表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/24

第19話 袖下キキョウ

「ボルテック・パンツァァァアアア!」


「いい踏み込みだね。でもまだ」


「あっ!」


「魔力の練りが甘い。もっと魔力と一体化するんだ。そうでなきゃ、武装覚醒の域にはまだ到達できないよ」


「くっ。まだまだぁー!」


「何回でもきなよ。幾らでも相手してあげるから」


 ……僕は戦闘訓練質にてキサラちゃんと訓練をしていた。ちなみにキョウくんもいる。今は壁にもたれかかってへばっている。本気で訓練しているからね。生半可な訓練はしていないのだ。


「駄目。何回やってもアキラに勝てない」


「そりゃぁそう簡単には負けてあげられないよ。強さが僕のアイデンティティーだし」


「なぁ、アキラは何でそんなに強いんだ?」


 それはふとしたキョウ君の疑問。なんて事のない質問。だけど、僕は返答に一瞬窮した。少し考えて、こう答える。


「何でって言われてもなぁ……僕だからとしか言いようがないかなぁ」


「うわ。今の凄い嫌味」


「いや、そういう意図はなくて」


「分かってる。けどね、そう感じたのよ……

 落ち込むキサラちゃんをなだめながら思う。何で闇蔵アキラがこんなに強いのか。一つはアキラが天才だから。そしてもう一つの理由は……。


「さ、訓練再開しましょ」


 そこまで考えた所でキサラちゃんがそう言った。手をパンパンと払いながら、


「早くアキラに追いつかなきゃいけないんだから」


「あ、うん。再開しようか」


 訓練を再開する。その最中、僕は思う。


(え、僕事あるごとにずっと嘘つき続けなきゃいけないの? 辛……)







 その日、僕は人気のない校舎裏を歩いていた。


 あるいはそうしていれば仕掛けてくると思ったのかもしれない。


 果たして僕の目論見は当たった。


 後ろから歩いてきた生徒がすれ違いざまに袖の下から警棒型の特殊兵装――凶器――を展開し仕掛けてくる。僕は指一本でその攻撃を受け止め、


「なっ!? あっ!」


 そのまま敵を組み伏せた。そうして判明した相手は――。


「――袖下キキョウ。いや、2号と言った方が正しいかな」


「くっ、離せ!」


「離す訳ないじゃん。僕に何の用?」


「よくもイルミナティさまを殺したな!」


 ……やはりか。袖下キキョウ。女。黒のボブカットという見た目に反して字面の醜い髪型をしている事と、袖の下に凶器でも隠していそうな名前が特徴だ。袖下キキョウが僕に尋ねる。


「何故だ! 何故イルミナティさまを殺した!」


「何故って、彼は会長を殺そうとした。そして人類に仇なす大敵、魔人だ。殺す理由には事欠かない」


「ぐっ! それをスパイの立場の貴様が言うか!」


 ……声がでかい。このままでは誰かに話を聞かれてしまいそうだ。僕は最終手段に出ることにした。


「今から君の記憶を消す」


「えっ?」


「ごめん」


「ちょ、ちょっと待って。いや、イルミナティさまの事を忘れるのはいやぁーっ!」


「……」


 僕は罪悪感を刺激されたので少し聞いてみることにした。何故そこまでイルミナティにこだわるのか。


「だって! イルミナティさまは私を可愛がってくださった。まだ初心な乙女だった私をイルミナティさまは手づから開発して……! って何を言わせる!」


「……」


 思ったよりくだらない理由だった。R18ではあるが。ていうかあの魔人そんなことしてたのかよ。何か幻滅だな……。


「そ、そういう訳で私はイルミナティさまを殺した貴様を赦せない。あの人は私を育ててくれた。愛してくれた。そのイルミナティさまを……!」


「ああ。うん。じゃ、記憶消すね……」


 虚無の魔法の応用だ。相手の脳に直接働きかけて虚無の効果を及ぼす。第1段階の応用でさして難しい魔法でもない。僕が記憶を消そうとすると、


「な、ま、待ってくれ! あの人に育てられた記憶を消されたら私はもう生きていけない。それは、それだけは……!」


「……じゃあ、消すね」


「お願いだから。もう狙わないから! あなたの正体も誰にもばらさないから! お願いします。お願いします!」


「……はぁ」


 情に絆された訳ではないが本当に有言実行してくれるなら記憶を消す必要もない。僕は頭に当てた手をどけてため息をついた。


「行きなよ」


「えっ」


「ただし二度目はない」


 僕は殺意を籠めてそう言った。ギン、と激しくにらみつける。袖下キキョウはビクッとして、それから立ち上がり身を翻した。


「は、はい! 失礼します!」


 タッタッタッ……。


 袖下キキョウは去っていった。僕はため息をつき、そして背を翻して自室へと戻るのだった。


「全く、情に絆された訳じゃないが、あくまで合理的判断をしただけだが、面倒くさい状況だよ全く……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ