79. 夜を統べる神
マリアンヌの氷魔法のおかげで、かなり戦いやすくなった。だが、その魔法はだんだん威力が弱まっていた。
無理はさせたくない。
彼女が無事、寮の結界の奥まで逃げ込んだことに安心して、俺は再び剣を振るうことに集中する。
ただ闇雲に斬るのではなく、少しずつ、奴らの動きを観察して、おおもとを探る。
夜の世界からこちらへ来るための次元の歪みが、必ず存在するはずだ。
だが巧妙に隠されて、俺の眼だけでは未だ見つからない。
魔獣達の数も減らず、じわじわと体力が削られていく。
(倒れることは許されない。マリアンヌのために──)
やはり一気に潰すしかないか、と思ったときだった。
魔獣達の動きに変化があった。突然、統率がとれたかように複数、それも同時に襲いかかってきた。
「っ、ぐっ!」
第一陣は難なく斬り伏せたが、第二陣の速さに対処が遅れ、右の太腿を大きな爪で抉られた。
倒れるほどの威力はなく、すぐに斬撃を繰り出すも、出血が続けばどこかで回復魔法をかけなければいけなくなる。
このままではジリ貧だ。
両手剣を握り直し、ごく短い呪文を詠唱する。
剣の攻撃を広範囲のものに変更し、一気になぎ払う。取りこぼしの不安から使えなかったが、ノアの結界に頼ることにする。
広範囲の魔獣を倒すと、波が引いた。
だが同時に、全身に圧がかかった。疲労などではない。俺は視線をあげた。
魔獣達が恐れおののくように、一つの道を作る。
そして、一筋の光が走った。
それが次元の切れ間だということは、俺自身、よく知っていた。
『ははっ……思ったよりも時間がかかったな?』
頭に直接響くようなその声も、知っている。
『だが、やはり一番厄介な敵は……俺、だな』
次元の切れ間から姿を現し、魔獣達を平伏させたのは、レジナルド・マクシミリアン・モグリッジ──まさに鏡合わせのように同じ姿の、自分だった。
(醜悪な化け物め)
同一人物とは認めたくはないほど、その表情に嫌悪しか覚えなかった。
レジナルドは柄を握り直した。




