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死して八年、デスナイトとして蘇る。――この食い荒らされた世を切り裂き、狂った因果に復讐を  作者: Tiny Abomination in a Jar


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血の宴

ゴビの風が砂塵を巻き上げ、血の臭いを孕んで俺たちをウラ・マラカの城門へと運ぶ。その簡素な木石の門はまだらに剥げ、無数の刀痕と矢尻の跡が刻まれていた。城壁の垛口さしぐちに寄りかかる衛兵たちの瞳は濁っていたが、馬を連れ、駄獣と痩せた牛を引く俺たちの姿を捉えた瞬間、剥き出しの強欲がその奥でぎらついた。獲物を狙う餓狼の群れと同じ目だ。




俺は側を向き、背後のタイと子供たちに低く命じた。「下がれ。遠くの砂丘の後ろで待っていろ。俺が呼ぶまで、来るな」


子供たちは怯えながらも力強く頷き、掌の髑髏符を握りしめ、砂塵の中にその小さな背中を消した。




直後、城門の獣人の衛兵たちが卑卑しく笑いながら歩み寄ってきた。引きずられた戦斧が地面を削り、耳障りな摩擦音を立てる。先頭の男が鋭い獠牙りょうがを剥き出しにした。


「どこの雑魚だ、これほどの家畜を連れてこのウラ・マラカに踏み込むとは。命が惜しければ荷を置いていけ。その後で腕の一本も叩き折ってやれば、見逃してやらんでもないぞ」




俺は答えず、ただ静かに顔を上げた。瞳の中の失われかけていた幽火が、刹那、蒼白の烈炎となって燃え上がる。亡者の死寂を帯びたその冷たい焔が、衛兵の目を射抜いた。


一瞬。俺は奴の濁った眼球を通じて、その記憶へと踏み込む。


断片的な光景が脳裏を駆ける。クリン・タスクと酒を酌み交わす姿、女を略奪する暴行、タスクからの賞賛。二人の癒着は、単なる上下関係を越えて深く、腐りきっていた。




「……なるほどな」俺は口を開いた。声は血に浸されたように掠れ、冷徹な戯言を紡ぐ。「お前とタスクの関係は、なかなかに格別なようだな」




言い終える間もなく、衛兵が凄惨な叫びを上げた。その肉体は見えない力に引き裂かれたように霧散し、無数の血沫けつまつとなって風に乗り、俺の体へと溶け込んでいく。温かい鉄の味が喉を焼くが、乾きは癒えない。むしろ心底の火に油を注いだようだった。


「……あ、あぁ……渇く。渇いて仕方がない……」


喉の奥から漏れる低吟。眼窩の蒼炎は猛り、周身の死気が狂ったように奔流となって、足元の土地を震わせた。




眼角の余光で、他の衛兵たちが腰を抜かし、門を閉じようと足掻くのが見えた。城壁の頂で「ドォン、ドォン、ドォン」と、腹に響く不快な鼓動が鳴り響く。集結の合図か。その音が、俺の中の暴虐を煽る。


「……あぁ、あああ。うるさい。耳障りだ!」




俺は閉じかかった城門を指差し、狂気を含んだ声を上げた。


「この程度の門で、俺を阻めると思っているのか? かつて、ブロンズドワーフの堅牢な要塞ですら俺を止めることは叶わなかった。ましてや、こんな腐った木切れと石礫の山が!」




天空は黒雲に覆われ、陰風が怒号となって吹き荒れる。城門の兵たちの足元から、森々たる白骨が土を突き破って這い出した。枯れ木のような指がその足首を冷たく、強固に鉗位かんいし、彼らの動きを封じる。響き渡るのは、絶望に染まった哀鳴だけだ。




俺は馬を降り、ハムレットを掴んだ。右腕が完璧な円を描き、長戟が死気と蒼炎を纏って門を両断する。「ゴォォォン――!」という轟音。城門と両脇の壁に鮮やかな亀裂が走り、その切り口から石と木材が砂のようにさらさらと流動し、崩落した。物理的な理を無視し、城門は完膚なきまでに瓦解した。




空中に舞い上がった衛兵たちの血霧が、門の上空で凝集し、猩紅しょうこうの雨となって降り注ぐ。それは地面を染め、俺の黒い外衣を重く濡らした。住民たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、あるいは家の奥で震え、門戸を固く閉ざした。街は一瞬にして、恐慌と死寂に包まれる。




そこへ、血の轍を蹴立てて一隊の騎兵が突っ込んできた。倒壊したガレキの前に立つのは、ただ一人の男と、一頭の馬。


俺は冷たく口角を吊り上げ、投槍のようにハムレットを前方へとげた。降り注ぐ血の雨が、磁石に吸い寄せられる鉄屑のように鋭い「血の針」へと変貌し、ハムレットの軌跡を追って騎兵たちを貫く。




後方のシャーマンが「大地のアース・シールド」を召喚し、辛うじて血の針を弾いた。だが俺が指先をわずかに震わせると、ハムレットは空中で逆行し、背後からそのシャーマンのうなじを断ち切った。噴き出す鮮血。首は地面を転がり、驚愕の色を湛えた瞳が俺を映す。




「……いかずちよ」


残されたシャーマンたちが絶叫し、天空から幾条もの稲妻が降り注ぐ。俺は赭礫シャリの尻を叩いて下がらせ、引雷針のようにハムレットを高く掲げた。


稲妻が俺を貫く。だが、全身を覆う淡緑色の反魔法障壁アンチ・マジック・シェルがその熱を虚無へと変える。蒼炎を宿した俺のシルエットは、肉を削ぎ落とした死神そのものだ。俺は再び馬を走らせ、戦場を収穫していく。




「……お前はクリン・タスクではない」


「……お前も、違う」




死の芳香かおりの中に、あの腐ったハイエナの臭いを探す。


「クリン・タスクはどこだ……。クリン・タスク、どこに隠れている?」




ふと、俺は街の中央に聳える酒楼を見上げた。窓という窓が閉じられる中、一箇所の窓だけが、俺と目が合った瞬間に「ガタッ」と慌ただしく閉ざされた。




「……見つけたぞ」




俺の身体は黒霧となってその場から消滅した。


次の瞬間、俺はその窓の裏側――クリン・タスクの背後に音もなく立っていた。




酒の香と脂粉の臭いが混ざり合う個室。クリン・タスクは女たちを抱き、部下たちと杯を交わしていた。


「……クリン・タスク先生、とお呼びすればいいのかな? ようやく会えたな。さあ、ゲームを始めようじゃないか」




タスクの身体が凍り付いたように硬直した。手にした杯が床に落ち、粉々に砕ける。奴は錆び付いた機械のような動きで、ゆっくりとこちらへ首を回した。


女たちや食客たちが呆然とし、誰かが凄惨な悲鳴を上げた。だが、そんなものはどうでもいい。




刹那、俺の死気が爆発した。


個室にいた「クリン・タスク以外」の人間が、最初から存在しなかったかのように消滅した。後に残されたのは、かつてそこに誰かがいたことを物理的に証明する、床一面を覆い尽くした粘稠な血の跡だけだ。




俺は一歩ずつタスクに歩み寄り、震える奴の前にうずくまった。病的な笑みを浮かべ、掠れた声で囁く。


「……なぁ、クリン・タスク。知っているか? 成人の体内には約五リットルの血液が流れていると言われているが……実はその認識は正しくない」




俺は返り血の付いた指で奴の頬をなぞり、冷や汗を拭い取った。


「正確には、血液量は体重の約七パーセントを占める。……さっきまでそこにいたお前の友人たちは、合わせて五〇キロは下らない血を流したはずだ。……あは、あはははははは!」




猩紅しょうこうの夜に、幽藍ゆうらんはすが咲き誇る。

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