5-30 硬くて太くてデカいやつ
こんなマッハのフラグ回収あるかね?
疲労困憊の俺達の前に現れたのは、ご存じ変態マントのおっさんだ。
確か神官とか名乗ってたけど、クラス名間違ってるよ、絶対。
しかもこいつ、諸事情により俺しかまともに戦えないんだよな。
「ひぃっ!」
急に体の支えがなくなり、俺は尻餅をついた。
見上げると、真琴も陽花も、目を押さえて後ろを向いている。
この通りですわ。
なんだかんだで乙女な2人に、猛り狂う巨象を真っ向から見据えるなんてのは無理なわけで。
ノーム様の視界はそっと隠しておく。この子に汚れた物を見せたくない。
「そ、そ、そ、曽良さん! すみません! けど、無理です!」
「センパイ早くそいつ追っ払って!」
あ、感情戻ってる。
すげーな、おっさんの股間露出療法。今度からユピテール使ったらおっさんに脱いでもらうか。着てるとこ見た事ないけど。
「錦曽良、お前と本気でやり合いたい」
「あんたマジでそっちの気とかないんだよな? やめてくれよ、洒落にならない外見してんだから……。やり合うったって、ご覧の通り動けないんだよ」
「なら、動けるようになるまで待とう」
「嫌だよ! なんで裸のおっさんの熱視線に晒され続けなきゃなんねーんだ。全然休まらんわ!」
だいたい、この戦闘狂を満足させるような戦い、俺がしたか?
無様に負けたか、裏技使って勝ったかなんだが。
おっさんはそれ以上近づく事もせず、されど股間の大剣は昂らせたままじっとこちらを見つめている。
ウホッ……って気分にさせられそうなので、さっさと帰ってもらうべく、俺は手をついて無理やり立ち上がった。
「ほう。武人の矜持はあるか。強い男は嫌いじゃない」
「やめろマジ! ぞっとするわ。とりあえず、こっち来いよ。ここじゃ満足に戦えない」
「ふん……」
広いスペースのある部屋まで、おっさんを誘導する。
ここでなら何が起こっても2人に見られる事はない。
それはつまり殺されそうになっても助けが入らないって事でもあるけど。
だがしかし、俺には秘策がある。下に落として命を奪わずとも、おっさんを無力化できる秘策が。
あえてふらついているのを隠さないのもそのためだ。
油断を誘って、近付いたところをガツン! これですわ。
そして、ガツンしてやる部位は既に決めている。
悶絶しながら沈むがいい……!
「ノーム! 頼む!」
『うん』
俺の叫びにノーム様が答え、体を薄い膜のような感触が覆う。
さっきは気づかなかったが、これが硬質化の合図らしい。
おっさんの手はわかってる。剣をぶん回すのが主な攻撃手段だ。
重力を操る事もできるみたいだが、それは致命的なダメージにはならない。なら、こうして防御を固めてやれば敗北はない。
「ノーム……ほう、ノームと契約を結んだか。既にウンディーネ様と契約をしておきながら、気の多い奴だ。無礼と知れ」
「お前も人前で豪快に猥褻物まろび出してるんだから、お互い様って事で」
手の中に、ガイア・ノーツを呼び出す。
体を支えるつもりで低く構えた。
おっさんも身を低くし、跳んだ。
一瞬で距離を詰められ、蹴りが飛んで来る。痛くないはずとわかっていてもめちゃくちゃ怖…………、
「ぐっ……べぇあっ!?」
視界が回転する。
遅れて、顔面に激痛が走った。
たぶん空中で3回ほど回って、顔面から地面へ着地させられる。
鼻、折れたんじゃないかこれ。
「ぐっ……ぶふっ……!? は、はあ!?」
「何故、ノームの能力が効かないのか、と考えているのか?」
おっさんはニヤニヤとしている。
この野郎、何やっても地獄絵図みたいな外見になるくせに、ずいぶんキメやがる。
だが何故だ。ノームの硬質化は、確かに全身を覆ったはずなのに……。
「簡単な事だ。俺の方が硬い。同じ大地の力だとわかれば、俺の方が使いこなせているだけだ」




