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二つ名転生  作者: 薪村 尚也
2章 箱庭戦争
26/111

2-6 ハザード一族

俺はここに留まり続ける。そのためには何でもやってやる。(ガラ)

「無理だよ」

「えー」


先日までお遊びだった戦争が本物になってしまった日。

簡単な擦り傷の治療のため入った救護テントで再開したベンジャミンに非常に冴えた提案を持ちかけた、それはこの世界最強の存在レオン・ハザード味方につけるという提案だったのだが…

“そんなの無理”と一刀両断にされてしまった。


「なんで?何でレオン・ハザードを味方につけないんだよ?」

「“やる”か“やらない”じゃなくて“無理”なんだよアレを制御するのは。あークリス説明してやってくれ俺は色々忙しい」

「ハイハイ今日は本当に忙しいからね」

「ウッ!」


そう言ってベンジャミンは付き添いだったクリスに俺を押し付けて救護テントから出ていった。

最後のは恐らく図星か何かを付かれたのだろう。


「全く平時はまるで仕事しないくせにこんな時は偉そうに…。ではアキラさんお話ししますね。レオン・ハザードになぜ誰も近寄らないか」

「おー、出来れば納得できる話でお願いシャース」

「ええ聞いてもらえば納得できると思いますよ。レオンを味方につけない理由は先ほども兄がぽろっと言っていましたが制御が聞かないんですよ」

「その心は?」

「例を言いましょう。この世界に来た時アキラさんと同じことを考えた人が3組ほどいました。一人目は最初期のメンバーでレオン・ハザードを味方につけてくると言ってレオンの住処の岩山に向かいました。その人は帰ってきませんでした」


なんとなくわかる


「その後レオンがいない時間に兄達で確認しに行ったんですが、壁には真新しい大きな赤い染みが…」

「……うん、つまりそいつは染みになったと」

「はい正解です。二人目ですがこちらは西村の人間でした。元の世界では大学で教鞭をとっていた人間だったのですが、こちらも壁の染みになりました」

「いきなり話が飛んだな!」

「ええ、ですがその学者は殺される前に一つ良いことを聞き出しました。それはレオン・ハザードが従う条件、簡単な話レオン・ハザードを味方につける条件ですね」

「おお!」

「ですがそれが無理な理由なんですよ。レオンはこう言ったんです『俺を倒したら考えてやる』、それを聞いて学者は簡単なゲームで負かして丸め込もうとしたんですが…」

「殺されたと」

「ええ逆上と言うか、盤上ひっくり返したというか、強者の特権ですね」

「舌戦じゃ無理か―」

「というか言葉が通じるだけでも奇跡だと思いますけどね」


なるほどねー、半年前まで隔離されてた世界で言葉が通じるのは奇跡的か

ナンデワカルノカナ?

まあ、ともかく方法が一つ潰れたな


「それで最後の一人は?」

「一人と言うより一組ですね、こちらは3か月ほど前に何処かの騎士の小隊が丸々飛ばされてきてウチで匿ったんです。そしたらお礼にその怪物を退治してやろうとか言って…」

「殺された」

「まあこの世界“量より質”みたいなところがあるので無いとは言いませんが。鍛えられた軍人16人素手で全滅させて尚且つ無傷なんて奴はやっぱり化け物ですよ」


無傷、無傷かー

まあ俺が見た時は包丁バンバン叩きつけられて傷一つ無かったし


「そう言えばアイツの二つ名って何なの?鎧?硬皮?」

「それは僕らも分かってないんですよ。あんな防御力をずっと発揮してるんだから三文字…下手したら四文字かもしれませんね?」


四文字か。

この世界最高峰の力だっけ?

“とにかく凄い”くらいに思ってたけどあそこまでとはねー。ハンパねーな


「そう言うわけで分かってもらえましたか?レオン・ハザードに誰も手を出さない理由」

「分かった分かった、まあ、あきらめるつもりはないけど」


そう言ってらクリスは膝にのせていた手をズルっと滑らせた。

ホントにやる人いるんだ。


「話聞いてました!?無理なんですよ?!」

「いやいや思うだけ思うだけ、思うだけなら自由でしょうに」

「……まあそうですけど」


クリスが怪しいものを見る目で見てくる。

そんな中俺たちが使っているテントに一人の少女が飛び込んできた。



飛び込んできたのはサクラだった。


「アキラさん!」

「おお!サクラ。元気そうで何より」

「私の話はどうでもいいんですよ!それよりケガをしたって!」

「いやこけただけ。かすり傷だよ」

「本当ですか?本当に本当ですか?」

「本当に本当さ。な、クリス」

「はい。軽く消毒しただけです、他にはケガはありませんよ」

「うぅよかった~」


そう言って涙ぐむサクラ。

そんなに心配してくれてありがとう。

やっぱりこんなワケワカラン世界にたった一人の知り合いだからかな?こんなに心配にしてくれるのは。

何か勘違いしちゃいそうだぜ。

そうするとクリスが立ち上がって言った


「じゃあ僕は隣で会議に出てきますから。…ホントに勝手な真似はしないでくださいね」

「しませんしません」

「? アキラさんまた何かしたんですか?」

「“また”とはいったい。いや何戦場で見たヤツを引き抜いてこっちの陣営に入れようって話」

「ああ、レオン・ハザードですか。不思議ですねハザード一族は全滅したはずなのに」

「………待った、何か今心躍るワードが聞こえたぞ?全滅?今全滅した一族って言った!?」

「え、ええハザード一族は200年前に全滅した一族ですが……」


俺が詰め寄るとサクラは顔を赤らめながら言い直した。

なんてことだ……、なんと中二心くすぐる言葉だ、全滅した一族の生き残り!!

俺がレオン・ハザードを味方に入れたいという心は一層高まった。


「サクラ!ハザード一族について詳しく!!」

「あ……はい!ハザード一族は神が降臨する前からこの世界に存在していた最強の一族の末裔です」


俺が顔を近づけたせいで恥ずかしがったのか少しの間フリーズしていたサクラだが、口が回りだした。

それより最強の一族!!


「およそ800年前までハザード一族は戦場に置いて、抜群の身体能力と圧倒的な“二つ名”の力で一人で千人に匹敵すると言う事から『銀の災害』と言われ、傭兵稼業を行っていました。しかし土星でペンドラゴン王国が設立される頃と同じころ、火星にハザード一族を頂点とした国を作り栄華を極めたと言われます。ですがその体質が災いし衰退、結果今のボウコ帝国皇帝のクーデターで滅ぼされ今は純潔はいないとされています」


いいねいいね!

自らの体質で滅んだってとこで中二心が爆発しそうだ!


「その体質とは?」

「ハザード一族の純潔は異名の通り銀の髪をしているんです。ですがその力は劣等遺伝子、簡単な話一族以外の人間との間にはその絶対的な力を持った子供は生まれないんです。だからと言って近親婚を繰り返せば血は濃くなります。だから最後に確認されている純潔のハザードは数人だけだったそうですよ」

「ボンッ!」

「どうしました!」


あー畜生、俺の中二心が爆発しちまったよ。

これは是が非でもあいつを味方につけなきゃなぁ!

心配そうに俺の顔を覗き込むサクラを前に俺は決意を固めた。



さてレオン・ハザードを味方につけるのは(俺の中では)確定として。

どうやって味方につけるかだよ。

少なくとも俺だけじゃ逆立ちしたって無理、となるとこの村の戦力を味方につける必要がある。さてどうするか……。

すると隣のテントからベンジャミンの声が聞こえてきた。


「だったらどうするんだ!!」

「降伏するしかあるまい」

「馬鹿な!ガラは俺たちを下に見ている奴隷はともかく少なくとも今までよりも待遇が低くされるのは目に見えてる!」


さっきのクリスの言ったことでは確か隣のテントでは会議してるんだよな。

ベンジャミンは誰か、声の調子からかなり高齢の相手と対立してるらしい。

この様子じゃかなり荒れてるな、……少し聞き耳経てよっと。


「西村のガラは今まで脱走してこちらに逃げ込もうとした奴を皆殺しにしてきたような奴だ。奴らの傘下に入るならそのカースト制度に入ることになる。それがどんなことかわかっているのか!」

「ベンジャミン、私だってあんな制度に賛成はしたくない。だが死ぬよりはマシだろう?死んでしまえばおしまいなのだぞ。ここは奴らの傘下に一旦入って内部から変えていこうという話だ」

「だが!...」


どうやら荒れている原因は相手の傘下に入るか入らないかみたいなところか…

俺は嫌だな、何か“奴隷”とか“カースト”とか聞こえたし、少なくなくともいい意味には取れない。

そうか向こうは階級制度があるのか……


「いいか奴らの制度は弱者を徹底的に虐げる制度だ、普通はそんな制度で世界は回らない。だが!ここは小さな世界だ。だからこそこういう制度が回ってるんだ!そんな環境でしか回らない制度に何の益がある!」

「良い点悪い点はどんなものにもある。向こうはその制度のおかげで絶対的な統治が出来ているんだ。第一これ以上戦うことはできない、今回の戦争で2割が死んだ、3割がケガを負った、残った半分の勢力に今回出していなかった50人を加えても約125人、敵と倍近い戦力差の我々に何ができる!」

「けがを負ったのは奴らが矢に毒なんか仕込んでたからだ!奴らに一矢報いたいとは思わないのか!」

「下らん正義感を振りかざすな!ならこちらも武器に毒を仕込むのか?貴様のその正義感が許さんじゃろう!」

「ぐぅ!」

「第一そんなことをすれば今度こそ血みどろの戦争じゃ!そうなれば戦力で劣る我々は間違いなく不利!先手を取られた時点でこの戦いは終わっていたのじゃベンジャミン!」

「ぐぅぅ!」


ベンジャミンが押され白熱する会議の中クリスが言った


「あの関係ないんですけど外にいる人、入ってくるなら入ってください」



白熱する会議にどのタイミングで参戦したもんだかと悩んでいると、中から声がかかった。

この声はクリスか。

だが何でバレたかはともかく、聞き耳立てたことがバレるのは恥ずかしいので離れようとすると……


「いや、逃げようとしても陰でバレバレですよ。良いから入ってください」


影かー、そういやこれテントだったな。

後ろに火が焚いてあるし考えてみれば当たり前だなー。

観念してテントを布をめくる。


「ういーっす」

「アキラさんじゃないですか。何やってんですか?」

「はい!盗み聞きしてました!」

「威張ることじゃないな」


ベンジャミンからのツッコミに心から共感していると、さっきまだベンジャミンと争っていた爺さんが話しかけてきた。


「君は話をどれだけ聞いていた?」

「あー、相手の傘下に入るか入らないかくらいから、かな?」

「そうか、では聞こうかの。君は戦争に賛成か反対か。だが考えてみてくれこちらの勢力ではどうあがいても奴らには勝てないことは明白だ、そのうえで戦いたいか?」

「だから最後の手段はあるだろ!」

「馬鹿め!アレは制御できんじゃろ!」

「できるって!な、クリス!」

「悪いけど自身は無いよ」

「ほれ見たことか!二つ名持ちで唯一クリスは戦争に出ないのは味方にも危険じゃからじゃろ!そんないつ爆発するかも分からん爆弾を頼れるか!」

「だが制御ができればレオン・ハザードだって相手取れるんだぞ!」

「その制御ができ取らんのじゃろうて!」

「あのー、俺の意見は?」


勝手に話降っといてどっか行くなよ。

はたと意見のぶつけあいを止めこちらを見る二人。

目線が怖いんですけど。


「そうじゃったの、さて君の意見は?」

「アキラ傘下に入ったらひどい目にあわされるぞ!」

「それはどうかな?彼は二つ名持ちだろう?むしろ優遇される可能性もあるのでは?」

「うぐぅ……」


事実なのかベンジャミンが黙る。

だが俺の意見は……


「心配すんなベンジャミン、俺は誰かの風下に立つのは大っ嫌いだから」

「おおぉ!!」

「何じゃと?君は話を聞いてなかったのか?」

「聞いてたよ?あんたこそさっきから随分と弱気だな、何で戦おうとしない?もしかしてスパイか?」

「な、なんじゃと!」


俺の意見に少しざわつくテント


「意味が分からん!なぜ私がスパイなんじゃ!」

「いやー言っていいの?」

「良いぞ良いぞ!どんどん言ってやれ!」


ベンジャミンが許可を出す。では遠慮なく。


「なぜって、そりゃあんた見た目老人じゃん。そんな弱者代表みたいな人間が弱者を虐げる政策に乗っかろうとするかね?もしかして東村を降参させたらそれ相応の地位でももらう約束でもしたか?」

「そういえば怪しい……」「そう言えばこの人は……」「西とつながっているのか?」


ざわざわとした声が大きくなる会議場

そこに老人が待ったの声を上げる


「何を疑っておる、新参者の意見に流される気か!そういうキサマこそスパイではないのか?!」

「俺はアキラを信じる」

「僕もです」


ベンジャミンとクリス、リンカーン兄弟が宣言する。サクラといいお前らと言い何で昨日今日あった人間をそんなに信じられんのかな?


「貴様らは自分たちの味方を守りたいだけじゃろう!第一戦争なんてやっても無駄なのがなぜ分からん!負けたら殺されるんじゃぞ!」

「じゃあ勝てばいい」

「「「「は?」」」」


熱くなっていた爺さんに冷や水ぶっかけた気分だ。

というか全員が冷や水を浴びたみたいに一瞬シーンとなった


「馬鹿な!勝てるはずがない!」

「そうですよ。僕の力を当てにしてるのなら無理ですよ?」

「確かに爺さんの言ってることは間違いないんだ……。戦力は倍近くなっているし俺は人を殺したくはない……」


チキンどもがグチグチ言うな!


「馬鹿はお前だ!やってやれないことは無い!見せてやろう極力相手を殺さないで倍近い勢力を打ち破る戦争ごっこを!」


俺はそう宣言する。

さあお遊びの始まりだ。


変なところで終わってすいません。あとで追記します。※03/18 4:00追記完了

2章は限界まで毎日更新!

感想お待ちしています。


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