表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/96

1-20.騎士団長

 弓兵から見た俺は何だろう?おそらく狙いがつかずに困っているんじゃないだろうか。


「なんだあいつは、霧みたいな、煙みたいな・・・体が消えて見える。」

 そんなおかしなはずはないんだが、気配さえ消えてしまうのだ。


 そして1人づつ屠られていく。逃げ出した仲間の気持ちも分る。だが、あいつは背中から容赦なく射るのだ、切り付けるのだ。出鱈目だ、こんなのいくさではない。少なくとも俺達の知る戦場いくさばではない。


 気がつくと悪魔が目の前にいて、俺を睨んでいた。今は普通に見えるが、歩き出すと物語の中の吸血鬼のように、体を霧に変えるのだ。ヤーンよ! 

「おまえは弓兵だったな?今日の矢は毒矢か、それとも普通矢か。」


 俺には分かった。ここで嘘をつくとその瞬間死んでしまうと・・・

「今日の矢は普通矢だ、人数も少ないし。周りを囲んでいたから自分たちの矢が当たる可能性もあったし・・・」

「分った、ありがとう。」

 本人にも分らないように、指弾で地獄に送ってやった。苦しませる趣味はない。


 俺は馬車に戻って3人を安心させると、物語の幕引きを考えていた。伯爵は死んだのだ、家に火でも放ってやろうか?と考えていると・・・


「屋敷に火などつけないでくれたまえよ、ミズキ家のハヤトくん。」

「元気そうで何よりだ、伯爵。」


 2階のバルコニーの人影に俺は気づいていた。横に近衛が立っている。・・・やはり影武者か。


「あまり驚いてはくれんのだな、残念だよ。」

「これぐらいで驚いていると、冒険者などはやっていられないそうだ。」


「ランズベールの花が病人の役に立ったのは、本当なんだがな・・・」

「それは重畳、そろそろ本題に入ろうか?」


「なに、簡単な話だ。私の部下になってくれないかね・・・騎士団所属でどうだ、給金もはずむぞ。」

「やはりハヤブサには手が出なかったか?」

「頭の良い男は好きだよ、君が配下になるなら船は勝手についてくるからね。」

「嫌だ、といったら。」

「今度は初めから毒矢を使わせてもらうよ?」

「使いたければ勝手に使え。その代り、今日が伯爵家最後の夜になると思え。」


 男は少し逡巡した後、こう続けた。

「確かに君の力は認めよう。だが、仲間はどうする。確実に弓矢か剣の餌食だ。」

「それは認めよう、今も怪我を負ったようだしな。」

「ならばどうする?」

「どうもせん。」

「なにっ!?」

「俺は仲間の仇を討つだろう。」


 なんだこの男は。目の前の男は狂いか?仲間が殺されるのを承知の上で、自分が仇を討つといっているのか。


「俺は瑞樹家の、隼人だ。この名を継ぐ者が負けるわけにはいかん。」


「伯爵様、差し出がましいようですがここは私めにお預け願えませんか。このままヤツと殺し合いとなるは伯爵様も望まぬところ。なれば私、キロカーンが騎士の名誉にかけて決闘を所望いたします。」

 ・・・これは救いなのだ、キロカーンよ儂には分る。2度目の惨劇を起こさぬため、儂の命を守るため。


「ハヤトよ、聞こえておったか?此度の決着は騎士団長キロカーンと雌雄を決せ。余人に手出しをさせぬ。」

「俺の対価は何だ?」

「対価だと!?」

「アンタの座興に付き合うんだ、金貨の100枚も貰おうか。」

「だまっておれば、どこまでもつけ上がりおって・・・」


「俺は今すぐ殺し合いを始めても構わない・・・そうすると騎士団長の気持ちを無にするぞ?」 

 ・・・悪魔だ、こいつは。全て承知の上でいっているのだ。殺し合いはできないだろう、と。


「よかろう、大金貨10枚用意させる。」

「用意ができたら馬車にいる女に渡せ。」

「なんだと!」

「俺が負けたら取り返せばいい。」


「いいだろう、その代りこちらにも条件があるぞ。それだけの大口を叩くのであれば貴様は無手でキロカーンの相手をしてみせよ!それができぬとあらば・・・」

「いいぞ。」

「な、なに!?」

「無手でいいといっている。」

 馬車の方がざわついたのは気のせいだろう。


 大金貨をレイメイが確認したのを見届けると、ハヤトはまるで散歩に出かけるように歩き出した。


 慌てたのはキロカーンである。騎士の名誉がかかっているのに名乗りも上げないとは・・・

「我こそはキングスレイ家騎士団長キロカーン=J=スミス、古の作法にのっとり正々堂々いざ勝負!!」


「無手を相手に正々堂々とか、さすがに騎士様はいうことが違うな。」


 初撃は剣の間合いの外からの指弾であった。しかしこれは騎士剣によって防がれてしまう。


「この技は何度もみせてもらったゆえな・・・こちらも行かせてもらう。」

 両手剣を大上段から打ち下ろす。ただそれだけのことであったが、なんという鋭い斬撃 か!鎧姿でこの太刀筋とは、並みの修練ではあるまい。『二の太刀要らず』の剣法に似ているな・・・


「初見で今の初太刀をよく躱したな・・・やはりおぬしは危険だ。」

「いいもの見せてもらったから、今度はこちらの番だな。」


 俺は太刀の間合いから『飛天』を行った。キロカーンには突然、目の前に俺が現れたように見えただろう。

それでもキロカーンは驚きながらも横一文字に切りつけてくる。防御は鎧任せなのだろう。俺は左足踵から足を踏みおろし、軽く伸ばした左の掌底を鎧の上にふれた・・・ように見えただろう。


「ダダダン!!」

 鎧姿で倒れたキロカーンは剣を落していた。俺は止めをさすべく近づいた。最近自信を無くしかけている硬気功正拳突きだ。鎧ごしでは水月も心臓も分らない、カンである。


「ドゴン!!」

 下段突きとはめずらしいが、結構ダメージが通ったみたいで驚いた。そういえば、ハヤブサが何かいってたな・・・とりあえずもう一発いっとくか・・・


「ドゴン!!」

 おっ、うめいたぞ。元気な奴だ、左だしな、鎧が頑丈なんだな・・・おかしいな、ずいぶん場が静かだ。

 最後にもう一発・・・


「おまちください!!」

 そこに見知らぬ女がまろびでた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ