耳と目
いただいた感想を読んでいると、もっと詳しくうかがいたいなあと思うものばかりですね。勉強になります。その一つを参考に、今回は話を進めていきます。
さて、「英語を話せるようになるなら、まず外国に住まなきゃね」と言う話をよく聞きます。しかし、私は外国に住んでも英語を話せる気がしません。それは引きこもり体質なせいもありますが、「耳から言葉を覚える」ということが苦手だからです。
普通に日本人同士で話していても、相手の話す言葉を漢字に置き換えないとついていけないことがたまにあります。そしてそれは文脈からだったり、相手の表情や身ぶりなどから総合的に判断するので、電話での会話も少々苦手です。
また、文字に置き換えて話を聞いているので、相手が文字を意識していないせいで引っかかることもよくあります。それは例えば、「ふいんき」や「たちふるまい」などです。それぞれ「雰囲気」「立ち居振る舞い」なので、正しくは「ふんいき」「たちいふるまい」と発音するのが正解です。
でも、これを自分が正しくて相手が間違っている、とは単純には思えないんです。
この場合、私は相手が「耳で言語をとらえるタイプ」自分が「目で言語をとらえるタイプ」だと判断します。
そしてこの「耳で言語をとらえるタイプ」の人は、外国に住みさえすれば、かなり早くに言葉が話せるタイプでもあると思います。学習教材でも耳から入るタイプが合っているのではないかと思います。耳からの情報だけでは心もとない私にとっては、ある意味とてもうらやましい。
ただし、このタイプの人たちがあまり重視していないのが、先ほどの「意味まで含めた発話」でもあります。そして、これが問題になってくるのが、漢字だけでなく英語でもあります。
具体的には、例えば「bag」を日本語で「バッグ」と発音するか、「バック」と発音するかです。厳密にいえば、バッグもバックも正しくありません。発音がまったく違うからです。それでも、英語の表記を見れば最後はG、つまり濁音なので、目で言語をとらえる人にとっては当然「バッグ」です。また、それが標準の表記であると思います。
しかし、日本語では、特に東京圏では文末の濁音の発音は弱い傾向にあります。清音の発音も弱くて、子音プラス母音が基本であっても、ほとんど母音が発音されないこともあります。それは単語にも応用されて、「バッグ」は実際に発声すると、「グ」は軽く、弱く発音されるため、「ク」に近く聞こえます。
これには日本語として濁音より清音が好まれるという傾向も背景にあるように思います。
したがって、耳で言語をとらえる人にとっては、自然に、「バック」「ベット」と言葉をとらえ、それを書こうとするとそのまま「バック」「ベット」と表記してしまうのでしょう。
ここでやっと、これが誤字か否かと言う話につながります。はあ、ちょっと長かったですね。
こないだ友だちがオーストラリアに行って、現地の人に、「ホッタイモイジルナ」と話しかけてまったく理解されずに恥ずかしい思いをしたという話を聞きました。これは「今何時ですか」を「ホワットタイムイズイットナウ」と発音するより、「掘ったいもいじるな」と発音したほうが理解されるぞという、昔からの逸話をさらに別の友人にやってみろとけしかけられたからだそうですが。勇気があるなあと思いました。
これをテレビでやっていて、「ホッタイモイジルナ」が通じたところをみたことがありますから、つまり英語の日本語っぽい表記は英語では通じない発音である、でも日本語で表現するとしたらそれしかないのでそれも仕方ない。ならばなるべく発音に近いものがよいだろう。という結論になります。
だから寝床を表現したいなら、ベットではなくベッドと書くのがよいが、同じような表記のゆれであっても、パーティはパーティーでもよいということになるのです。
何でそんなことを指摘されてしまったんだろうと思う書き手は、自分は耳で言語をとらえるタイプだと思って、表記の時は少しその点に注意したらよいと思うわけです。
ふう、ちょっと話がずれすぎたかな?