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死して八年、デスナイトとして蘇る。――この食い荒らされた世を切り裂き、狂った因果に復讐を  作者: Tiny Abomination in a Jar


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原初の真相(げんしょのしんそう)

昼食の余味が陰冷な空気の中に混じり、消毒液の刺すような臭いと交じり合って、不快な情景をより一層引き立てていた。NO.7の穏やかな後ろ姿が回収区の向こうへ消えた後、俺は再びNO.79の向かいに座り、指先でトレイの縁をなぞりながら、先ほどの疑問を口にした。


「NO.79、この番号は……ここに連れてこられた『ネームレス』の順だよな? 何を基準に並んでいる?」


NO.79は粗末なパンを齧り、鼻で笑った。


「まだ気づかねえのか。その通りだ。NO.1は最初にこの監獄へぶち込まれた奴、そしてお前のNO.133は……言ってみりゃ、お前が来るまでに一三三人の無銘がここに投じられたって証拠だ」


「一三三人……」


俺は声を潜めて繰り返した。無意味な数字が、俺たちが存在した唯一の痕跡となる。「なら、NO.7のあの男は……この監獄が誕生した時からずっとここにいるのか?」


「ああ、そうだ」


NO.79はパンを口に放り込み、手で口を拭った。


「あいつは二〇〇年前、このガラ・マラカ地下監獄が完成した時の最初の一人だ。見たろ、あの長い耳と白髪。ありゃエルフだ。本来なら老いとは無縁のはずだが……」


俺は眉をひそめた。先ほどから気になっていた。長く尖った耳はエルフの象徴だが、あの白髪はどう見ても百歳を超えた老人のそれだ。「十年前から、エルフは長寿の力を失い始めたはずだ。多くが老死したと聞いているが、なぜ彼は……」


「さあな」


NO.79は肩をすくめた。


「この監獄は魔法を遮断するが、生命の力も遮る。エルフの長寿も、ここでは無意味なのかもしれねえ。あいつ自身、最近は力尽きていると言っていたよ」


俺はNO.7が消えた方向を見つめた。彼の穏やかな微笑と、その奥に潜む空虚さが重なり、奇妙な違和感となって胸に突き刺さる。二〇〇年以上、彼はこの陰湿な監獄でどうやって耐えてきたのか。その問いは口に出さず、心の奥底に沈めた。


NO.7はトレイを返却した後、図書室の方へと歩いていった。俺はその背中を見送り、NO.79に尋ねた。


「図書室? こんな場所に図書室なんてあるのか?」


「ああ。だが、整理も掃除もNO.7が一人でやってる。獄吏どもも、あいつが管理してくれるならと黙認してる特権だ」


NO.79は最後の一口を飲み込み、トレイを置いた。


「さて、午後の仕事だ。鉱石の精錬。もたもたするなよ。遅刻すれば消毒液を浴びるだけじゃ済まないぞ」


午後の作業場は地下の洞窟を改造した場所だった。積み上げられた鉱石は小山のようで、高温の熔炉が熱気を吐き出し続けている。湿気と酷熱が交じり合い、汗は際限なく流れ、体は重く沈んでいく。俺たちは粗末な手袋を嵌め、鉱石を砕き、熔炉へと投じる――単純で、残酷で、終わりなき労働の反復。


ここは魔法も能力も無意味な場所だ。俺たちは単なる肉体であり、労働のための道具に過ぎない。どれほど強大であろうと、ここでは力を振るう術もなく、ただ体力を浪費する。ここは純粋な「肉体の収穫場」――その形容が最も相応しかった。


俺は内心で溜息をつき、同時に計画を整理した。地形を把握し、魔法が遮断されている原因を突き止め、この場所から脱出する。


黄昏時、高強度の労働がようやく終わった。再び消毒液を浴びせられ、検査を終えて囚室へ戻る。俺は意識的に歩みを遅らせ、図書室の方へと向かった。NO.7はそこにいるはずだ。


洞窟の一角にある図書室は、簡素な木製の本棚が並び、薄暗い灯光の中で塵が舞っていた。NO.7は本棚の前に立ち、古い一冊の本を静かにめくっていた。老いているが、その指先は驚くほど安定しており、本を慈しむように扱っている。


「邪魔するぞ」


俺が声をかけると、NO.7はゆっくりと振り返り、温和な笑みを浮かべた。


「新入りのNO.133だね。図書室に興味があるのかな?」


「ああ」


俺は単刀直入に切り出した。


「ここは一体何なんだ。なぜ、魔力の流れを一切感じられない」


NO.7は本を棚に戻し、俺に歩み寄った。白髪が灯光に透け、長い耳がかすかに動く。


「君は思索を好むようだ。……そうだね、なぜだろうか。君は知っているかな、この監獄が人魚、オーク、そして矮人の共同構築によるものだということを」


「三種族の共同構築だと?」


俺は驚きを隠せなかった。


「そうさ」


NO.7は微笑む。


「知っているかい。かつてセイレーンはこの世界の絶対的な統治者だった。エルフや竜の時代よりもさらに古き、原初の時代だ」


「だが、なぜ過去の話なんだ? なぜ彼らは長きにわたって海で暮らしている?」


「いい質問だ。君はどう思うかね?」


NO.7は眼鏡越しに俺を見つめ、棚から一冊の古書を取り出して差し出した。


「これはセイレーンの歴史だ。君の問いへの啓示となればいいのだが。……では、また会おう、NO.133」


受け取った書の表紙は色褪せ、人魚のような図案が描かれていた。頁をめくると、人魚の生態と「月」に関する記述が並んでいる。驚いたことに、それはエルフ語で記されていた。


内容は晦渋かいじゅうだったが、セイレーンの概略は理解できた。彼らは潮汐の力に過度に依存した結果、月を大海へと墜落させたのだ。月が消失した時、セイレーンは魔法への依存を失った。そこで彼らは伝説の秘術を用い、星外の来客をこの星系へと呼び寄せた。地面に降臨したものさえいたという。旧き月神は海へと沈み、新たな月神が軌道に掛かり、新たな均衡が生まれた。月と海床の衝突により山脈と大地が隆起し、一部のセイレーンは古神の祝福を受け、海から陸へと上がった……。


星そのものが巨大な古神だというのか? 歴史の真実に衝撃を受けると同時に、俺はセイレーンの魔法体系に戦慄した。古のセイレーンはそれを「願力がんりき」と呼んだ。大成した者は、現実を干渉し得るという。


その瞬間、俺の中で何かが繋がった。


「自身の意志……心中で描いた念が、現実世界に影響を及ぼす」


俺は低く呟き、NO.7が去った方向を見据えた。


数学において、純虚数に虚数単位 $i$ を乗じれば実数に転じる。複素平面上で純虚数に $i$ を掛けることは、九十度の回転を意味し、実軸へと回帰させる。


現実世界において、広義相対性理論に基づけば、質量――より広く言えばエネルギーは、時空を歪ませる。物質が多ければ多いほど、時空の湾曲は激しくなる。アインシュタインは教えた。質量とエネルギーは、本質的に同一の事象の異なる表現に過ぎないと。


「もし……」


俺は深く息を吐き、記憶の断片と思索を融合させた。


「もし意志や感情そのものがエネルギーだとしたら。十分な強さの執念、願力が、時空を歪めるほどの域に達したなら……それは質量と同じように、現実を侵食し、干渉し、重塑じゅうそする」


脳裏に浮かぶのは、アールヴ・ヘイムでの光景だ。カシャの狂気が偽りの天幕を裂き、ウォルスの覚醒が第二の月を現出させた。あれこそが――。


さらに、遠い午後の記憶が蘇る。大学の講義で教授が語った、物理史上最も美しい統一。


ガウスの法則 ∇·E = 0


磁気に関するガウスの法則 ∇·B = 0


ファラデーの電磁誘導の法則 ∇×E = -∂B/∂t


マクスウェル・アンペールの法則 ∇×B = μ₀ε₀ ∂E/∂t


教授はチョークでその四つの方程式を囲んだ。


「もし電荷も電流もない真空中とすると……」




c=1/√(ε₀ μ₀ )≈3×10^8  m/s




これらの方程式は自ら『波』を解き明かす。光とは電磁波だ! その伝播速度は、心震えるほどに純粋だ――虚空から、自らを生み出す」


「ならば……もしこの世界に『魔場まじょう』が存在するなら? 『願力』が魔場の源であるなら、電荷が電場の源であるように……マクスウェルの方程式には、もう一つの定数が加わるはずだ」


定数 K₀


それは願力が現実に及ぼす「結合強度」を意味する。魔法波の伝播速度は、この K₀に依存する。


K₀が小さければ小さいほど願力は強まり、魔法波は現実を容易に引き裂く。セイレーンが月を海へ引きずり下ろした時、彼らはK₀を限りなくゼロへと押し下げたのだ。


「そしてこの監獄は、K₀を無限大へとロックした」


だから俺たちは何もできない。……誰かが、K₀を再び引き下げる方法を見つけ出さない限り。


図書室の灯火が、俺の影を壁に長く引き延ばしていた。NO.7はもういない。俺は彼が消えた場所に向かって、静かに頷いた。


「意志のエネルギーが足りないのなら、何かを用いて増幅させればいい。現実に干渉するために」


俺は本を閉じ、棚に戻した。前世の知識、この世界の原初の秘密、そして意志のエネルギー。魔法が遮断された理由は見えたが、まだ疑問は尽きない。


図書室を出ると、薄暗い通路には囚人たちの力ない足音が響いていた。俺は囚室へと歩きながら、計画を練り直した。


地形を把握し、さらに書を読み解き、NO.7から情報を引き出す――そして、この監獄を脱出する。

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