刀とライフル
たくさん見てほしいけど最初は誰も見てくれない・・・そう感じると、とてつもなく虚しくなるんですよね、自分は何やってんだって気持ちになります
朝、第三支部12階、生活寮
「飛鳥先輩、お疲れ様でした!」
「ナナシさんはどうしました?」
飛鳥の目の前に居るのは茶色の髪に、ピコピコと動いている、頭に付いた耳、腰部分から生えている尻尾、白い服に青いラインが入った、ネックウォーマーを付けている獣人族の少年と、ウェーブのピンク髪にスーツがびしっと決まっている女性が立っている
「ナナシは今自室で寝ている」
「そうですか・・・ナナシさんとちょっと話したかったのに、早くアニメの感想言いあいたい・・・」
「すぐ起きるだろう、今のうちに今日の訓練を終わらせておけルティア」
「了解です!」
ルティアと呼ばれる獣人の少年は、尻尾を元気よく揺らしながら部屋から出て行った
「・・・それで、飛鳥さん、エンジェルの情報は?」
「尋問してみたらすぐ吐いた、エンジェルのボスには側近が三人居るらしい」
「それ以外は?」
「あいつらはそれ以外の事を知らないようだ、あとは・・・魔物召喚の件はすべてボスがやっているらしい」
「なるほど・・・」
「ミオも少し休んだらいい、最近事務仕事でへとへとだろう」
「わかりました・・・飛鳥さんも、無理しないでくださいね」
ミオと呼ばれた女性も、ルティアとは別の方向に向かって歩いて行き・・・一人だけになった
「ふぅ・・・」
深いため息をつき陣笠を外し、ソファの上に座った、黒い隈をこすりながらテレビをつける、生活寮とは言え狭苦しい感じはなく、高いビルの上のお陰で街並みがよく見え、朝の陽ざしが部屋を満たしていた、外を見ると、青白いホログラムで宣伝する看板、空を飛ぶ車、荷物を持ったドローンに光に反射するビル街、それがこのフェルム・アストラーテの日常風景だった
「ただいまでーす!」
元気な声が玄関から聞こえた。そこからトテトテと足音がして、飛鳥の居るリビングに躍り出た
「飛鳥先輩!訓練終わりました!」
「・・・本当に?早すぎないか?」
「ほ、本当ですよ!それよりナナシさんは?」
耳がピコッと跳ね、尻尾がゆらゆら揺れている、彼はナナシによく懐いてるようだ
「まだ起きる気配はない、あとでな」
「わかりました・・・」
突然、テレビから緊急速報が流れた、ニュースキャスターは少し慌てたようにマイクを掴んで喋りだす
「ただいま入った情報によりますと、E地区にて魔物が確認されました!近隣住民は避難を!」
その時、スマホに通信が入った
【E地区に赴き、魔物を討伐しろ】
「・・・今動けるのは、僕と飛鳥先輩だけ・・・?」
「みたいだな」
「ほかの警察に任せません?」
「警察が行けるのなら命令は来ない、行くぞ」
「はーい・・・」
二人の少年と青年が、武器を持って玄関に向かった
・・・
E地区の住民の避難はすでに完了しているようで、周囲には誰も居ない。繁華街のど真ん中、道路の中心部にその魔物が居た、青白い狼型の魔物で口が三重に分かれていて尻尾の先から謎の針が飛び出ている
その場で待機している魔物の前に車を止めた、降りたのは飛鳥一人でインカムに手を添えた
「コイツですか」
「命令は討伐、捕獲はしない」
「了解です!ライフル展開!」
飛鳥が刀を構える、風でパーカーが揺れその魔物が飛鳥を見る、魔物の黒い瞳が赤く光り、大きく咆哮した
『ぐおおおおぉぉぉぉ!!』
「狼型・・・弱点は頭部と心臓部、脚の機能を停止させればすぐ終わる」
「了解!ファイア!」
バァン!!甲高い音が響き、一瞬閃光が魔物を貫いた、ビルの上から放たれた閃光の正体は鉄の塊、魔物の装甲を外皮を一瞬で破壊する、対魔物に特化した魔力を纏った弾丸、魔弾が一瞬で魔物に激突し、甲高い金属音と共に外皮が破裂した
『グギャアアア!!』
咆哮を上げてバランスを崩した魔物は、尻尾の先からビームを放つ、地面がえぐれるほどの高温、当たったらひとたまりもない
「当たらんぞ」
素早く接近し、魔物の尻尾を斬り落とす!尻尾がジタバタと暴れ、そのまま動かなくなった
「ナイスです!」
「次も頼んだ」
インカムから手を離し、刀を構える、尻尾を斬り落とされた魔物は怒り狂っている
『キュイイイイイイン――!』
三重の口がパカっと開き、内部に青白いエネルギーがたまっていく、バチバチと電撃音が響き、周囲の空気が震え始める
「ルティア、口」
「オーケーです!」
バキン!!と今度は口に向かって閃光が三発貫いた、溜まっていたエネルギーが爆発し、大きくよろめいた!
『ぐ、お、おおおおお!!』
「・・・トドメだ」
刀を逆手に持ち、そのまま心臓部を思いっきり突き刺す!刺さった部分から黒い血のような何かが噴き出て、その場にズシンと音を立てて倒れた
・・・
「で、この魔物は何だったんでしょう?」
スナイパーライフルを持ったルティアがこっちに向かって歩きながら、周囲を見ている
「・・・エンジェルかもな」
「またアイツの仕業ですか!」
「エンジェルが出した魔物は、全員白くて青いラインが入ってるのが大半だ、普通の魔物は黒いか赤いかの二パターンだけだ」
「確かにちょっと変ですね」
「魔石も出ないから調査が厳しいな、出所を調べられない」
魔物の死体が音もたてずに消滅していく、まるで最初から何もなかったように
「消えたな」
「消えましたね」
今回も収穫なしか――と思ったのか、背伸びした飛鳥が車に向かって歩き出す
「帰るぞ、書類を書かなきゃ」
「あ、待ってくださーい!」
・・・
「僕が寝ちゃってる間にそんなことが・・・」
少し大きめのテーブル、椅子の上でトーストを齧り、もぐもぐと咀嚼しているナナシ、ソファの上でだらしなく寝ているルティア、ナナシの向かい側で書類を処理しているミオ、そしてキッチンで料理をしている飛鳥、これがこの街、フェルム・アストラーテの治安組織「対異能特別行動組」の精鋭部隊の日常だった
「ナナシー、一緒にゲームしよー」
「ごめんねルティア君、僕これから訓練だから・・・」
「暇なら手伝って、ルティア」
「ミオごめん、僕そういう事務仕事苦手」
「苦手でもやるの」
「やだー!」
子供のようにずるずると引きずられるルティア、ミオはルティアを隣の椅子に座らせて、紙類を一つ押し付けた
「はい、ここにハンコを押すだけ、良い?」
「はーい・・・」
しぶしぶと言った様子で適当にハンコを押しまくるルティアを一瞥した飛鳥は、ナナシに近づいてテーブルに皿を二つ置いた
「卵とウィンナー、サラダだ、栄養バランスをしっかり摂れ」
「わぁ、ありがとうございます~!」
嬉しそうに咀嚼を続けるナナシを見て、一瞬飛鳥の口角が上がった気がした、その四人をビルの上から見ている影があることも知らず――
「・・・こちらスラッシュ、これより帰還する」
誰に言ったのか、そのままふっと消えてしまった
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