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086 トラックの格闘技

春先三月の記録会。。


まずは能勢が1500mで先陣を切ります。


「頑張れよ能勢!!」

『能勢先輩…ファイトォ!!』

『…(._.)』


「どうしたんや泉??

 急に応援をやめて隠れたりして…」

『だってあの…

 能勢の隣りにおる報緑の二人…』


「…えっ??報緑のユニフォームおったか??」

『ほれ…あの白地に緑の字の。。』


「たしかにHOURYOKUとは書いとるけど??」

『あいつら…中学の後輩や。(・_・;』



 …たしかに報緑の選手みたいや。。


 でもお馴染みの緑色のユニフォームではなく

 白がベースの地味なデザイン。


 何かが違うと思って聞いてみると…



 報緑に限らず名門の中にはいわゆる

 二軍のユニフォームが存在する学校がある。


 つまり校名に恥じない実力と認められるまでは

 正規のユニフォームは着られない。


 それだけ名門のユニフォームは重いんや。。



 …それと泉や。

 県外ならば知り合いも少ないと思ったけど、

 中学の後輩と再会かいな。


 当時の泉は今とは違ってた。

 彼等とは師弟関係やったらしいし…


 男気溢れる主将やったらしい。


 とても今の姿は見せれんわな。。(-v-メ)

 泉はそそくさとテントの後ろに隠れてしもた。


 …まったく。

 これから能勢のレースが始まんねんぞ。。

 1500mでアドバイスできる中距離走の専門は

 泉だけやのに何しとん。。(`・ω・´)ノ



 けどそんな中で1500m走は始まってしもた。

 でもスタートした第一組は…


 30人以上の大人数。

 しかもノタノタしてる。。


 先頭のゴールタイムは…4分51秒???


 ワシらのアップよりはるかに遅い。

 しかも以降はほとんどが5分台。

 最終ランナーは6分以上もかかってしもた。。


 いくら中学生も含まれる一組目とはいえ、

 およそ陸上選手とは言い難い。。



 こりゃ…5000mも一組目は期待でけんな。。


 1500がこの惨状では5000では

 20分以上もかかるのもおるんやろう。

 ならば周回遅れも二周遅れも当たり前。。


 …そんな状況で記録など出ない。。

 

 でもその場合は浜寺のいう通り

 この場で実績を残して…

 次の機会にその力を示すべきなんやな。。


 ではそんな前座を回避してラスト前…

 力を出しきれる組に入った能勢としては…


 いきなり結果を求められるんやな。。

 


 そんな中で二組目が終わった。。


 一位のタイムは4分39秒。

 さすがに6分台はおらんとはいえ

 5分を切れない者が半分以上もいる始末…



「…なぁ泉…この大会のレベルって。。」

『…たしかにいまいちやなぁ。。

 けどまだ四組あるから。

 これからレベルは上がるんとちゃう??』

 


 その予想は…やっぱり当たった。


 次の三組目のトップは4分28秒。

 ハイレベルの阪神大会でも一次予選は通過できる。

 さらに最下位でも4分台。


 次の四組目では4分21秒まで来た。

 おそらく阪神大会でも準決勝には行ける。

 最下位でも4分46秒。


 いずれも集団でのレースができている。

 この調子なら最後の二組はかなりの成果を

 だせそうや。。



『…ええ感じになってきたな。』

「そうやな泉。この分でペースが推移すれば

 次は能勢の目標通り。。」



 そう。今日の能勢の目標は4分15秒。


 11月の大阪府予選で三キロを8分30秒で

 走るためには、この時期にその半分の距離を

 同じペースで走るのが今大会の意義。。


 各組ごとに5~10秒上がってきているから

 次はちょうど4分15秒前後。


 なにせ能勢は自分でペースを作れないから

 先頭についていくのが目標タイムのペースで

 あるのがベスト。


 その流れが来てるんやけど…


 

「おっ。あれは泉の後輩やないか??」

『…マズイな。能勢がアイツらと同じとは…』


「なんで??なんぼ報緑でも二軍の選手なら

 今の能勢なら勝てるやろうし、

 ペースも作ってもらえるんとちゃう??」

『…そうかもしれんが。。

 この5組目に入ってくるんやから冬の間に

 力をつけた可能性はあるし…』


「…あるし??(・.・;)」

『…あいつ等は<駆け引き>を好むんや。

 特に能勢みたいに走力はあるが揺さぶりを

 知らんヤツは弄ばれるかも。。』



 それは…マズイ。。


 スプリンターの能勢が中距離選手の

 チェンジオブペースに巻き込まれたら、

 一溜まりもない。


 いや…ペースだけではない。。


 短距離競技しか経験がなく…

 あまりにも不器用であるがゆえに、

 マイルリレーでも一走以外は任せられた

 経験のない能勢にとっては…


 オープンレーン自体が初体験や。


 なのに中距離競技はトラックの格闘技。

 ショルダーもエルボーも足掛さえもある。


 もしオープンレーン初体験で、

 老獪な中距離専門家に弄ばれるとしたら…



「泉…何かアドバイスせんでええんか??」

『ムリや。あいつらもう…

 スタートラインに並んでもうた。。』



 <パン!!>

 号砲一発、第五組の選手が走り出した。


 先頭は理想的なペース。

 能勢は二番手から三番手でしっかりと

 前のペースについていく。



 そしてその横と後ろを挟み込むように…

 白いユニフォームが近づいた。


『…マズイな。目ぇ付けられたかも。。』


 泉も警戒する中でレースは進む。


 陸上でもっともペースコントロールが

 難しいとされる1500m走のデビュー戦で

 駆け引き上等の難敵出現。。。



 能勢…潰されるなよ!! 



随分と昔の話ですが、筆者は中学三年の時に

はじめて年齢無制限の記録会に出ました。


そこで高校の選手から鳩尾にキツイ肘打ちを

貰ったのを覚えてます。


幼かった私は動揺してしまって…

執拗に揺さぶって潰してやりました。。


…反省。。

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