魔物が増えているそうです。
ぐぁぁぁあああああ!!!
「うっとおしい!!」
俺は自分に向かって突撃してくるゴブリンに向かって剣をふりぬく。
すでに俺の周りには切り伏せたゴブリンの死骸が数十体転がっている。
「まったく。王都のすぐそばだっていうのに嫌になるくらい魔物が湧いてるな……。うちの女神と天使に何かあったらどうすんだ。」
苦々し気に最後の一体の首を落とす。
「さて、とりあえずこの件も含めてリーンハルトに報告だな…。」
そう言って俺は空間転移で王宮へと向かった。
「というわけで、最近王都近隣に魔物が多すぎる。王宮に来る前に狩っているがそれでも数が増えてるってどういうことだ…。」
「というよりジルは出勤前にそんなことをしているのかい?」
俺の報告にリーンハルトは口の端をぴくぴくさせる。嫁と子供の安全のためなら夜通しでも狩る所存だぞ?
「近隣の魔物狩りは一応一般兵の仕事だからほどほどにしておいてくれよ?だが、ふむ……。確かに最近数が多いな。一度議会の方でも報告をあげておこう。父の耳に入れておかねばならん。」
ふむっとその整った顔にしわを刻んで思案するリーンハルトはすぐに書類を作成し始めた。
なんとなく、今回も嫌な予感がする。イベント回収要因として俺が扱われている以上これもイベントじゃないのかと疑ってしまう。
なまじ魔物出現イベントがあるからなぁ…。
「というわけで最近魔物の出現数が大幅に増えておる。なんぞ悪いことの前触れやもしれん。王よ、お気をつけくださいませ。」
会議の当日、意外にも王に魔物の増加を進言したのはバイカウント筆頭魔導士だった。
バイカウント筆頭魔導士後ろには後継でもあるギデオンが控えている。
久しぶりに姿を見たギデオンは少し疲れているようにも見えた。
「ほう?ではバイカウント老師はいったいどのような理由をお考えで?」
でっぷりと太った王宮近衛騎士の男がそういった。
不健康そうな脂ぎった肌。なぜ近衛騎士団の団長がこんな戦えなさそうな奴なのか…。
一応爵位は公爵位で俺よりも上なのでとやかくは言わないが、パーティーとかの時にアイリーンのことをじろじろ見てくるので心底殴り飛ばしたい。
俺以外が女神をいやらしい目で見るんじゃねえ。
ちなみにゲームでバッドエンドに至った時にヒロインが結婚する豚と蛙のおっさんのうち豚の方である。
「ふむ…。確かではないが、魔王の復活も考えられるであろうな。」
その長いあごひげを梳きながら厳しい顔でそういう。
「魔王!?はっ!!魔王とはまた面白いことを言うものだな。もしや老師の後ろにいる魔族が出引きしたんじゃないのか?ん?」
にやにやした顔でギデオンを指さす豚。
「わしの息子を侮辱するのはやめてもらおうかっ。」
「なんだぁ?図星かぁ??」
その言葉にギデオンが顔をゆがめ
「黒髪は魔力の高い証であり魔族の証ではない。ピーホッグ公爵はそのようなこともご存じないので?」
アイリーンの件と言い、今回のギデオンの件と言い、この豚にはいろいろもの申したい。
思いっきりばかにしたような声色でそう言ってやると眉をぴくぴくとさせる豚。
「ほぉ?ではマーキス侯爵が魔王討伐に行ってくださるのですかな?ん?」
「ははっ!素晴らしい話題のすり替えですねピーホッグ公爵。ならば近衛騎士からももちろんどなたか派遣していただけるのでしょう?できれば最も実力のある騎士団長であるあなたにお願いしたいのですが?」
「……そんなに笑えたのか…。」
俺が嫌味を込めて満面の笑みで言ってやるとそれを横で見ていたリーンハルトが苦笑いをする。
「な!?わ、わたしは騎士団を指揮する義務があるから無理だ!」
「おや、魔王討伐よりも指揮のほうが大切だと?副団長がいらっしゃるでしょう?」
「な、ならば副団長に討伐に行かせる!!」
「副団長は文官上がりだと記憶しておりますが。武官上がりであるピーホッグ騎士団長のほうが実力がおありでしょう?」
終始笑顔を崩さずに言い返しているとだんだんと豚の顔色が悪くなる。ざまぁ。
しかし思わぬ横やりが入る。
「ピーホッグは公爵位を持つ貴族だぞ。今回の討伐は、そうだなぁ。マーキス、バイカウント、そしてリーンハルト、お前たちで行けばいい。」
そういったのはカール=ハインツ・フォン・ストウハーフェン。リーンハルトの実の兄であり、王位継承権第一位の王太子である。
リーンハルトと同じ金の髪に、リーンハルトとは違う赤い瞳のその男は人を食ったような笑顔を浮かべてそうのたまった。
「そ、そうだ!!私は公爵だからな!!それに、カール=ハインツ様に比べリーンハルト様には何の功績もないようだからここいらで功績を立ててみてはいかがかな!?」
第一王子の言葉で急に豚が勢いづいた。このクソ豚めっ!!
「まあお前が死んだらお前の嫁は私の妾として囲ってやるから安心していいぞぉ?」
にやにやとした笑顔を浮かべる豚を出荷したい。
だれがテメーに女神をやるか。
「兄上様がそうおっしゃるなら我々で行きましょう。その代わり1人回復職のものをつけてください。」
「よかろう。」
今しがた指名を受けたリーンハルトが重々しく答える。
「わ、私も志願します!」
宰相の後ろでバッとマティアスが手をあげる。
デューク公爵も驚いたように目を見開く。
「ほぉ…?確かお前はそこの第二王子と学園で一緒だったな…。いいだろう。お前の同行も認めてやろう。」
「ありがとう、ございますっ。」
こぶしを握り締めそういうマティアス。
今指名を受けたリーンハルトもギデオンも皆一様に死を覚悟したような表情をしている。
俺?あのデブがアイリーンを妾にするとか言ってるのに死ねるわけがない。
第一俺が死んだら女神と天使が悲しむのに死ねるわけがない。




