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095 力技の方が鮮烈だよ

阪神地区記録会

男子5000m最終組。


動きがありました。。


 瓦解…( ゜Д゜)


 スタート以来ずっと保たれてきた

 報緑五人掛かりの鉄壁のポケットが…


 中間点である2500mを過ぎてすぐ。

 ホームストレートに入ったところで

 たった一人の潘工に破られた。



 強引なまでに体を当てて囲みを破った

 播州工業副主将・垂水高丸は、

 そのまま集団の先頭に躍り出る。


 報緑は再び囲いを作ろうとするも…

 できない。

 なぜなら垂水が速いから。。


 おそらく時速にして22キロ以上…


 20~21キロ程度が限界の高校生に

 とってこれは…

 危険領域とさえ言える速さ。


 冷静に考えれば付くべきでない。。



 けどこのレースはライバル校の

 エース同士の争いでもある。


 …遅れはとれない。。


 報緑はここまでの包囲網で

 消耗させた垂水に食らいつく。


 これで先頭集団は6人。


 先頭は潘工の垂水…

 これに京都蚕業の大学生が続き…

 報緑は一人脱落して4人。。


 でもこれは…

 分析する天下茶屋のテントでは…



「放出はどう見る??(・.・;)」

「…マルのやつエゲツナイことを。。

 力技で捻じ伏せるつもりか??」


「…どういうこと??

 マルって駆け引きが下手なの??」

「…そんなわけないだろう。。

 アイツは3000mSCの高校王者だぞ。

 体は小さいが体幹は強いし、

 終盤の競り合いでは超一流だ。。」


「…じゃぁなんで力技を??

 普通に走れば終盤勝負で勝てるのに…」

「おそらく…インパクトだ。

 仮にここで勝っても、潘工のエースに

 終盤まで競れる選手が何人もいると

 報緑に思われては良くないだろう。。」


「だから…大差で捻じ伏せる??」

「…どうやっても播工には勝てないと

 印象付けたいんだろう。。

 どうせ勝つなら小手先より…

 力技の方がはるかに鮮烈だよ。。」



 その分析…正しかった。


 垂水が先頭に立って最初の

 一周は…65秒。(;'∀')


 これは13分30秒程のペース。。


 前半のスローペースを考えれば

 高校トップの選手ならついていける。


 けど次の一周は…63秒。(´゜д゜`)


 日本記録のペースさえ上回る。

 いくら前半を抑えていたとはいえ

 ついていくのは不可能。。


 けど…

 先頭がジワジワと逃げるだけでの

 レース展開では、一周2秒程度の

 ペースアップは気付きにくい。


 でもその影響は歴然。。


 仕掛けも駆け引きもない。

 ジワジワと先頭集団は人数を減らし

 脱落していく。。


 残りが1000mになる頃には…

 3人にまで減っていた。

 


 ちなみにワシと泉は先頭から

 100mちょっと遅れた7位集団にいる。


 この集団には一時は先頭につこうと

 した脱落者も多く含まれる。

 ペースを保っていたワシらの余力は

 彼らよりはあるはず。。


 ならばこのままペースを保っていれば

 順位も記録も悪くはないはず。



 せやけど…

 前が魅力的すぎる。。


 目の前には緑のユニフォームが…

 少しペースを上げれば、

 憧れの名門の前を走れる。


 そして前にいる脱落者を全員

 抜ければワシは4位。

 表彰台だって夢ではないはず。。


 加えて…今のワシは無敵モード。


 厭らしい気持ちを出すなというのが

 ムリな話や。。



 だからワシは…集団を飛び出した。

 今度は泉も止めない。


 憧れの緑色をかわして6位に上って

 ラスト二周。

 さらに前にと思ったけど…


 …足が…重い。

 …体が異常なまでに熱を帯びて…

 …これまで経験したことがないほど

 …だるくて…息苦しい。。


 それでも気力を振り絞って

 5位を走る大学生を捕らえたけど

 これが限界。(´・ω・`)


 無敵モードなんてとんでもない。。

 もう…前には行けない。。



 けど本物は…垂水は衰えない。


 先頭に立ってからはずっと

 一周65秒以内のラップを刻み続け…


 ラスト一周の鐘を聞く直前に

 ついに独走に入った。


 駆け引きもペース変化さえもない…

 偶発の入り込む余地もない力技。


 完璧なまでの横綱相撲で

 その力量の差を見せつける。。



 さらに…周回遅れを捕らえる。


 15分前後のベストタイムを持つ

 実力者のみが参加している

 この最終組で三人を周回遅れに…


 これが…本物の走り。。



 一方…偽物のペースは上がらない。


 五位は確保できそうやけど、

 ラスト一周に入ったというのに、

 スパートはかけれらない。。


 すると…



 後ろが来る!?(・o・;)


 ラスト一周まで温存していた

 泉が中距離選手特有の

 圧倒的なスピードで追い上げる。


 そう…

 力を無くした者は追われる。

 抵抗するまでもなく抜かされる。


 つまり今のワシは拾う立場から

 拾われる立場に落ちている。


 泉の鉈のような高速スパートに

 抗う間もなくかわされ…

 さらに後続から追い上げられる。



 けど…忘れてはならない。。


 ワシらは陸上部ではなく駅伝部。

 大事なのは個人の勝負やない。


 拾われる立場になった後にもなお

 崩れず…潰されず…

 一秒でも早く僅かなりとも…


 襷をつなぐこと。。


 その鍛錬を欠かしてはアカン。

 ならばここは精一杯…

 一秒でも一歩でも削り出すこと。。


 

 そしてワシがラスト半周に

 差し掛かろうとする頃…


 先頭がゴールした。


 播州工業・垂水高丸…

 タイムは14分09秒。


 シーズン当初のこの時期に

 目的ありの飛び入り参加にして…


 圧巻の好記録や。。



 二位は報緑のエース・庫川武。

 100m以上も開いた14分30秒。。


 本来はもう少し力のある選手やし

 4500mまで食らいついてたけど…


 ハイペースに潰されるとは

 そういうこと…

 終盤はまるで伸びないもの。


 続く三位は…

 


「……はは。(・v・;)

 やはりお前は恐ろしいな…

 前半でふり切らんと勝てへんで。」 

「…アホぬかせ…(-_-;)

 垂水みたいなバケモン相手に

 まともな勝負なんかできるかい…」


「…けど最後で何人抜いた??

 佐野のスピードを警戒して、

 終盤勝負を避けて正解やったな。。」

「…光栄なこって…(-v-;)

 けどあのペースはムリやで。

 ワシは…落ちたんを拾うただけ…」



 三位は…天下茶屋高校・佐野泉。

 タイムは14分36秒。。

 高校での初レースで自己ベスト。


 集団で自重して力を蓄え…

 落ちてきた選手をごぼう抜き。

 その形を支える驚異のスピードは…


 ラスト一周を59秒でカバーした。

 これもまた…本物。。



 対してワシ…紛い物は…

 完全に泉に置いていかれた。


 …そして最後の直線。。

 余力ゼロの状態で五位争い。


 大学生と報緑と三人で…(;´Д`;)



 …キッツイけど…

 競り合う相手がいるのは幸運や。


 今は偽物であってもせめて…


 最後の一滴までは絞り出すんや。



実際にはこの時期の記録会で

高校生が14分台連発なんて

なかなかありません。


けど…本物が集うと

その限りではないかも。。


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