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072 足を引っ張る存在には…

バレンタインも終わり二月中旬…

駅伝部の面々はまた走り始めましたが…


『ほれ!!ラスト一周やで!!』

「ちっ…難波のヤツ相変わらず厳しいで…」

『もっとペースを上げェや!!』

「…ひぃ…もう限界やぁ!!」



 …そろそろ二月も終わり。


 もうすぐ暖かい春が来るというのに…

 みんな相変わらず寒い泣きごとだらけや。。


 けど少しずつ地力がついてきたのか…

 名門と同じ練習をこなせるようになってきた。

 泉のチョコのおかげもあるんやろうけど…

 いずれにしろええ傾向やで。


 …ただその割にはみんな元気がない。

 というか疲れがたまってるみたいなんや。


 驚異的やった赤阪の成長も止まってしまい…

 いつも陽気な能勢も口数が減った。

 浜寺は相変わらずやつれた顔してるし…


 みんな…大丈夫なんやろうか??



「なぁ赤阪…お前は相変わらず夜も走ってるのか??」

「うん。練習後にできる範囲だけどね。

 あと能勢も同じことをしてるって聞いたよ。。」

「能勢もか。…あいつも頑張ってるんやな…」


「…だってボクらは練習メニューをこなせてないからね。

 その分は頑張って補わないと…追いつけないよ。」

「追いつくって誰に??」

「…陸上界の全員にさ。だって都大路に行くには…

 ボクらに一線で戦う力が必要なんだろう??」



 …それは当然や。

 <そんなことはない>なんて言えるわけがない。


 仮に六人が好走を重ねて貯金を作っても…

 一人のブレーキが全てを食い潰す。


 仮に六人のオリンピック選手を揃えても…

 残る一人が鈍足では負けるかもしれない。


 …駅伝とはそういう競技なんやから。


 ましてワシらは七人ちょうどの駅伝部。

 一人残らず全員が戦える選手である必要がある。

 その足を引っ張る存在にならんため…みんな必死なんや。


 …とはいえちょっと無理をしすぎや。

 そのひずみは…翌週には表面に出てくるようになった。



「なぁ赤阪、浜寺は今日も学校を休んだんか??」

「…うん。ちょっとこじらせたみたい。。」


 …これで三日目。。


 もう季節の変わり目やから風邪をひくのわかるけど…

 タフネスが売り物の浜寺が三日も寝込んどる。

 …やはり減量の影響やろうか??

 そう言えば最近、顔色も悪かったもんな…



「でも心配しても仕方ないよ。

 ボクらだけでも頑張るしかないさ。」

「それは…そうなんやけどな…」


 …頑張るしかないのは分かる。

 けど…今の一番の心配はそこなんや。


 人数不足の駅伝部では故障や病気は許されない。

 体調不良もスランプも文字通り命取り。

 頑張りすぎるのも考え物なんや。


 …せやから今日の練習はペース走だけに抑えた。

 とはいえその距離はおよそ20キロ。

 軽目と言うてもかなり体力は消耗するもんやから…


 …けっこう歪も出るもんなんや。。



「…おい、ちょっと待ってくれ!!」

「なんや放出…急にそんな大きい声を…」

「なぁ能勢、お前…どこかを痛めてないか??」


「えっ…何でわかるの??」

「だって明らかに体軸が曲がってるやないか!!

 というか…いつからどこを痛めてる!?」


「…左の足首…一昨日の夜ごろから…」

「じゃあなんで黙っとった!!?」


「いや…心配かけたくなかったから…つい…」

「どアホ!!それで重症化したらどうするんや!!?」



 放出は…普段は東京弁(標準語のこと)のくせに

 今は関西弁丸出しで本気で怒ってる。


 …ムリもないわな。

 だって誰より故障の恐ろしさを知ってるから。。



 …それでフォームの乱れに注視するクセがついて… 

 その観察眼は相当に鍛えられたらしいんや。

 実際、当時の播工に故障者はほとんどいなかったらしい。


 きっと…何人もの故障を未然に防いだんやろな…


 …なのに…自分の乱れだけは見ることができず…

 はじめて膝に痛みを感じた時には既に手遅れって…

 …まったく…皮肉すぎるやろ!!


 …それで能勢はバスで帰ることになったんやけど…



「なぁ放出…他の連中は大丈夫なんか??」

「俺は後からみんなを見てたけど…大丈夫だと思うよ。

 …ただ集団から遅れた者は分からんけどな。。」


 …そう言えば今日は誰か脱落したんかな??

 以前は最後までついて来れんヤツの方が多かったけど、

 最近では集団から遅れるモンは少なかったのに…



『…赤阪がおらんのとちゃうか??』

「おかしいな…最近は脱落なんてなかったのに…」

「ああ。赤阪なら阿倍野が遅れたのに付き合ったよ。」


『…えっ??私、赤阪先輩に会ってませんよ。。』

「あれ??遥いつの間に??」

『いつの間にって…かなり前に追いつきましたけど…』

「えっ…じゃぁ赤阪は…」



 …なんか…ものすごく嫌な予感がする…

 ワシは全速力でコースを戻ったんや。


 …もし…このところのムリが祟ったとすれば…



 予知能力もなんもない勘の鈍いワシやけど…


 なぜかこういう…虫の知らせだけ当たるんや!!





成し遂げるためにはムリは当然。。

けど無理が祟ると…


赤阪…大丈夫か??

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