13.小洒落た喫茶店
洒落たカフェでコーヒーを一杯、ミルクも砂糖も入れずにブラックのまま一口啜る。
ジャズのようなBGMと焙煎した豆の匂いが部屋を彩る。ガラス張りの壁は、外の景色が良く見える。
「美味しいですか?」
聞いてくるマスターは、金髪におさげ。藍色のエプロンを身にまとうナナミだ。
ここはナナミの家。
普段住んでる家は別にあり、ここは空家を改造してカフェにした二つ目の家ということだ。
カウンターに座りホットコーヒーを一杯飲む、対面には台に乗り目線を同じ高さにしているナナミがいる。ガリガリと音を立てながらコーヒー豆を挽いている。
「この村、いい子ばかりでしょう?」
「そうだね。みんなしっかり者だし、優しいし」
「ええ。なので、わたくしは選ばずに他の子を選んでくださいね」
「なんで?」
他の子を選んで、という言葉に図書館でアキナに言われた話が脳裏にチラつく。
「夢とか希望はあいにく持ち合わせていませんの」
独特な言葉回しで語る。
「奇跡とか魔法とか、そういうものは信じていませんの」
「それは違くない?」
「ちょっとチョケましたわ」
円錐形のコーヒードリッパーに同じ形のろ紙を置き、挽いた豆をその中に入れる。
お湯を入れるとコーヒーのいい匂いがふわりと香る。
「わたくし、今が幸せですの」
「俺も今が幸せだよ」言いたいことはわかる。
「一緒ですわね」
「そうだね。俺だって今、仕事もしなくていいし、みんなからもてはやされるし、なんかすごい人になったみたい」
「辛い過去が?」
淹れたコーヒーをサーバーからカップへと注ぐ。
「ちょっとね」
聞いてないのか。てっきり誰かに聞いているもんかと思っていた。
「なるほどですわ」
ナナミはカップに淹れたコーヒーを啜る。
「生きてることの方がすごいですわ」
「そんなことないよ」
「いいえありますわ」
ナナミはふぅーっと息を吐く。
「話すのをためらうほど辛い過去があったら、わたくしなら当に死んでる、いや、死んだ子達を何人も見た、と言ったほうが合ってるのかもしれないですわね」
「それってどういう?」
「図書館のあれは見ました?」
「見たよ。見たし、アキナに教えてもらった」
「あの子、わたくしの親戚ですわ」
「えっ」
「びっくりするのも無理はないですわよね。わたくしも最近まで知らなかったんですもの」
「そうなんだ」
「まあ、直接会ったことがあるわけではないので、悲しいとかそういう感情はなかったですわ」
ナナミは一気にカップに残ったコーヒーを飲み干してから、言葉を続けた。
「選ばれるときはくれぐれにも慎重に」




