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094 目は口ほどに物語る

天下茶屋駅伝部の主力選手。

昇と泉の出場する男子5000m最終組には…


とんだ実力者がいるようです。




「さて…終わったな。」

「ノンビリしてていいのか放出。。

 四組目が終わって、

 もう最終組が始まるんだぞ。」


「…はは。俺には何もできないよ。

 それにどのみち今のアイツらでは、

 マルとは勝負にならないし…(・v・)」

「…だからって…(´・ω・`)」


「…心配しなくてもいいさ。。('ω')

 佐野はあれで頼れる男だよ。

「…(´・ω・`)??」



「…それよりお前たちは、

 四組目のタイムに注目しろ。」

「…千林さん。

 それはどういうことですか??」


「…この組は先頭のタイムこそ

 15分18秒と平凡だが…

 その10秒後にはさらに5人も入った。」

「…つまり15分29秒のボクは…

 この組に入っていたら

 7位で終わってたってことか。。」


「…加えてほとんどのランナーが

 15分台でゴールしている。

 浜寺のように16分かかってるのは

 数人しかいなかったぞ。」

「…つまり俺は16分04秒だから…

 この組では下位に沈んでたと。。」


「あと能勢に阿倍野!!

 三キロ区間であれ長距離だ。。

 この連中と向こうを張れない限り

 都大路では話にならんぞ!!」

「…は…はい。。(・.・;)』


「あと…この先を見て自信を無くすな…」

「……(´・ω・;)」



 …そうやろうな。(´・ω・`)


 この三四組目で勝てて初めて

 都大路で戦えるというモンやから。


 そして次は最終組。

 ざっと見渡してもその参加者は

 その全員が…


 三・四組目で一位を狙えるレベル。

 つまり全員が個人であれば

 都大路にさえ参加できるレベル。。


 でもワシらは…

 そんな中でも勝ち抜かなあかん。


 なぜなら…この中には報緑が5人。


 昨年の都大路では西風と…

 ワシらの地区最強の学校と互角に

 戦ったチームの全容が見える。


 主力のワシらがここで勝つとは…

 即ち都大路への挑戦権。


 それを勝ち取るつもりやけど…


 スタート直前になっても離れん男は

 別にいるわけで…(・.・;)

 


「……よう。佐野…

 お前は最後までついてきてくれよ。」

「…寂しがり屋か??(・c・;)

 挑発されたかて今のワシにはムリや…」


「…ふん。。(*'v'*)

 だがこの組で俺の相手になるのは

 お前ぐらいやろうからな…」

「…アホかいな。。( ・_・;)

 ていうか潘工のお前が挑発するなら

 相手が違うんとちゃう??」


「…ツマらんヤツやな…

 男やったらウソでも意地はれや。。」

「い…今更そんなもん…(-_-;)

 というかお前こそ女々しいやろが…

 人をダシに使いよって。。」



 …おおい。垂水さんとやら…


 今さら泉ちゃんに男の意地なんか

 期待してもムダやど。。(・o・)ノ


 でも…相当に自信があるんやろう。


 佐野泉にさえ絶対に負けない。

 ライバル校の5人に睨みつけられても

 動じない…


 それだけの自負心が。。



 そして20人の選ばれしランナーが

 スタートラインに並ぶ。


 これは…もはや記録会やない。


 半年後の駅伝兵庫県予選を見据えた 

 前哨戦とさえ言える。


 当然、普通の流れにはならんわけで…



 <パン>

 号砲一発…最終組がスタートした。


 そして直後から黒いユニフォームは、

 五人掛かりで緑色に包囲される。


 完璧なまでのポケット。

 黒色は一歩も外に出られない。


 これは予想されてたことやけど…

 


 その代り誰も前に出られない。

 先頭を引っ張るのは…大学生の二人。


 大人の走りと思ってたけど…

 そのペースは予想してたほどやない。


 1000mの通過は…3分01秒。


 ワシでも充分についていけるレベル。

 記録の出やすいアンツーカーのトラックで

 このタイムは目標より遅いくらい。。


 せめてもう少しと思うのはほとんど皆

 同じやったようで…


 特に…この学校では…



「こらー!!何をしとるか!!」

「…くっ…でも。。」


「今日は記録会やぞ!!

 男やったら上げていかんかい!!

 そんな女々しい走り…すな!!」

「…(´・ω・`)??」



 報緑…名谷監督の檄が飛ぶ。。


 だってこの貴重な記録会で先頭が

 15分を切れないなんてことになったら、

 もはや恥の領域。。


 せやけど…

 男とか女とか拘るところ??


 もちろんその理由をわかるのは

 ワシと泉だけやけど…


 指示通り…

 緑色の一団がジリっと前に出た。

 つれてペースは上がる。


 さっきまで一キロ3分やったペースは

 数秒程度やけど…

 明らかにその違いは体感できる。


 ここまで一人として脱落者の出なかった

 選ばれし最終組の選手たちが

 徐々に隊列を乱し…遅れ始める。。


 20人が一団で進んでた先頭集団は、

 あっという間に13人ほどに。。


 僅かなペースアップが…

 時速20キロから21キロへの変化が

 阪神地区の猛者たちをふるいにかける。



 せやけど…ワシは行ける。。


 だってこの速さになれば入れるから。

 今や自分自身で制御できるから。


 あの身体が軽くなり、

 いつまででも走ってられそうな、

 独特のランナーズハイ…


 あの不思議な無敵モードに。。



 そしてワシに余力がなくなり…

 隣を走る泉の表情から余裕が消えた時…


 …来た。あの感覚…


 こうなりさえすればワシは強い。

 どんなペースにでも太刀打ちできる。


 …はず。。(-_-メ)


 けどそんな考えでいられるのは

 この集団にあっても少数派みたい。。


 周囲の息遣いは荒くなり…

 先頭集団は徐々に縦に長く延び…


 黒色を囲っているはずのあの

 緑色の精鋭でさえ足並みが乱れる。


 すると…



 黒色の表情が…

 垂水の口元が緩む。。


 表情の乏しい、顔面神経痛の

 ワシには無縁の話かもしれんけど、

 陸上では見落とせない予兆。。


 …仕掛けが来る。。


 だがペースアップに備えようとする刹那、

 泉が覆い被さるようにワシの前へ…


 そして駆け引きに長けた北摂の白兎は

 ワシに夜叉の如き視線を向ける。。


 その意図は…明確。。



 【 行ってはいけない。

   もし行けば…潰される。。 】



 黒色の垂水が表情に…

 その目に笑みを浮かべる。


 これだけ温まっているワシの背中に

 未だ感じたことのない寒気が…


 陸上競技に初めて恐怖を覚えた。

 そしてその直後に見たモノは…



 鉄壁である緑の包囲網の…瓦解。。




トラック競技で三人にポケットされると

まず前には出られません。


四・五人にこれをやられると、

横にも後ろにも動けなくなります。


まぁよほど力の差がなければ…

消耗してやられちゃいますよね。。





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