は外れ明後日の方向に飛んでいく。
ガラが何か飛んできた方向をにらむ、それにつられ俺もその方向を見た。
そこには
「あっぶねー!」
パチンコを構えたアキラがいた。
◇
あぶねー!
今のはホントヤバかった!
下手したらベンジャミン死んでた!
俺の判断ナイス!
パチンコの強化しといたことも、ガラが銃を持ってる可能性に気づいたことも、泥を一瞬で装填してそれを当てたことも。
全てがナイス!
俺サイコー!
だが、そのせいで俺はいま銃を構えた男ににらまれている。
「………よし撤退!」
数秒のにらみ合いの中、俺はそう言い放つと“サッ”と塹壕に隠れた。
そして大声で支持を出す、
「総員攻撃―!!」
その言葉で我に返ったのかこちらの兵士が動き出す。
全員がスリングに石を装填し振り回すのに7秒前後。
昨日の俺の集大成。
同じく俺は天眼を発動させ、ガラを上空から見張る。
「打てー!」
言葉と同時に放たれた100を超える石礫。
流石に石礫でフルボッコは嫌なのかガラが引いた。
「今だクリス!ベンジャミン回収してこい!」
「あ、はい!」
そう言って飛び出して行ったクリスは20秒ほどで戻ってくる。
ガラはそのまま引いて行った。
帰りもちゃんと罠のない道を走っていた、よくよく考えてみれば頭に血が上ったヤツが罠に気を配って走れるか疑問が残る。
激昂したことは恐らく演技だったんだろう。しっかり騙されてしまった。くやしい。
いやそれよりも今はベンジャミンだ。
膝の表と裏、両面から血がドクドク流れている。
コレマズいよな。とりあえず止血だよな。ていうか血ってこんなに出るんだ。
誰も治療ができないのか他の奴も手を出したり引っ込めたりしている状況だ。
そんな時ベンジャミンは何を思ったのか空に向かって叫んだ。
「チックショー――――!!!」
◇
結果ガラが引いて行ったら戦争はなし崩し的に終わった。
こちらとしてもベンジャミンの治療をしなければいけなかったのでお互い無言の了解をした形だ。
現在ベンジャミンは村唯一の病院モドキに運ばれ治療を受けている。
医者ではなく薬師らしいがそれでも何もしないよりマシだと思いたい。
サクラもこういう外傷に慣れているようで手を貸している。
「こういう外傷に慣れるってどんな幼少期を過ごさせたんだよハルマ………」
この場にいない親友への文句を呆れ半分でつぶやく。
「お父さんがどうしました?」
「おわっ!」
いつの間にか治療が終わっていたのかサクラが外に出てきていた。
「あのサクラさん、兄さんは?」
おずおずとつぶやくのはクリスだ。
先ほどまでものすごい速さでベンジャミンを運んだ人物とは思えないほど背中が小さくなって見える。
「大丈夫ですよ?元々心臓から遠い所だったので命に危険性はありません」
「良かった…!」
「ですが………」
その後サクラが続けた言葉はあまりに重い一言だった。
「今後数年は歩けないと思います」
◇
「どうしたもんかね………」
ところ変わって、時間変わって会議用テント
ベンジャミンの容体は安定しているらしいがそれは体の話。
心はかなりへこんでいるらしく、サクラ曰く歩けなくなったことより戦争に勝てなかったことにへこんでいるらしい。
自分の心配しとけよ。
「どうしたもこうしたも次もこの戦術を続ければよろしいのでは」
「それがそうもいかんのだよ」
村の老人の一人の空元気に俺は答える。
デニムのじーさんは顔を暗くしたまま話を聞いているので多分気づいてると思う。
「今回の作戦は初見殺しが多いし、運に助けられたところも多いんだよ」
ガスは向かい風なら第二塹壕の前に停滞するだろう。
第二塹壕も丸太か何かでぶち破られる可能性の方が高い。
罠は注意すれば気づくことは可能だろう。
何より俺なら……
「火を放つね。そうしたら罠も丸見え、草結びは一緒に燃えるだろう?」
「はぁ」
俺の答えに明らかに落胆した声を上げる老人集団。
「しかしどうしてそんな戦術を使ったのですか?」
「そもそも今回で終わらせる予定だったんだよ」
ガラを前に出して捕まえるor殺す。
それでカースト制度を敷いてる向こうの村はバラバラになる可能性は高かった。
一番上がいなくなれば回らなくなるだろうからな。
もちろんガラが出てこなかった時の事も考えていたがそっちはいいだろう。
「今回はベンジャミンという最大戦力を失ったことが大きいこれでは向こうに下るしか………」
「しかしそれでは兵士たちは殺される可能性が高かろう?」
「いや今回の戦争で価値を証明したので生き残れる可能性はあるのではないか?」
そんな負け犬根性の塊みたいなセリフはむかつくな。
だがその気持ちは分からなくもない。
頼りにしていた作戦も最大勢力も一緒に失ったのだ、むしろ痛いほどわかる。
そこで意外な人物が声を上げた。
「おぬしらはさっきから何を行っておるんじゃ?」
それは昨日俺に反対意見を言いまくったデニムじーさん。
「おぬしらはここでそんな話をするために集まったのか?違うじゃろう少なくともわしは違うぞ?」
「ならデニム、おぬしは何か戦術があるというのか?」
「ないわいそんなもん。………だが持っている奴は知っとるが」
そう言って俺を見るデニムじーさん。
そんな期待する目で見ないでください。
「アキラ、おぬし昨日言いおったよな。この先の話を、今こそその話をする時ではないのか?」
「別にいいけど賭けになるぜ?」
「問題ないわ。元々今日も賭けみたいなもんじゃ、もう一回賭けをするのも悪く無かろう」
「あっそ。じゃあ村人総出で賭けでもするか」
そう言って俺は椅子にふんぞり返った。
これは威嚇みたいなものである。誰に?目の前の爺にである。
そして宣言する
「レオン・ハザードを味方につけるぞ」
西村攻略戦決着!
次回レオン・ハザード攻略戦Ⅰ
遅れてすみません!次はちゃんと投稿します。
次回の投稿は水曜日の予定です。
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