表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/51

41:悪辣……手段を選ばない悪どいやり方

白い槍の群れが、静かに震えて、その中心に立つリナの腕が、ゆっくりと振り下ろされたと思うと氷槍の雨がフィールドを叩きつける。


一撃ではない。連続だ。轟音が重なり、氷の大地が割れる。

エタの体が弾ける。滑るように横へ飛んでいく。


だが。二本。三本。四本。


氷槍が逃げ道を塞ぐように落ちてくる。


 読めない!


「くっ!」

短剣が閃き、氷槍の先端が弾かれる。


だが背後の氷槍が爆ぜた。無数の氷片が弾丸のように飛び散る。


「――!」

エタの肩に深く突き刺さる。氷片が肉を裂き、血が飛ぶ。血すら、空中で凍りつくほどだった。エタは歯を食いしばる。


「……!」

足元を蹴り、氷の床を滑りながら強引に距離を取る。リナは止まらない。


「まだ」


気づいたときには、もう目の前にいた。


 思考が読めない!


白壊を使うものだけが登れる無常の域。思跡魔法はすでに使い物にならなかった。

拳が振り抜かれる。咄嗟にエタは短剣で受けた。


氷が砕け、衝撃が腕に走る。


 は? どうしてそこに


膝と腹を氷槍が貫く。


 氷槍よりも速い。いや――速すぎる。

常軌を逸している。まるで必中、リナの腹部の前で氷が生成され、至近距離から氷槍が撃ち出された。


ドンッ!! 気がついた時にはエタの体が宙に浮いた。地面から浮き上がった氷の床は彼を弾き飛ばす。


氷の床を滑り、吹き飛ぶ。腹を抑え、ゆっくりと氷槍を引き抜いた。


 これはまずい


転がりながら立ち上がる。口から血が垂れたので拭う。そしてエタの脳裏に浮かんだ思考。


 リナもしかしたら君は、ゼルより……


呼吸が荒い。全身から汗が流れ出て、吐き気を催した。視界がクラクラと揺れる。


だがそれ以上におかしいことがあった。

「思跡魔法が……まったく使えない」


思跡魔法。相手の思考を読む魔法。


 今まで何度も使ってきた。

 だが。


 今のリナにそれを向けた瞬間。

 何もない。


 白い靄がかかっているかのように……。


エタの眉が歪む。


 あの女と同じ、いやそれよりも深い靄がかかっている。


「どういうことだ」

もう一度、思跡魔法を発動する。


意識をリナへ向ける。


だが――


白い靄。


思跡魔法に魔力を込め、深い思考を汲み取ろうとしても、より白い空間が広がっていく。


何もない。


声の思跡も。


感情の思跡も。


記憶の思跡も。


ただ広がるのは真っ白な空間。

エタの背筋に冷たいものが走る。


「魔法がまるで意味をなさない」

その瞬間。


背後の空気が凍った。


「エタ」

振り向く。


もう遅い。

リナの蹴りが横から叩き込まれ、エタの体が氷壁に叩きつけられる。


壁の表面が砕け、氷の破片が舞った。エタは咳き込む。

血が吐き出される。


視界が白く濁り、瞼は青白く凍っていく。開けているのもやっとだ。

視界の先にはリナが立っている。白い息を吐きながら。


 その目をやめろ


 やめてくれ。


 怒りも。


 迷いも。


 何もないような、その目を……ただ戦うためだけの目をやめてくれ


「白壊」

理解する。


白壊とは、魔力の出口を広げる技。


 出口が抽象的だからわからなかった。だけどそれがもし()()だとするなら……


「思考を削っているのか」


 白壊中のリナの意識。それは一般人の思考のそれではない。大きな思考の入口を開けたような状態。具体的には思考を削るのではなく、広げる。そしてその思考の穴から魔法を放出する。


 だから読めない。思考の穴が大きすぎるが故に、白い靄のように魔力の圧で押し返される。


「はは……」

エタは笑った。血まみれの口を拭い、首を傾けて鳴らす。


「面白い」

ゆっくりと立ち上がった。


「最高じゃないか」

短剣を構える。


「リナ」

猫の仮面を外した。その目に一瞬狂気の光が宿った。


「そんな状態で」

一歩踏み出し、氷が砕ける。


「どこまで戦える?」

砕けた氷が床に落ちる瞬間、エタは彼女の視界から消えた。氷の床を蹴り、滑るように低姿勢で突っ込む。


短剣が閃く。短剣がリナの腹に届く数ミリ手前、拳が先に動いた。エタの短剣が弾き飛ぶ。


そのまま拳、肘、膝、連撃。エタの体が何度も弾かれ、氷の床に叩きつけられる。

それでもエタは笑う。


「ははは!」


「いい!」

リナの拳を掴む。エタは腰から三本目の短剣を引き抜く。


「だが!」

振り抜く。


短剣の先が、リナの左胸へ沈む。

「終わりだ」

引き抜くと氷のフィールドに大量の血が零れ落ちた。


エタは氷の上を一回転くるりと回り、太ももへ深く突き刺した。

「ありがとう、元妻よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ