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ゼルの掌握  ~魔王はまだ死ねない~  作者: Hulanes
第二章:鬼哭・啾々
25/52

25:殄戮……人々を殺し尽くすこと

 王城の大扉が閉じた時、ようやく静寂が戻った。


「……つ、疲れたぁぁ……」


深夜前。国王との対談は予想以上に長引いた。王は妙に上機嫌だった。ゼルの事を話すたびに目を輝かせ、魔法理論の話にも身を乗り出してきた。


街はかなり賑わっていた。

 

 国宝様から聞いた通り、ほんとに魔王は死んだんだ……。なんか信じられない不思議な感じ。


そしてどっと疲れが体を襲う。目は半開き。

「はぁ、ほんっと話が長すぎよ」

悪い人ではない。むしろ楽しい話も多かった。けれど。


「……あ」


胸の奥に、小さな違和感。


 ゼルに言われた言葉が蘇る。


――迷子になるなよ。

 むっとしたあの時の自分。

 けれど今は。


「……あいつ、どこいるの」


王城の外へ出た。夜風が冷たい。こんなに時間がかかったんだ。ゼルも暇つぶしで、どこかにいるかもしれない。


でも。迎えに来ると思っていた自分がいた。



***



宿の屋根の上。

王都の夜を見下ろしながら、ゼルは腕を組んでいた。


「……」


迎えに行くつもりはなかった。


だが――


妙だった。


バラルガの気配がないということに。


 あいつははうるさいほど気配を出す。隠密など性に合わない。

 だが今は、完全に“途絶えている”。

 消えたのではない。

 遮断されている。

 ゼルの瞳が細くなる。


「……面倒な匂いがする」



***



数時間前のこと。


 暗い。


湿った石の匂い。

「……主」


声が出ない。ここに来るまでに、何かを飲まされた。


両腕は縄で拘束。


 魔力が……流れない。


 門が開かない。


「ほう。意識はあるのですね」

足音。コツ、コツ、と石床を打つ。


バラルガは見上げた。そこには不気味な猫の仮面。

「あなたの彼は優秀だ。だからこそ、あなたは邪魔なのです」

 


***



 王都で唯一、彼らのお金で借りれそうな宿に行った。


「ここに……ゼルっていう成人の男性が来ませんでした?」

女店員にリナは聞いた。


「ゼル……はい、いますよ。上の階の一番右の部屋です」


「ありがとうございます」


宿の女店員は首をかしげた。

「……あれ、さっきの子どこかで?」


リナは階段を駆け上がり、勢いよく扉をトントンと叩いた。扉を開けてみると鍵がかかっていない。


「……いない」


ゼルの部屋は蛻の殻。窓は開いていた。


 屋根?


外へ出た。


「バラルガー!」


返事はない。胸がざわつく。


 いない。


「……どこにいるの」


言葉が弱くなる。


 なんでこんなに、不安なの。


「……もしかして、私があいつらも見捨てたから?」


 で、でも別に。

 あいつは強いし。

 放っておいても平気だし。


 なのに。


 胸の奥が、ぎゅっとする。


 ……私って。


 私、あいつを。


 必要としてる?


 「は? なにそれ……」

顔が熱い。


 ち、違う。


 恋とか、そういうのじゃない。


 でも。


 いないと、落ち着かない。


ゴーン……


深夜の鐘が鳴った。

空気が震えた。



***

 


 ゴーン……

深夜の鐘の余韻が、王都の石畳を震わせていた。


路地裏。酒場帰りの男が壁にもたれかかっている。顔は赤く、足元はおぼつかない。


「……へへ、明日も飲むぞぉ……」

ふらり、と前に倒れかけたその瞬間。


影が背後に滑り込む。


 猫の仮面。


二本のダガーが、静かに動いた。刃は音もなく衣服の隙間に入り、ほんの一瞬触れただけで引き抜かれる。

男はあ……と小さく息を漏らした。


次の瞬間、力が抜ける。声は出ない。目だけが見開かれ――そのまま動かなくなった。血はほとんど流れない。


 即効性の毒だよ。呼吸を奪い、声帯を封じる。


素晴らしい。エタ・リヒトは呟く。


「騒がれない。悲鳴もない。実に愉快」

彼は物陰へと溶ける。


また一人。


また一人。


酔い潰れた民衆が、眠るように死んでいく。


エタの先には小さな子どもが立っていた。

地面に倒れている母親を揺すっている。


「……ママ?」


返事はない。


「起きて……」

泣き声が、こぼれそうになる。


エタはゆっくり近づいた。

月明かりが仮面を照らす。


「シー……」

人差し指を口元に。

「お母さんが起きちゃいますよ」

子供はびくりとする。


ダガーが、静かに動いた。


小さな体が揺れ、母親の胸元へと倒れ込む。

エタはしゃがみ込み、二人の体を整える。


 眠っているように。母が子を抱きしめる形に直してあげる。


 「……綺麗だよ」

彼は満足げに呟いた。

「とってもね」


「――何してんの?」


背後から聞こえる声。エタの動きが止まる。振り返ると路地裏の入口、月明かりの逆光の中に立つ女がいた。


 リナ!


瞳は、いつもの揺れがなかった。


「……何してんの?」

もう一度。冷え切った声。


エタは勢いよく立ち上がった。


「久しぶりだ。氷の子」

猫の仮面が傾く。おっと、と仮面を外した。


「覚えている、よね? 私だよ私。リヒトだよ!」

ダガーの先端から、透明な液体が一滴、地面に落ちた。

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