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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
4章
56/112

4-8 肉と炎とサラマンダー

本年の更新は最後です。皆さま良いお年を

 じゅうじゅうと肉が焼ける。立ち上る煙が排煙装置に吸い込まれていく中、俺はひたすら肉をひっくり返していた。

 ザルに盛られた肉が眩しい。俺がたまに奮発して食べていた2割引の牛肉とは大違いだ……。

 脂の口溶けがもう違う。

 陽花もウンディーネも満足そうに味わっている。さっきまで命が失われるかもしれない戦いに身を置いていたとは思えない、微笑ましい光景だ。


「んおぃひぃ〜!」

「おう、良かったな。いっぱい食えよ」

「人間って、はぐ、愚かだけれど、ん、食への追求だけは認めてあげるわ!」

「どこ目線だお前。ほら、これも焼けてるから食え」


 トングでウンディーネの前に肉を置いてやると、すぐに幸せそうな顔で頬張った。

 特に小難しい話をするでもなく、ひたすら肉を焼いては注文し、頬張って感想を口にする陽花達を眺める。

 やっぱ美味いもんは笑って食うのが一番だよな。


「どうした真琴、箸が進んでないみたいだけど」

「え? あ、いえ、すみません……」


 カルビを口へ運び咀嚼した後、真琴は箸を置いた。


「あの、それで、さっきの話なんですが」

「ん? ああ……。まずは食ってからの方が良くないか? お互い落ち着いてからじゃないと話もまとまんねーし」

「……はい」


 しばしみんなで肉をつついた後、満腹になった腹をさすりながら一息吐いた。

 陽花とウンディーネは食後にパフェまで頼んでいる。凄まじい食欲だけど、何故か太らないんだよなあ、陽花。


「ふー……で、話な。俺が嘘吐いてるってやつ」

「はい」


 真琴の顔は真剣そのもの。下手なごまかしや取り繕いは無意味だろう。おふざけも無し。

 むしろここまでバレてんのに言い訳するのはさすがに不可能だ。

 仕方なく、俺はここまでの事を語った。

 ヒュドラに負けた事、退院してステータス更新に行った事、帰ったら家が燃やされて、そこにいた真琴に殺された事。

 ただ、ウンディーネ(美)さんの事は話さないでおいた。

 不確定なものをここで語っても、余計に混乱するだけだと思ったのだ。


「で、気が付いたら時間が戻って、アパートにいたんだ」

「それで、はむ、ひぇんまい、むぐ……センパイ、急に叫び出したんすね」

「ほら、口んとこ付いてる。おう、俺にとっちゃ2回めだったわけよ、あのやりとりは」

「いつもみたく単なる奇行だと思ったわ」


 お前はちょっとくらい察するとかしてくれよ。

 ますますあのウンディーネ(美)さんと同一人物だなんて思えない。

 話し終えると、真琴が目を伏せて考え込んだ。

 無理もないか。いきなり「お前が人殺しの下手人だ」なんて突き付けられても、到底信じられるはずもないし。

 ただ、嘘だとも思ってはいないはずだ。さすがにこの空気の中でしょーもないギャグ言うほど、俺だって腐っちゃいない。

 しばらくすると、真琴が沈んだ声で「すみません」とだけ口にした。


「いいわよ、謝らなくても。曽良はちゃんとここにいるんだから、ノーカンでしょ。少なくともこの世界のあなたには関係ないんだから」


 そんな慰めの言葉があるか!

 まあ、このアホダンジョン生命体じゃないけれど、この世界の真琴には何も関係がないんだし、謝罪されたところでどうなるわけでもない。

 俺だってそんなもん欲しくて話したわけじゃない。問題はこっから先、真琴とその家族をどう救うか、だ。

 クールにそう言おうとした俺を、真琴が食い気味に遮ってきた。


「私が納得できないんだ!」

「え、ええー……」


 おい、面倒だぞこの子。

 今完全に「じゃあ次行くか」って空気だったじゃん。


「どんな罰でも受けます。でなきゃ、私は……!」


 この真面目さ何なんだよ。

 珍しく声を荒げる真琴に、俺もウンディーネもちょっと引き気味になっている。

 たった1人、陽花だけがパフェに夢中になっていた。

 その能天気さ俺にも分けてくれ。


「そう熱くなんなって。本当に俺は気にして……」

『いいや、違うなァ。もっと怒れ、もっと燃え上がるんだよ』

「ない……は? 真琴、何か言ったか?」

「え、私は……」


 突然、野太い声が頭の中に響いた。

 それは真琴も同じだったらしく、周囲をキョロキョロと見回している。

 ウンディーネも目を見開いた。

 この声、聞き覚えがある。

 真琴が俺を殺した時に聞こえてきた声だ。

 つまり、声の主はおそらく……。


「サラマンダー……!」


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