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あの日のあの言葉で――婚約破棄の煽りを受けた人たち  作者: 弍口 いく


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その1 レイチェル・ホルキュースの報告

 数多くの作品から目に留めていただき、ありがとうございます。

 ユトゥルナ王国歴1026年5月23日、21時15分、王宮の庭園でクロエ・ドナルドソン女公爵の遺体が発見された。


 王家主催の夜会が開催されている真っ最中の出来事だった。人々がダンスや歓談を楽しんでいたところ、フランクリン伯爵夫人が『大変です! クロエ・ドナルドソン女公爵が頭から血を流して亡くなっています!』と大声をあげながらテラスから会場に駆け込んだ。音楽がストップし、全員が真っ青な顔で取り乱した夫人に注目した。


 その日、妻を伴って夜会に参加していた私は、会場の警備を担当していた近衛騎士レイチェルと共に夫人の案内で現場に駆け付け、クロエ・ドナルドソンの遺体を発見した。


 王宮内で発生した事件であることから、近衛騎士団捜査部が事件を担当する。捜査部の副部長である私、カロン・クヴァルシが指揮を執ることになった。黒髪にコバルトブルーの瞳の三十一歳。元はクヴァルシ侯爵家の次男で父が保有していた子爵位を譲り受けて独立している。


 私と共に臨場した近衛第一騎士団に所属して二年目の新人レイチェル・ホルキュースも捜査に加わることになった。ハニーブロンドにサファイアの瞳の、騎士服より華やかなドレスの方が似合いそうな二十一歳。近衛騎士団総司令官を務めるホルキュース公爵のご令嬢であることから、女だてらに入団出来たのは親の七光りだと陰口を叩かれることもあるが、幼い頃から兄上たちと共に鍛錬を積んできた彼女は、どの武術をとっても他の男性騎士に引けを取らない猛者である。


 レイチェルが捜査チームに昨夜の報告をした。



   ◇



「私はクヴァルシ副部長と共に、フランクリン伯爵夫人の案内で現場の庭園へ向かいました。そこで仰向けに倒れている女性を発見しました。


 それがクロエ・ドナルドソン女公爵であることは一目でわかりました。彼女は有名人ですからね。一見、足を滑らせて倒れた拍子に花壇の縁石に後頭部をぶつけた不運な事故のように見えました。


 クヴァルシ副部長は念のため、続いて駆けつけた近衛騎士たちに、周囲を封鎖して現場検証を行うよう指示されました。そして検死官も手配しました。


 その場で行われた検死では、倒れたくらいでこれ程の深手を負うはずがない、何者かに押し倒されて故意に縁石に叩きつけられたのではないかと言う見解でした。詳しい報告は後ほど提出される予定です。


 付近に争ったような足跡が発見されたこともあり、殺人事件として捜査チームが発足したわけです。


 被害者、クロエ・ドナルドソン女公爵、二十八歳。

 何代か前に王女が降嫁したこともある由緒正しき家柄であるドナルドソン公爵家の一人娘で、四年前にお父上の前公爵が体調を崩して領地で療養することになったため、爵位を継いで女公爵となりました。婿入りした夫ルフタ様との間に六歳と四歳のご子息がいます。


 プラチナブロンドにエメラルドの瞳、真珠のような肌に整った容姿、若い頃から絶世の美女と称えられる社交界の華です。二児を出産した今もその美貌に陰りはなく、社交界に君臨している有名人です。


 そんな彼女が殺害された事件はたった半日で王都中に知れ渡り、憶測が飛び交い注目の的になっています。


 そうですね、おっしゃる通りです。今回の事件は警備を任されていた我々近衛騎士団の失態でもありますから、迅速に犯人を検挙して事件を解決しなければなりませんね。


 えっ? 私がクヴァルシ副部長の助手に? 私のような下っ端が事情聴取に同席するのですか?

 詳しい現場検証や鑑識、目撃者捜し、被害者の身辺調査などが同時進行で行われるのですよね、私はどちらかと言えば外回りの方が向いていると思うのでが……いえ、失言です、不服などありません。お役に立てるよう努力致します」


 読んでいただきありがとうございました。12話完結の予定です、毎日投稿しますので続きも読んでいただければ幸いです。

 ☆で評価、ブクマなどしていただけると励みになります。よろしくお願い致します。


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