三つ目の馬
この作品に無双要素はあまりありません、あらかじめご了承してくださいやがれなのです
二週間前
「また、居なくなっちゃったね」
銀色の少年は、無機質な鉄の部屋で二人、正式には一人と一体が立っていた
大き目のモニターが一つだけの寂しい部屋、モニター内には翼の生えた、足が剣のフクロウのような魔物が、金髪の少女にやられて消滅する映像が映っていた
「・・・シュルネ・・・」
「活動可能な魔物はテロ活動を開始してから67%が死亡、又は捕獲されました、今現在製作されている魔物の数は――」
「ねえフィオレ」
「はい」
「リルも、エリールも、シュルネも・・・皆、死んじゃったね」
「・・・そうですね」
銀色の少年、ギルはゆっくりとフィオレに近づき、その頭を撫でた、毛が一つもない、少し不気味な頭部が回転し三つ目が光る
「なぜ、魔物に名前を付けるのですか?」
「・・・」
「あなたは魔物に執着している、なぜ魔物に執着を?他の幹部や人間とはあまり関わっていないように感じます」
「それはね・・・」
「私の想像では、一般の半分ほどの身長であるため、舐められていると想定」
「・・・それ、バカにしてるの?」
「いいえ」
「まぁ、それもそうだけど・・・毎日牛乳飲んでるのに」
「提案、たんぱく質を摂る量を増やし睡眠時間を延ばすことを推奨します、たんぱく質の例は鶏もも肉や大豆など」
「・・・舐められてるのもそうだけど・・・実は、人が怖いんだ」
ギルがフィオレに寄りかかり、ローブの裾をつまむ
「僕、いろいろあって人が怖いんだ・・・スラッシュさん以外」
「その理由は」
「なんていうか・・・昔オークションで売られてね、「銀色の狐」って言われて・・・」
「これ、見て」
ギルがゆっくりとローブ、そして上着を脱いで背中を見せると、そこには焼印があった、禍々しい紋様で焼印の後遺症か皮が裂け肉が見えている
「・・・焼き印と判定」
「そう、ずっとこき使われて・・・もう、人は信用できないの」
「ではなぜ、スラッシュ様は信用してるのですか?」
「・・・この話をしたの、スラッシュさんとフィオレだけだから」
「・・・」
「ごめん、話が逸れたね・・・僕が魔物に名前を付けるのは・・・友達に、なりたかったから」
ギルは胸に右手を置いて目をつぶる、瞼の裏にはあの頃の光景、村が襲われ皆死に、自分だけ捕まって生き残ったあの日、押さえつけられて叫ぶことしかできなかった悔しさと無力感、首輪をつけられ大衆の前に売られた恐怖、聞いたこともない言葉と怒号が飛び交い、蹴られ殴られ、男に犯されたあの日々、村が滅ぼされてからずっと孤独だった、友達が欲しかった、でもあの日々のせいで人が怖かった
「だから・・・ね」
「・・・ギル様の心が癒されるまで、私は傍に居ましょう」
・・・
ズドン!ズドン!
麻酔銃を紙一重でかわしながら、ギルはなんとか建物に隠れた
「はぁ、はぁ・・・」
荒い息を整えながら、近くのガードレールを重力魔法で浮かせる、ギギギと音を立てて空中に浮いたガードレールを、支部に向かって飛ばす!
ドズン!炸裂弾で撃ったのか、ガードレールが爆散して粉々になってしまった
「嘘・・・っ」
これ以上は魔力が切れそうだ、あと一発が限界・・・魔力が尽きたら倒れてしまう、おそらく相手もそれを理解してるだろう、なんせさっきビルを直接ぶつけたんだから
「フィオレ・・・」
この状況でも、ただあのフィオレを思っていた、胸に手を当てて目を閉じる・・・会いたい、フィオレに会いたい、フィオレのあの優しさに――深呼吸をする、大丈夫、重力魔法で弾丸を跳ね返せば勝てる
「・・・次で決める」
わざと道の真ん中に立つ、まるで撃てと言わんばかりに
「さぁ・・・来なよ!」
麻酔弾が放たれた、ものすごい勢いでこちらに来るが、ギルの両手が紫色に光り、前に突き出した
「えいっ!」
目前に迫った麻酔弾がゆっくりと空中で静止し、百八十度回転し、思いっきり飛んでいく!
「こ、これ、で・・・」
魔力が付きかけている、目の前が朦朧とし地面に座り込む、流石に弾丸は小さすぎるし、気づかないだろう
「フィオレ・・・無事で居て・・・」
顔を上げ支部を見る、これで二人は倒せたはず、これで倒せなかったらもう自分は確実に勝てない
カツンッ!!
「!?」
何かと何かがぶつかった音、そして
どすっ。
「あ―――っ」
首元に麻酔弾が刺さった、すぐさま魔力を振り絞り引き抜くがすでに麻酔が回っていた
「何が・・・」
理解した、重力魔法で反対方向に出した麻酔銃が何かにぶつかった音、しかし空中には何もない、つまり――弾丸同士をぶつけて弾いた音、そのあと麻酔弾で・・・なんてスナイパーだ
「ふぃ・・・お・・・」
・・・
「損傷率、は、はちはち、8、よよよよよ、4%・・・じ、じじこしゅうふふふふく、ふか・・・」
飛鳥がバッと着地すると、すでにボロボロになっている馬が居た、バチバチと黒い火花が散り、傷まみれの体が崩れ落ちないように必死に堪えていた
「さ、さささささ作戦の、内容・・・へん、か・・・ぎ・・・さま・・・にげ・・・じk・・・せ・・・」
「何か言ってる・・・」
「早く止めを刺すぞ」
しかし飛鳥の刀は動かなかった、なぜだろう、止めを刺したら一生後悔しそうな気がする、それはナナシも同じようで、馬を殺すことが取り返しがつかないことだけが本能的に理解していた
「せ、先輩・・・」
「なんだ」
「な、なんか、可愛そうです・・・逃がした方が・・・」
「ダメだ、コイツを倒すのが俺らの任務だろ」
「でも・・・」
「ふぃおれ・・・!」
声のする方に振り向くと、そこには写真の少年・・・ギルが立っていた、肩を上げて呼吸をし、その眼は霞んでいて、電柱で体を支えていた
「ギル・・・!!」
飛鳥が刀を向けるが、それに怯えず、飛鳥とナナシを一瞥して、その後馬を見た――その瞬間、目が開く
「ふぃ・・・お・・・」
ギルの目から涙が流れた、そして――
「フィオレ!!」
「先輩!」
「わかってる」
ギルが走り出した、飛鳥を通り過ぎようとした時に、腕を掴まれて地面に押し付けられた
「離して!離して!!」
「ナナシ、早くトドメを!」
「え・・・でも・・・」
「早く!」
「・・・は、はい!」
ナナシが今にも倒れそうな馬、名前はフィオレというらしい、フィオレの前に立ち、ゆっくりと拳を握る、雷を纏いバチバチと音が出た
「ぎ、ぎ・・・る・・・さま・・・」
「っ!」
ギルがはっとする、ギルが飛鳥の制止を振り切るように身をよじりながら叫ぶ
「フィオレ!逃げて!早く!!」
「なにしてるナナシ!早くしろ!」
「・・・ご、ごめん、フィオレ!」
ナナシが体をねじり、攻撃の体勢を取った。フィオレにはもう逃げる体力も耐えれる状態でもない
「ぎ・・・る、さま・・・」
「やだ!やだぁ!!」
「どうか・・・しなない・・・で・・・」
その言葉と共に――
バチイイイイイイン!!!!
ナナシの拳が入ったとたん、轟音を立てて装甲が破壊され、内部の機体が爆発し、ついに崩れ落ちた、黒い血のような液体が体中から吹き出し、目の光が消えた
「あ―――っ」
その姿を見たギルは、糸が切れたように気絶してしまった
「・・・悪い、ナナシ・・・辛い思いをさせたな」
「仕方ないですよ、元からそういう覚悟で来てるので」
「・・・そうか」
飛鳥は気絶したギルからそっと手を離し、インカムに手を伸ばした
「こちら飛鳥、ルティア、そっちは?」
「はい、ミオさんが魔力切れを起こしましたが・・・それ以外の被害はなしです、今はミオさんを運んでいます」
「わかった、昨日話したギルを抑え込んだ、あそこまで消耗させたのはルティアがやったんだろ?」
「はい」
「よくやった」
「!ほ、褒めても何も出ませんよ~」
「だが警戒を緩めるな、まだ敵がいるかもしれない」
「はいです!」
嬉しそうな声を出すルティア、おそらく尻尾がものすごいスピードで揺れているだろう、飛鳥がインカムから手を離す、その顔は無表情ながら、悲しいような、後味が悪そうな顔をしている
「・・・」
「先輩」
「なんだ?」
「実は、フィオレさんを攻撃するとき――」
ビュン!
言い終わる前に、突然謎の影が現れた、素早く飛鳥とナナシを切りながら移動する、飛鳥は刀で攻撃を弾き、ナナシは後ろにジャンプして避けた
「いっ!?」
「誰だ!」
街灯の上に立つ謎の影、体格的に男だろう、月を背景に風が彼を揺らしていた
「我の名はスラッシュ、そこの小さき少年、ギルの親友にして貴殿らの敵なり!」
「な、なにこの人・・・」
ナナシが困惑している間、飛鳥は気絶したギルを一瞥した
「ナナシ、警戒を緩めるな」
「はい!」
「まあ待て、今回は戦いに来たのではない」
スラッシュの姿は暗闇でよく見えない、街灯の上に立っているせいで、下の光で見えなかった、素早くフィオレだった残骸に移動しそれを見て、首を傾げた
「フィオレ殿、失礼する」
それだけ言うと、思いっきりフィオレの肉体に手を伸ばし、謎の球体を掴んで取り出した、ぶちぶちと音を立てて管や線が千切れる
「ほう・・・メモリー・コアが生きている、これを移植すればフィオレが復活するな」
「ナナシ、お前・・・」
「そこの金髪の美女よ」
「あ、え、僕?」
少し意外そうに自分を指さすナナシ
「そうだ、貴殿・・・このコアを破壊しないよう手を抜いたな?」
「そうだけど・・・」
その瞬間、スラッシュが地面に頭をこすりつけて土下座した
「感謝する」
「え!?」
「貴殿の優しき心に、少年は救われるだろう、貴殿と我は敵同士だが、今はただ貴殿に感謝を」
「・・・」
呆気にとられたまま、スラッシュはギルを抱きかかえてまた街灯の上に乗った
「いつか貴殿らと戦う日が来ると思うが・・・その時はその時だ、また会おう!」
それだけ言い放つと、スラッシュはものすごいスピードで消えてしまった
「変わった人ぉ・・・」
「ナナシ」
「なんですか?先輩」
「・・・普通は怒るところだが・・・今回はよくやった、始末書を書きに戻るぞ」
「・・・はい!」
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