第一王子と仲良くなるそうです。
先日のアイリーンとヴィルの誘拐事件の後、変わったことが二つある。
「とうしゃま!できました!」
「ん?ああ、よくできているな。そしたら次はこの問題はどうだ?」
「あぅ!あー!!」
「ソフィア、どうした?お腹がすいたのか?」
「ジル、この間の書類はどうなった?」
「リーンハルトか。それならその机の上においてある。」
「む?……ああ、確かに受取った。」
一つ目は、リーンハルトの執務室、つまりは俺の職場なわけだが、そこに家族がいる。
「リーンハルト様、ジル様、紅茶を入れたのですがいかがですか?」
「いただこう。」
「俺ももちろん飲む。ありがとう、アイリーン。」
もちろん俺の女神も一緒にいる。
始めは申し訳ないと遠慮していたアイリーンだが、なぜかリーンハルトが自分の体調の為にも留まってくれと説得しこの状況になったわけだ。
グッジョブリーンハルト。おかげで俺の仕事効率が大幅に上がった。
膝の上に息子をのせて、片手に娘をかかえ仕事をする。
定期的に愛する嫁が紅茶やらお菓子やらを用意してくれる。最高じゃないか。
そしてもう一つの変化だが。
「なんだ、まだ嫁と子供を連れてきてるのか。」
「カール=ハインツ様。お邪魔しております。」
「カーリュしゃま!おじゃましてましゅ。」
アイリーンが立ち上がりすぐに礼をし、それに習うようにヴィルも俺の膝から飛び降り礼をする。
「うむ。ところで、ジルベスター。貴様からのあいさつはないのか?」
「一日に何回も来る相手にいちいち挨拶するわけがないだろう。」
なぜか第一王子に懐かれた。
時間を見つけてはリーンハルトの執務室を訪ねては俺や子供たちにちょっかいをかけていく。
一日に何度も訪れる第一王子に対していい加減礼を尽くすのも面倒臭くなってほとんど素の状態で喋っているが特にお咎めがない。
しかしリーンハルトがしょっちゅう胃のあたりを抑えるようになった。
「ところで、少しジルと二人で話したいことがあるのだが?」
「所かまわず勧誘する兄上と二人にできるはずがないでしょう。」
「なんだ、頭が固いな。」
「ここで話せないことなのか?」
バチバチと視線を交わす第一王子とリーンハルトの間に入り、とりあえず口論の仲裁をする。
「む?いや、言えなくはないが………。」
言葉を濁す第一王子を俺とリーンハルトが訝し気に見つめる。
「…………わかった。ジルと二人で話すことはあきらめる、が。ならばその女とジルの三人で話をさせろ。それならいいだろう?」
「いいわけないでしょう。そんなに私に聞かせられないことですか?」
「……そういうわけではないが。そうだ、ならばお前の友人の女で平民と結婚した女がいただろう。あいつを紹介しろ。」
「断ります。」
どうやってもリーンハルトに聞かせたくないらしい第一王子に疑問が募る。
平民と結婚した女とは恐らくミシェリアのことだろう。
なぜ第一王子がミシェリアに用があるんだ?
「よし、わかった。面倒臭いから今度俺の家で食事会を開くぞ。無礼講だ。それでいいだろう?」
「なぜそうなるんだっ!!」
俺の提案にリーンハルトが机をダンっと叩いたが、知らん。
頭を抱えるリーンハルトとは違い、アイリーンやヴィル、ついでに第一王子は嬉しそうにはしゃいでいた。
「いい案だな!で、いつにする?」
大の大人がはしゃいでもかわいくない。
「ミシェリアさんやテオドールさんも呼ぶんですよね?楽しみですわ。」
アイリーンは安定でかわいい。
「ぉぉぉぉおおおおお!!?!?!?!?え、ええ!!?なんっ、なんでカール=ハインツ様がいらっしゃるの!!?」
数日後本当に開かれた俺の屋敷での食事会の時、あらかじめ第一王子がいることを話していなかったのでミシェリアがすごく驚いている。
「ん?なんだ女。俺様のことを知ってるのか?」
こういう高圧的な態度の男が好きなのかミシェリアの態度がまるでアイドルを目の前にしたファンのそれだ。
「ミシェリア?散々待たせた挙句俺以外の男にそんな目を向けるのか?」
「ふぁっ!?ち、違うよテオ!!!カール様はアイドルだから!恋愛とは違うからっ!!」
「へえ?じゃあ俺は?」
「~~~っ!!ばか、恋愛の方の意味で、好き………。」
「ふっ、俺もだ。」
「恋愛とは違うのか………。」
新婚夫婦ということもあり常夏のようにラブラブしているミシェリアとテオドールはまあいいとして、恋愛の意味とは違うと言われた第一王子が地味にしょんぼりしているのが気にかかる。
「皆さんいらっしゃいませ。ディナーの用意はできていますよ。」
ちょうどいいタイミングで顔をのぞかせたアイリーンに促されてみんなでダイニングに入り
食卓を囲む。
「なんだ、この貧相な食事は………。」
俺の屋敷ではほかの貴族たちとは違いアイリーンが直接料理を作っている。
確かに見た目は貧相かもしれないが、人の作った料理にその言い草はあんまりだ。
というか俺のアイリーンが作った料理に文句を言うこと自体許せない。
「なんだ。俺の嫁が作った料理が食えないってのか?あ゛?」
「なんだ、これはその女が作ったのか………。てっきりシェフが作ったのかと思っていたぞ。」
「あの、すみません。このような料理で。」
しょんぼりとしてしまうアイリーン。切れそうな俺。顔をそらせて胃を抑えるリーンハルト。はらはらした表情で俺と第一王子を交互に見るミシェリアとテオドール。
一瞬気まずげな表情をした後、第一王子は食事を口に運んだ。
「……………うまい。」
「当たり前だろ。誰が作ったと思ってんだ、アイリーンの手料理だぞ?それだけでうまい。」
そう言うと、第一王子は手に持っていたカトラリーをかちゃりと置いた。
「……今回は無礼講、そうだな?」
やけに真剣な表情で問いかけてくる第一王子に、緊張感が漂う。
「リーンハルト、これから俺が話す内容は他言無用だぞ。」
「……………わかりました。」
ごくりとみんなが息をのむ中、第一王子がその重い口を開いた。
「実は、……ある女のことが頭から離れないんだっ。」
「「「「「…………………は?」」」」」




