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080 折り合えない相矛盾。

天下茶屋の総合タイムを予想したところ、

けっこう期待できる結果が出たはずなのに…


なぜか状況は絶望的なようです。。

「2時間11分台で走れると言うてはんのに…

 それでも都大路に行けん理由が二つもあるんでっか??」


「…というかそれはトラックのタイムからの計算だ。。

 府大会の行われる河川敷の悪路でのロスは

 かなり甘めに計算した数字との前提で考えてくれ。。」

「けど…計算はしたんですやろ??」



 例年なら優勝を狙えるタイムで走れるようになる。。

 そこからさらに頑張ればきっと…


 ワシらにとってはこの上なく希望にあふれた言葉やのに

 それでも勝てない理由が二つもあると言う。

 どういうことなんやろう??



「まず一つ目は…今年の大阪は強豪ぞろいということ。。」

「…西風だけやないんでっか??」


「そうだ。問大北場もんだいほくじょう銅蔭どういん興玉こうぎょく太阪たさか

 …いずれも例年になく選手がそろってる。

 どこも2時間10分をきる能力はあると思う。。」


「それ…ほんまでっか??」

「…さらに西風はここ数年で最強だと思う。。

 去年は独走だった上に天気にも恵まれなかったが、

 もし条件が揃えば2時間7分をきれる…」


「…そんなに強いんでっか??

 ワシらとは…5分近くも差がつくんでっか??」

「ああ。なにせ去年の屈辱を晴らさんと…

 例年にない練習量をこなしているらしいから。。」



 …なんで今年に限って??


 しかもこれは本職のスポーツ記者の分析。。

 嘘偽りではないやろう。。


 けどそれなら…ワシらがもっと頑張ればええだけ。

 もう少しでも記録を上げる方法を探れば…



「でも…これがホンマに限界なんでっか??」

「…限界とまでは言わん。。

 向こう見ずに苛酷な練習をすれば相応の成果はある。

 練習量を増やせば…もう少しはいけるかも。。」


「それなら…西風みたいにもっと練習量を増やせば…」

「実はそこが二つ目の問題なんだ。。」


 …なんでやねん??(; ・`д・´)


 都大路に行けるなら、ワシらはどんなキツ練習でも

 やりとげるつもりやのに…



「つまりもう一つは…故障者をださないこと。。」

「…故障者をださない??」

「ああ。なにせ人数がギリギリだからな。。

 故障者が一人でも出たらその時点でお終いなんだ。」


「…ではケアを怠らなければ…」

「…だがな。それでも練習量とケガの確率は比例する。

 つまりウチは…常に折り合いが必要なんだ。。」



 …そういうことか。。

 七人しかいない今の状態で一人でも故障やスランプが

 出たら…ジ・エンドというわけか。。


 …激しい練習をすればするほど故障率は上がる。。

 …ただでさえ陸上競技はケガが多いのに…

 ウチは元から二名の故障者を抱えてのチーム構成。


 全員が万全なんて至難の業なんやけど…



「せやから千林さんはケガ人を出さへんために…

 あれほど細かい練習メニューを??」


「その通りだ。…そしてその結果…

 もっとも上手くいった場合がその予測なんだ。。

 …本当はもっと厳しく鍛えたい。

 スパルタを課せばもう少しくらいはなんとか…」


「…それやったらワシらはやりまっせ。

 都大路に行けるんやったらどんな厳しくても…」

「しかしそれではきっと誰かが壊れてしまうだろう。

 そうなれば…予選出場さえかなわない。。」


 

 …これは堪らんな。。


 練習量が少なければ都大路に届く確率は下がるけど…

 練習量が多ければ予選出場すらできない確率が上がる。

 …まさに…相矛盾やないか。


 そしてその相矛盾する二つを折り合った最良の選択が…

 今のメニューであり予想タイムやけど…

 そのタイムで都大路に届く確率は…ゼロに等しいんや。



「だがわかっているとは思うがな…

 今のメニューでも故障者が出ない保証はない。

 むしろ一人も壊れなければ奇跡と思えるくらいだ。」

「…そんなギリギリでっか??」


「ああ…勝ち運とかそういうレベルではない。

 漫画か何かの世界でもなければ不可能に近いよ。。」

「…たしかに漫画とかなら…

 九人の野球部が甲子園に行く話とかありますけど…」


「…おいおい。それには非現実的な選手が必要だぞ。」

「でもウチには凄いエースが二人もおりまっせ。」


「だが…駅伝は毛色が違うんだ。。

 一人のエースが勝敗を決める競技とはワケが違う。。」

「…それは…たしかに。。」



「駅伝はエース級が二~三人いる程度では通用しない。

 エース以外が並以下では…絶対に勝てない。。」

「…弱い区間の力量こそが大事でっから…」


「つまり人数ギリギリの寄せ集めで都大路というのは…

 甲子園や国立…花園よりも難しいと思う。。」

「……(´゜д゜`)」



 …そんなに…厳しいんか。。


 しかもこれは現役のスポーツ記者の意見。

 番狂わせの少ない駅伝競技に対する…


 ウソ偽りない現実なんや。。



「じゃぁどうすればええんでっか!?

 どうすれば勝ち目が生まれるんでっか??」

「それは…故障者が出た場合に備えるしかないよ。」


「それってつまり…」

「ああ。控え選手は絶対に必要だ。。

 今のエース級を穴埋めできる選手が最低あと一人…」

「…控え選手…ですか。。」



 …やはりそれしかないんやな。。


 そもそもが女子を含む七人ちょうどの寄せ集め…

 都大路という目標自体が無理なんかもしれん。


 最低あと一人頼れる仲間を増やせ。。

 コーチとしては当然の要求。。



 …けどどうすればいい??

 新入生が入ってくる望みはない。


 今いる在校生に頼るにしても…

 以前に部員募集したこともあったけど…


 練習が厳しくてみんな逃げ帰ったやないか。。



 …では甘くして部員を再募集する??

 それではやはり都大路に届かないのは必然。。



 …これもまた…折り合えない相矛盾やから。。




厳しくなければ強くはなれない。

けど…厳しすぎれば壊れてしまう。


おそらくどの世界もそうなんでしょうね。。

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