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とある王都の興亡劇

大陸制覇を目論む帝国軍との激しい戦いが終わり、同盟軍勝利で講和が行われていたころ、我が本国での大きな政変の予兆が部下から伝えられた。

信頼する部下や盟友たちに後事を託し、同盟国の一部でのみ使われる飛竜騎士に頼み陸路なら一月はかかる距離をわずか三日で帰還する。

本来ならば、大きな犠牲を払い辛くもつかみ取った勝利を皆で分かち合うはず。

今、対帝国戦線同盟が瓦解することになれば、弱体化した帝国はすぐにでも息を吹き返す。

それだけはなんとしても避けねばならなかった――。


「――よりにもよってこの時期に政変を起こしやがって、あの愚王め。今度こそ王家もろとも、根こそぎ排除してやる……!」


飛竜を操る騎士の後ろで、つぶやく声は激しい気流に消えていく。

飛竜を操る女性騎士の方がわずかに震えたのを感じながら、流れていく眼下の景色に若き将軍は目を細めた。



「――国王陛下より、王位を簒奪し敵である帝国軍と通じて国政を壟断した罪は明白! ここに王太子とその一派を糾弾するものである!!」

「王太子の後見役である王弟や宰相、大公たちも同罪だ!」

「帝国との戦いが佳境を迎える今こそ、断罪の時だ!」

「裏切り者に死を――!!」

「簒奪者を殺せ――!!」


大きな混乱が王都を包んでいた、王宮を包囲していた反乱軍と武装した民衆たちとともに王都開放を目指す解放軍。

王国軍本隊はほぼすべてが帝国との決戦に投入され、この地に残るのは貴族の私兵や王宮の守備隊のみであった。

だが金で雇われたならず者や食い詰めた難民たちを組織化した反乱軍は数の上で王宮の衛兵団を上回っていた。

それ故に宮廷を守るべき貴族官僚たちは市民の代表者たちを通じて、武器を用意し市民兵を訓練してこの時に備えていた。

双方が下らぬいさかいを起こした最中に本来の軍隊を率いる代表者――文字通り、一騎当千の力を持つ将軍や豪傑たち数名が混乱の王都に舞い戻った。


「――馬鹿どもが、俺たちが地獄の戦場で戦っているときに後ろで醜い権力なんて始めやがって」

「麗しの王都が火に包まれるなんてね、故郷を夢見て死んでいった部下たちが見たらなんていうか……」

「もはや王家にこの混乱を回復する力はない。俺たちも帝国との講和をいつまでも留守にすることはできん。力でねじ伏せるぞ!」

「幸い、冒険者たちはどちらの争いにも加担せずに、逃げ遅れた市民の非難を優先してくれるそうだ」

「なら、後ろは気にせずに戦えるな!」


それだけではない、王都近郊の各地に築かれた貧民窟の流民難民たちもこの戦いには加わらず、むしろこちらの動きに合わせてくれるという。

もともと大陸各国を渡り歩き定住地を持たなかった彼らを受け入れて、密偵や情報収集、威力偵察など軍向きの裏工作に利用していたのは将軍なのである。

彼らに定住地を確保する見返りに王国の民として正式に迎える。

その密約を確固とするためにも今回の混乱は王国の守護者たる軍の手で成し遂げねばならない。

それぞれに分かれた将軍と側近たちは凄まじい力を振るい、暴徒を打ちのめしていく。

あとに残されたのは身動き取れなくなったけが人の山。

不思議と死人だけは出さずに、王宮をも制圧した彼らは王家の人々を獄につなぎ、自分たちが新たな統治者として帝国との戦いに勝利したことを民に宣言した。


あまりにも強すぎる王国の守護者たちを恐怖と敬意の入り混じる視線で眺める王都の民。

王都の治安はその後、流民たちの自警団に引き継がれ将軍たちは前線の帰還。

帝国の穏健派との和解と同時に好戦的な帝国軍首脳部の粛清を断行して、完全勝利を宣言する同盟軍。

のちに同盟国は帝国を含めた連邦諸国を樹立し、初代首脳にはあの将軍とその最側近を務めた飛竜騎士の女性が選ばれる。

とある王家の末子であり、王位継承者でもあった彼女は別れを切り出すも将軍は彼女を離さず、生涯の伴侶として迎えたとか。


幾多の苦難を乗り越えた連邦諸国はその後数百年の長きに平穏の時代を築き、のちに他大陸との交易により更なる繁栄を築いたという。


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