076 元駅伝選手・千林旭の場合
場末の駅伝部の取材にやってきた
千林記者の前に現れたのは…
播州工業の元エースランナー。。
「…なるほど。それで放出くんは天下茶屋へ…」
「はい。本当に偶然が重なった次第で…」
「…信じられないよ。奇跡としか言いようが…」
「たしかに。誰かさんの都合のいい思惑は感じますね。。」
まぁその…都合のいい思惑についてはさておき…
千林さんは驚いてちょっと震えてはる。。
だって寄せ集めの新設駅伝部が都大路を目指す時点で
あり得ないことやのに…
本音ではムリやと決めつけてたのに…
播州工業の二年生エースとして何度も取材をしてきた
あの放出京喬が加わったとなると、
これって急に現実味を帯びてきたんやから。
…とはいえあの一件を…
…スポーツ専門の記者が知らんはずない。。
「ところで膝の具合はどうなんだい??」
「…思ってたほどではありません。。
だいたい半分程度の力でなら走れるってところです。」
「…タイムは計ってるのかい??」
「5キロを15分ぐらいならばなんとか…」
「…なるほど…それが限界か。。」
「…えぇ…おそらくもうこれ以上は。。」
おいおい。そのタイムで半分って…
絶望的な顔して限界って…
全国のランナーが怒るか泣くかしとるど。(=゜ω゜)ノ
でも実際、13分台のベストタイムを持つ放出にとっては
これが嘘偽りないの実感なんや。。
ホンマに桁違いの大物が入ってきたモンや。
とはいえ半分の力でしか走れないランナーに花の一区を
任せなあかんほどにウチは層が薄い。
選手は7名丁度。そのうち女子が1名…いや2名か??
さらにその多くがケガ人かドクターストップ。。
とにかく…ギリギリ以下の選手層。。
「それはそうと千林さんはなぜこの学校の取材に??」
「いや…それは…まぁ色々とあってね…」
『そうそう。色々とありましてねぇ。(*´・v・`*)』
「ちょっと佐野くん。勝手に入ってこないで。。
それは口外無用って約束だろう??」
『たしかに。…校外無用って言ってましたわな。』
「名前の読み間違えに続いて…
今度は漢字が違う!!(; ・`д・´)」
…まぁそういうわけで…
「はぁはっははは。それは気の毒でしたね。。」
『コラ放出!!誰が気の毒なんや!?(=゜o゜)ノ
乙女が辱められいうのに笑い転げよって。。』
「…ひどいよ佐野くん。。(:_;)
それに放出くんも笑いすぎ!!(=゜ω゜)ノ」
「…誰が乙女だよ。。千林さんもやらかしたし。。
どっちも被害者ですわ…あぁ腹いてぇ…(;^∀^);」
とりあえず放出はまだ笑ってるんやけど…
実際には笑える状況やないんや。
なんとか突破口はないんやろうか??
と思ってたら放出が意外なことを言いだした。
「…けど、そういうことなら簡単だろ??
千林さんに監督をお願いしたらいいじゃない。」
「えっ??それはムリだよ。。」
「少しならいいでしょ。マラソンシーズンはあと少しだし…
ロードが専門の千林さんは夏場はヒマでしょ??」
『ちょっと待ちぃな放出。この人がそんなんできんの??』
「おいおい佐野。できるも何も最適任者だ。
千林さんは報緑OBで都大路を経験しているし…
たしか箱根にも出てるはずだぞ。」
『そういえばそんなこと言ってたような…(・_・;)』
「……ああ。その通りだよ。。(-_-;)」
…ウソやろ。千林さんって…
…都大路と箱根の経験者??
ならばトレーニングやメンテナンスにも精通してるはず。
そんな名選手が監督なら…もしかしたら…
「お誘いは嬉しいけど…やはりそれはムリだ。。」
「なんで??ワシからもお願いしますわ。」
「…だってボクは会社員だぞ。。
外回りとはいえ、勤務時間中に指導なんてできないよ。」
「それやったら休みの日とかだけでも…」
「それもムリだ。…だって記者が特定の学校に肩入れしたら
公正な記事を書けなくなるからな。。」
「……(´・ω・`)」
…そうやったな。。
この千林旭さんは…ウソをつけない公正な記者。。
それが思いがけない誤報をして評判を落としてるのに…
不正を疑われること…なるだけ避けたいはず。
…けどこんな時に
…ややこしいヤツが帰って来たんや…
『…ちょっと。何の話してんの??』
「わっ!!…難波さん…」
千林さん。。怯えてはる。。
…ムリもない。
正月にいきなりグーで殴られたんやから…
「それよりみなみ。どこ行ってた??
というかいつの間に戻ってきたんや??」
『いや…今日は相談に行くって約束やったのに…』
「約束って、またどっかの駅伝部に行ってたん??」
『それが途中まで行ったとこで電話があってな…
監督さんが急用でドタキャンされたんや。。
しかも手土産を買うたのに渡せんかったってわけ。』
「あのさ難波さん。…その…どこの学校に行ってたの??」
『いや…その前に千林さんもこれ食べてぇな。
手土産を余らせてもアカンから。。』
「それって西宮名物の…ササエのおはぎだよね??」
『うん。監督さんの好物らしくて…』
「じゃぁまさか…今日行ってた学校って…」
『…せやな。アンタが報緑OBとは好都合やわな。。』
「ちょっと…それどういう意味??」
『来週にはまた報緑に行くんやけど例のこと…
名谷監督にどう話しとこっかなぁ??』
「…ご…ごめんなさいぃ!!(/;Д;)/」
おいおい。(-v-メ)
また口にあんこ付けてから…
こんなもん…完全に脅迫やないか。。
寄せ集め軍団の監督候補は
やっぱりはみ出し者。
かくしてその力量は??




