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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
29/111

2-9 西村攻略戦Ⅱ

“戦争ごっこ”か………どこが“ごっこ”なんだろ?(ベンジャミン・リンカーン)


俺の合図で準備を始める兵士たちを見ながら敵陣を見る。

煙はモワモワと地面を滑っていく、それにしてもどんだけ出るんだろうこの煙。

確かに毒草は大量に確保したし、ついでにクリスに改造してもらったのだが…それでもこの量は多くない?予想の5倍は出てるんだけど?

戦場の一面覆い隠すとは、こっちからだと煙のせいで目視が出来ない。

これではどこから相手が出てくるか分からない!

………まあ俺には関係ないけど。

二つ名『天眼』の能力、天の目:自身の上空から見下ろす限定の視覚を作り出す、自分の上空だけなので前後左右に動かないし見下ろすことしかできない(逆立ちしても見上げることはできなかった)が上下運動はかなり自由に可能。

現在は上空500mほどの場所から戦場を見下ろしている。

あー気分いいわー

この能力のおかげで相手の動きはまるわかりだ。

この煙は第二塹壕の前の堀に置いて燃やしており、微風ながらも追い風と空気よりも重い性質なのか地面を這うように移動し窪地に停滞することで、こちらには全く流れてこない。

え?第二塹壕ってなにかって?

やだな~向こうの兵士も言ってただろ?

“なんだアレは!”“昨日までは無かったぞ!”ってアレは昨日の夜に作った二枚目の塹壕の事。

ペドロが手持ち無沙汰になって暇そうにしていたのでこちらから600m地点に作らせた。

いくら遮る物も無い場所でも1㎞先の物が見えないだろう?向こうの兵士が見ていたのは400m先にある第二塹壕だったって事。

ちなみに第二塹壕、堀の深さは同じだが厚みを無くして背を50㎝高くしてある。

つまり相手はクラクラする煙を吸いながら堀の深さと合わせて約1.5mの壁を越えなければならないのだよ。

いやー我ながら酷い作戦だ!

そんな事を考えること10分、ちらほら壁を超える兵士が現れ始めた。

こちらからの距離は600m-200m=400m、こちらのスリング部隊の攻撃は届いたとしても150~200mしかも届かせるだけで当てることは考えてない状態でだ。

彼らが罠にかかって少しでも遅くなりますようにと願わなければならない…わけないだろ?


「ダニエル!」

「了解です!」


そう言ってダニエルはスリングを振るう、

放たれた泥の塊は確かな角度をもって壁を越えた相手の顔面に追突した。


「ぎゃあーーーー!」


敵兵が悲鳴を上げる。


「見事命中、褒めて遣わす!どんどん行けー!」

「ははー!お任せをー!」


笑いながら泥を連発するダニエル、泥はかなりの速さで飛んでいき数秒後には、


「ぎゃあーーーー!」

「目がーーー!」

「痛い痛い!」

「なんだよこれ!顔がピリピリする!」


敵の絶叫が戦場に木霊した。

ちなみにこの泥、制作するにあたってペドロとクリスの協力を得ている。

ペドロが『土弄』の能力で大量に粘度の強い泥を大量に作り、クリスはその泥に森でとれた危ない草のしぼり汁を入れていた。

結果、肌に触れるとピリピリする特製の泥が完成した。

普通の泥でも目に入るとヤバいのに、こちらは目に入ると少なくとも1週間は目が開かなくなるとクリスが太鼓判を押したレベルになっている。

ちなみにこの泥を考えつき制作を依頼したのは俺だがここまで危なくしろとは言ってない。

ペドロは『土弄』の能力の関係上、土に触れている間は大丈夫だったが完成させて土を流すと“手が痛い”と文句言ってきた。

現在ペドロは同じものを作ることで手の痛みを紛らわしている。追加が来るので一石二鳥だと思うことにする。


「あ、抜けるヤツが出ました」

「まあ気づくよな、盾で防げるって。ダニエル次は右から4番目を狙え」


ダニエルの能力は強力だが対象に当たることに特化しているので体の一部や武器で払いのければ泥を散らすことはできるのだ。

一人が気づくとそれは伝染するようで、周りの兵士も真似して盾を上に構えて上空を気にしながら進軍し始めた。が……


「うわっ!」

「うべっ!」

「ぎゃ!」


それこそこちらの思い通り。

上を気にしすぎるあまり下がおろそかになったところに仕掛けた罠が発動だ。

今回仕掛けた罠は、落とし穴、草結び、紐トラップ、おまけとして嫌がらせ用に倒れそうなとこに尖った石を巻いておいた。

落とし穴は掘った穴に粘度の強い泥を入れて抜けづらくしといた。


「くそ!こんな地味な罠に、ぎゃーー!」

「イテェ!石が尖ってやが、ぎゃーー!」

「こんな微妙な罠を仕掛け、ぎゃーー!」


悲鳴のボキャブラリーの少ないやつらだな。

罠にかかった所で上からの泥爆弾が止むわけじゃないんだけどな。

ちなみに何でこんなにタイミングがいいのかと言うと、俺がこの戦場に仕掛けた罠の位置を全て記憶しているからだったりする。

紙か何か使いやすい記録媒体があれば覚える必要は無かったのだがこればっかりは仕方ない。

戦場を上から完璧に見渡すことが出来るのは俺だけなので、これは俺の仕事なのだ。

しかし頑張ったおかげで敵がドンドン戦闘不能になっていくのは見物だった。

そして1時間後、戦場には敵兵士の大半がぐったりとした様子で横たわっていた。



で現在に戻る、と

いやーここまでハマるとは予想外でしたわー。

もうちょっと頑張ると思ったのだが予想に反して戦場に動ける兵士はほぼいない、第二塹壕の向こう側でぐったりしているかこちら側でぐったりしているかの違いだろう。

まず長時間吸えばクラクラする毒の風で弱らせて、1.5mの壁で通行し辛く、超えた来た兵士は片っ端から泥爆弾の餌食、泥爆弾を警戒すれば罠にかかり行動を阻害される。

ちなみにこのすべてを超えてきた兵士は一応いた。2人ほど。

そいつらも近づきすぎて大量のスリングの餌食になり俺の前方50mの所に倒れている、自信満々に展開させた第二陣の用意はたった二人にしか使ってないというオチ。

容赦なく降り注いだ石礫はその二人を血まみれにしたので他の奴らはビビったのか前に出てくる事は無かった。まあ、それどころじゃないだけの可能性もあるけど。

現在までに第一塹壕に到達した兵士は居ないのだった。

だが


「でたな~」

「ホントにするのか?」

「あったり前~。というかここまで来てビビんなよ」


敵の大将、西村村長のガラ。

左腕が隠れるほど大きな長方形の盾を装備した褐色の肌の男は戦場を走ってくる。

二つ名は持っていないらしいがどれくらい強いかは分からない。だが少なくとも戦場でベンジャミンと戦っているところは見た限りではツバメと同じくらい動けていた気がする。

しかしながら俺は相手の戦力を見るだけで分かる人間ではない、…だから試すのだ。


「ダニエルGO」

「了解」


先ほどより緊張した口調で答えたダニエルは泥を連続で発射する。

今回の戦争を始める前よりもダニエルはスリングの扱いが旨くなった、少なくとも始める前は今ほど早く連射できなかったはずだ。

本来なら大勢に発射されるはずの泥爆弾は様々な角度でたった一人に向かって飛ぶ、常人ならよけることは出来ないし防ごうとしても下にある罠にかかるだろう。だが………


「うぅ、当たらない」

「罠にかかる様子も無し、か……」


どうやっているのかガラは盾で様々な角度から飛来する泥をその盾で全て叩き落とし、なおかつ戦場を悠々と走ってくる。

今気づいたがこいつは到達した二人のうちの一人が走ってきたルートをなぞるように走っているのだ。そりゃ罠は無いわ。


「決まりだな、こいつは俺の手には負えない。正確には今回用意した作戦が効果が無い」

「だから言っただろ?あいつは強いんだって」

「いやそれは知ってたんだけどね、一応試しとこうかと思って」


今回俺が用意した作戦は致命的な弱点が存在する、それは色々と脆い所だ。


もしハルマにこの作戦を使うなら。

悠々と歩いてきて、泥は弾き、罠はそもそもあいつの()()()効かない、そして最後のスリング一斉発射は躱しきってみせるだろう。


もしツバメにこの作戦を使うなら。

あの時見た速度なら泥とか石礫とか関係なしに400m走り切ってしまうと思われる。罠は草結びとか多分千切れそうなんだよな…。


もしレオン・ハザードにこの作戦を使うなら。

ハルマ以上に悠々と戦場を歩いてくるだろう。こけようが、倒れようが石礫は効かないだろうし。昨日聞いた話がホントなら特製の泥爆弾すら効かない可能性が高い。


ここまで言えばわかるかもしれないが、今回の作戦は力ずくで突破できる可能性があるのだ。相応の力があれば。

その力のハードルとして考えたのは最近聞いたばかりの達人級(マスター)のライン。

そしてそのハードルは突破された。

こうなると俺にはお手上げなのだ。

俺の作戦は相手に致命的なダメージを与えることに特化しており、それ故にそれが効かない相手には何もできないのだ。分かりやすく言うならザ〇系統の即死魔法だ。

よって俺には何もできないのだ、俺にはね。


「じゃあ後よろしく~」

「ああ、俺としても願ったり叶ったりだ。決着をつけさせてもらおう」


そう言って俺が手を上げてふらふらと振るとその手に向かって勢いよく叩いてきた。

“バチン”と乾いた音が塹壕の内側に響いたと同時にベンジャミンは外に飛び出す。

その時小さな声だがはっきりとベンジャミンは言った、


「(感謝する)」


と。

………死亡フラグ立てるのやめてくれない?



普通なら両手で持つはずのロングソードを片手で持ち上げ肩に乗せ、ベンジャミンは向かってくるガラの目の前に対峙する

ガラも合わせるように足を止める。左腕の盾を横に構え、剣を抜き放つ。全体は50㎝ほどでナイフよりは長く剣よりは短い


両者の距離およそ10m


ベンジャミンは話しかける


「ガラ、この戦争は俺たちの勝ちだ。少なくともここからの逆転は無理だろう?」

「黙れ!俺は間違っていない、俺は何よりもこの世界に残ることを優先する!」

「はぁ?」


ベンジャミンには意味が分からないだろう、ガラの言っていることは矛盾しているのだから

この戦争に勝った方は…いや、勝ってしまった方は元の世界に戻される

この世界に残ろうと思うのであればむしろ戦争を停滞させるのが正解なのだ


「お前どうした?なんか変だぞ?」

「黙れ黙れ!俺は正しい!正しいんだ!正しいはずなんだ!」


狂ったようにそう叫ぶガラの焦点は定まっていない

困惑しているベンジャミンに後ろから声がかかる


「兄さん、多分僕が調合した毒煙を吸い込んだせいです。普通ならふらつく程度にしたんですが、大量に吸い込めば錯乱する可能性もあります」

「お前なんてもの作ってんの!」

「だってアキラさんが………」

「オイ俺に押し付けるのやめて!俺は大量に吸うとヤバくて大量に煙が出るようにしてッて言ったんだ」

「「まさに注文通りじゃないか(ですか)」」

「ぐぅ」


兄弟の息の合った言葉で黙るアキラ

そんな事関係なくつぶやき続けていたガラだがいきなり視線をベンジャミンに固定する


「お前を倒せば、お前を倒せば俺が正しいことが証明される!証明されるのだ!死ねぇぇ――!」

「あーそうかい、なら殺してみろ。お前が戦争で殺した奴らみたいにな!」


両者ほぼ同時に飛び出し中心でぶつかる。

戦争が終わり、戦闘が始まった。

次回西村攻略戦完結予定

次回の更新はたぶん月曜日、もしかしたら早いかも?

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