婚約関係の2人
ある日ジル君から私とテオに手紙が来た。
卒業したあと私とテオの婚約は正式に認められ、新事業立ち上げのこともあって私達は一緒に住んでいる。
なんてことは無い下町の、簡素だけどちょっと異国情緒溢れる素敵なお家、まあその異国で生まれ変わってるんだから異国も何も無いんだけどね。
お父様は割と簡単に認めてくれたけど、セバスだけはやたらと清い結婚を念おししてた。
そんなこと言われなくても恥ずかしいしできる気しないしっっ!!!
まあとりあえず、ジル君から来た手紙の内容は、集まれたし。なるほど、わかんない。
「??なんだろう。テオーー!!」
「どうしたんだ、ミシェリア?」
とりあえずテオを呼んだら朝食を作ってくれてるテオがひょこっとキッチンから顔を覗かせる。
オレンジのエプロンをつけたテオの圧倒的主夫感っ!!
貴族街じゃないからだいぶ砕けた格好のテオはエプロンのしたに着ているシャツの胸元をはだけさせており、襟元からチラチラ見える鎖骨がセクシーっ!
こんなかっこいい人がフィアンセって贅沢じゃない!?いや、ほんとにテオと婚約できてよかったっ!!
なんとなくくっつきたくなったので手紙を持ったまま近づき、テオの腕をとりその中に後ろから収まる。つまりセルフ背面抱きっ!
前に後ろから抱きしめてくれたテオの破壊力がやばかったので今でもたまにやってもらうんだよねー。まじイケメンの破壊力やばい。
「あのねー。ジル君から手紙が来たんだけど、集まれたししか書いてないんだよね。」
テオの胸に背中を預けてそう言うと、心得てますと言わんばかりに後ろからぎゅっとテオが抱きしめてくれる。
そして私の肩に顎をのせて手紙を覗き込む。
「ジルベスター君から?じゃあ早めに遣いでも出して行ってみようか。」
声がっっ!!耳から聞こえる声が素敵すぎるっっ!!!
そう言って後日訪れたマーキス邸で、
「マティアスとデューク公爵の好感度がカンストしている気がする。」
こんなこと言われたら爆笑するしかなくない!!?
思わず膝を叩いて爆笑しちゃうじゃん!!?え、ホモなの??ホモ展開なの!!?!?
まじか!いや、ゲームでもジル君ルートでは選択肢をミスるとジル君が男色に走るルートあったけど…………。まじかっ!!!
まさかジル君がリアルホモルートに突入しそうな予感に笑いが止まらないっ!!
しかも攻略キャラのマティアスはわかるけどなんでマティアスパパまで虜にしてるの??魔性の男なの???
「好感度?が最大、というのはいいことではないのか?何が問題なんだ?」
しかも純粋なテオにこんなこと聞かれててやばいわー。これどうやって説明するの??
男相手に貞操の危機ですとかいうの???
やっばい、笑いが止まらないっっ!!!!!
そんな風に爆笑していると、
「いい加減にしろよミシェリア。」
今までで1番低い声で脅される。
一瞬で笑いとか引いて冷や汗すら出てくる。
「ご、ごめんって!!」
「許さん。罰としてテオドールへの説明は任せた。」
なん、だと……!!?恋人にホモの説明するとか鬼畜っ!!!
いや、でも多分絶対ジル君許してくれないじゃん……っ!!
「え!!?えっと、その…………っっっ。あーーーー!!!ちょ、別室で説明してきていい!?さすがにアイリーンちゃんとかジル君とかのいる前でこれは恥ずかしい!!」
純粋に疑問符を飛ばして私を見てくるテオの視線に耐えきれず了承した。くそうっ!!!
「で、なんでジルベスター君はあんなにデューク公爵子息からの好意を嫌がってるんだ?」
別室に移動してすぐにテオが聞いてくる。
めっちゃ言い難い……。
「えっと、ね……。なんていうか、その、ジル君はそれが純粋な好意から発展するんじゃないかなって、心配してるんだよ、ね……。」
「発展……?」
訝しげな表情のテオ。
そうか……直接的な言葉で言わないと伝わらないのか……。
「その、つまりね……。男色的な、意味で。」
「……だん、しょく………。」
理解できないと言わんばかりの表情を浮かべるテオ。
「う、ん……。まあ、何でそう思ったかはさ、ジル君に直接聞こ!?ねっ!!?」
これ以上恋人にボーイズでラブってる話はできないって!!
急いで元いた部屋にテオを引っ張って帰る。
まあ帰ったらジル君とアイリーンちゃんがイチャイチャしてて入りにくいよねっ!!
なんていうか弟の恋を見守ってる感じでニヨニヨしちゃうけど、横にいるテオのこちらを見つめる視線が怪しいので悪いけど声をかけさせてもらうっっ!!
「あー、ジル君。相談はよろしいの?」
声をかけると顔を赤く染めたアイリーンちゃんが必死に抜け出そうとするけど、ジル君がそれを逃がさない。
「ちょっと、ジル様っ!?」
「俺のことを思うならもう少し説明を長くしてもよかったんだぞ?何ならほかのことでもしていてよかったのに。」
他の、こと……?
何かわからず首をかしげると心底残念なものを見るような目で見られる。なんでよ。
テオを見上げると遠い目をされる。なんでよ!?
「えっと、とりあえずミシェリアから話は聞いて状況は理解した。あーその、なんだ。気を強くな、ジルベスター君。」
「ああ、気を強く持つためにアイリーンを補給している。悪いな。」
なにそれ、アイリーンちゃんからはマイナスイオンでも出てるの?…気持ちはわからないでもないけどねっっ!!
「ああ、それは構わない。まあ少々羨ましいけどね…。」
「え、テオもこういうこと、したいの…?」
なんというか人の前でこういうことするの抵抗あるけど……、テオがやりたいなら、うん。少しくらいならいいかなっておもっちゃうよね。
ちょっと顔が赤くなている気がするけどちらっとテオを見上げてみる。
ちょ、テオさん?なんか目が座ってません??
「………ジルベスター君。俺が思うに男色の相手にされたくなかったら誰かほかの女性とくっつけたらいいんじゃないか?」
私から目を離さず早口でそう切り出すテオ。
「そうか。なるほどそれも一理ある。これからはその案でいこう。」
「そうか。なら俺たちはもう帰ってもいいか。またなにかあったら呼んでくれ。ミシェリア、帰るぞ。」
すぐに会話を終わらせたテオがぐっと親指を立てて私の腕を引っ張っていく。
んん!!?あんな作戦会議でいいの!?
「テオっ!!あんな作戦会議で良かったの!!?」
無言で引っ張られて帰ってきた家で問い詰める。
道中はどれだけ話しかけても答えてくれなかった。くそぅ!!
「もう!!」
いい加減無視されるのもごめんなのでそばにあるソファにテオを押し倒す。
まさか押し倒されると思っていなかったのか、ソファの背もたれに押し付けられたテオが眼を見開いて私を見上げてくる。
ふふん!逃がさないよ!!
顔の両側に手をついて閉じ込める。
イケメンにさ、壁ドン?するのってさ、ロマンだよねっっ!!
でも正直後悔してます。
目をぎらつかせたテオにやばいと思ったときには時すでに遅し。ぐいっと腕を引っ張られて逆にソファに押し倒された。
「俺が、どれだけ我慢してるかわかってるのか?それをかわいい顔で羨ましいか?だと?抱くぞ、本気で。」
低い男らしい声で囁くテオに押し倒されているという事実に顔に血が上る。
「え、あ。やぁ…っ。」
つっと指が首筋に沿わせられ、押し殺したような声が出てしまう。
「清い結婚が条件だから手は出さない。だからっていつまでも知らないですませるな。俺はミシェリアの兄でも従者でもない、婚約者だ。」
そう言ってすぐに私から離れていくテオ。
メーデーメーデー、今日やっとジル君の言った酷いことの意味がわかった。
うん、テオってば苦労してるよ。本当にごめん。いや、原因私だけどさっ!!
テオがいなくなった後、一人でソファーの上で顔を赤くして悶えるしかできない。
とりあえず25歳までとか言ってないで結婚しよう………。
テオに我慢させてることにやっと気づいたミシェリアさんは絆されまして、予定よりも早く結婚するそうです。




