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ベルッセンの鬼(仮)  作者: あかいひと
プロローグ
5/33

異能

部屋に戻ったおれは、旅の疲れか着替えもせずベッドの上でうとうとしていた。

ベッドは天蓋付のごてごてしているものだったが、疲れには勝てずあまり気にならなかった。

うとうとしていると、ドアが控えめにノックされた。


「どうぞ、開いていますよ」


使用人が来たと思った俺は、体を起こしてドアに向かってそういった。

しかし、部屋に入ってきたのは銀髪の女の子だった。もちろん後ろにはおかっぱのヴラド君もついてきていた。


「二人ともいらっしゃい」


自然と笑顔になるとそういって二人を向かいいれた。

そのままの流れでヴラドの頭をなでると、困ったような顔で見上げてきた。

困り顔もかわいいのでそのまま撫で続けた。

そのまま撫で続けているわけにもいかなかったので、名残惜しいが二人をソファーに座らせて、俺は向かいに座ることにした。


「えっと二人ともどうしたの?」

「と…突然お邪魔してごめんなさい。同年代の鬼族の人って初めで…それできになって」


エマがおずおずと口を開く。


(あーもーかわいいなーこの子たち、鬼族の子供ってみんなこんなのなのかなー?)


「そうなの?俺の前にも三立の儀に来た人とかいなかったの?」


三立の儀の終の儀式は、本家以外の場所で行うことはできない。

そのために、すべての鬼族は15歳になると本家に来るというシステムが出来上がっている。

俺が、初めてこの世界に来た時の洗礼の儀は、場所が5か所ほどあり、ラドヴィラ家もそれを持つ有力な分家としてある程度の力を持っている。

そして終の儀を行える場所が1つということで本家が一番力を持っているというシステムだとアリダはいっていた。


「いえ、いままでロアンさん以外に三立の儀で来た人はみたことないです」


エマがいうことは、俺が三立の儀を受けるまでの十数年俺以外に鬼族に子供が生まれていないということだろう。


「ふーん、そっか。同年代は俺たちぐらいなのか。」


(まぁ俺は21だけどねー。100オーバーから見れば10歳ぐらい誤差だろうな。この子たちにとっては8歳差か…俺の体まだ15ですから)


「それじゃあ二人は、いつもどんなことしているの?」


これだけ子どもが少なければ、これといった遊びがないんじゃないだろうかと俺は思う。


「えっと、普段はお庭を散歩したり、花を摘んだりしています」

「そっか。んーじゃあ、お兄ちゃんが遊びを教えてあげよう」


ヴラドが顔をぱぁーっと輝いた。

遊びという言葉にあこがれがあるのだろう、貧困な子供生活にかわいそうになる。

俺がこのくらいの頃は、毎日散々友達と遊び倒していた気がする。

その日から俺が本家から帰るまで毎晩のように、エマとヴラドに日本にいたころの遊びである『鬼ごっこ』や『かくれんぼ』など俺の知る限りを教えた。

思いのほか好評である。








俺は、いま屋敷の中庭にある小さな教会の前に立っている。

もちろん三立の儀を終わらすためにここにきている。

ここにはウィリアムが案内してきてくれた。

終の儀を案内してくれるのはウィリアムのようだ。

教会の中に入ると普通の教会とは違って休憩室のような部屋があり、奥には重々しい扉があった。

ウィリアムの説明によると、あの扉の向こう側で終の儀をするらしい。


(ふふふ、とうとう俺にも特殊能力が手に入るわけだ!ここは異世界トリップ特有の超絶チートしかないだろう。俺は強くてニューゲームとか大好きです)


「では、ロアン様。詳しい説明は三立の儀が終了してからさせていただきます。あの扉から中に入り、いくつかある異能の中から一つ選んでください」

「一つだけなのですか?」

「はい、三立の儀直後でしたら、どんなに良い異能があろうと一つまでしか異能はおぼえられません。それ以後の成長次第では覚えられますが、その時はまたこちらにいらしていただくことになります」

「そうですか、わかりました。いってきます」


そういうと、俺は扉を開けて中に入って行った。期待で手が若干震えていたのはいうまでもない。


扉の中に入ると、銅像が立っていた。ウィリアムの説明によると、鬼族の祖先の像であるらしい。その足元にはいくつかの器があり、その中に3つほどぼんやりと光る球状のものが置いてあった。


(あーあれが選ぶ異能ってやつかな?)


 近寄って一番左の玉を手に取ってみた。玉を調べていると光がかすかに増して文字が浮かび上がった。



『薄物細皮』


(おーなんか、思春期特有のあれみたいな名前が出てきた。どんな能力なのかな)


『ジャガイモの皮を薄く切れる能力』


「えっぷ。なにこれ…ジャガイモとか普通に包丁でむけっから!ピラーとかいらねーから!一人暮らしの大学生なめんなよ!しかもなんでジャガイモ限定なんだよ!大根のかつらむきとかそっちの方が大事だろうが!」


興奮した俺は全力で玉をもとの位置にたたきかえした。

深呼吸すると少し落ち着きを取り戻した俺は、頭を振りながら次の玉をみてみる。



『陰陽転』


(やばい、これはあたりじゃないの?なんかつよそうよ?)


わくわくしながら説明の続きを読んでみる。


『自分の性別を変える』


「どこのエロゲーだよ!ふざけんな、女の子になって男とにゃんにゃんなんてしねーよ!」


ブチ切れた俺は玉をそのまま地面にたたきつけた。玉は地面で跳ねるとそのままごろごろと転がっていく。


(お…おかしくないか。最初がお料理便利スキルかと思ったら次がエロゲスキルって、最後の玉がどんなスキルかわかんないけどもう、あんまり期待できないな…最後が鼻に舌べろが届くとかだったらどうしよう…)


 俺は頭を抱えてうずくまった。眼の端にさっきの玉がこれ見よがしに光っている。いらっとしたがとりあえず元の位置に戻した。


(いや、とりあえず『薄物細皮』はないとしても『陰陽転』は変装としては優秀なのかもしれない…まぁ最後のがゴミスキルだったらこれかなぁ…)


すでにげんなりとしていた俺は、あまり期待しないで最後の玉を手に取った。


『隠匿:人目に触れないように隠しておく』


「うん、それただの言葉の説明だよね。能力の説明じゃないよね」


(あーもうパッとしねえ。なんていうか衛星兵器とか地割れとか火山噴火とかそういうチーとスキルじゃないの!?なにこの地味なのは!俺の期待を返せ!)


とりあえず、最後の玉を元に戻しどちらの能力をとるかなやむ。


(『陰陽転』か『隠匿』か…性転換とか、自分のものもんでもたのしくないしなぁ。どうせもむなら教官みたいな絶壁だろうが女の子のがいい!かといって隠匿とかなにかを隠すスキルだろうけど、なににつかうの?手品?)


 俺は二つの玉の前で一時間ほどうなっていた。微妙すぎてどちらか選べない。そうして唸っていてもしかたないので『隠匿』選ぶ。


ウィリアムに教えてもらったように額に玉をかざした。すると、玉の輪郭がぼやけて手からふっと重さが消えていった。これでスキル習得はできたはずだ。


『隠匿:対象を観測者の無意識による認識を妨害する』


ふっと、能力の詳しい説明が頭に流れ込む。


(ん?対象?これってなんでもいいのかな?大きさとかしていないけど。あと観測者っていうと人間とかの生物になるのかな?)


試しにポケットの中にあったハンカチにスキルをかけてみる。体から何かがにじみ出る感覚があり、ハンカチに効果が表れていることを理解した。


(うーん。隠匿がかかっているのは分かるけど、違いが判らん)


そこには、全く変化のないハンカチがあった。


(まっウィリアムさんで試してみるかー)


そう思った俺は、部屋を出た。ウィリアムは俺を見送った位置から全く移動せずに待っていた。


「お疲れ様です、ロアン様」


こちらへどうぞと促してくる。俺はハンカチをウィリアムの前でひらひらとさせながらそれに従った。


「ハンカチをどうされましたか?」


少し目を細めたウィリアムに普通に聞かれてしまった。


(全然効果ないじゃないですかー。やだー)


「いえ・・・なんでもないです」


半泣きになりながら、ハンカチをしまった。


「そうですか。ではご説明させていただきます。ただ今をもちまして、三立の儀はすべて終了しました。おめでとうございます。以後、一人前の鬼族としての節度を守っていただくことを期待しております。それでは、こちらの台に手を載せていただけますか」


壁のそばに台座があり、台座にはやや大きめな人間の手形がある。俺の手も人並みの大きさのはずだがそれでも一回り大きい。俺が手形に手をはめると、壁に文字が浮かび上がった。




名前 ロアンダール・ラドヴィラ

年齢 21

種族 鬼族

異能 隠匿




(おーなんかパラメーターっぽいのが出た。21歳かーあっちの年齢が適用か。でもなんかさみしいステータスだな。性癖とか洗いざらい表示されても困るっちゃ困るけどさ)


 同じく壁をみていたウィリアムが驚いた顔をして固まっている。


「ウィリアムさんどうしたの?」


ウィリアムははっとした顔を一瞬だけしていつもの執事フェイスにもどった。


「申し訳ありません。ではこの表示の説明をさせていただきます。まずお名前はよろしいですね。次に年齢になりますが、これは実年齢ではなく、魂の年齢を表すといわれております。」

「魂?」

「ええ、そうです。この場合精神と言い表してもいいでしょう」


(あー、精神年齢ね。なるほどなら21歳だわ。15ではないね。だから驚いていたのかな?)


「通常の場合ですと、ここは三立の儀を受けた年齢である15前後となっているのですが、ロアン様は早熟なのですね。21とはさすはラドヴィラ家のご子息です。さらに種族と異能ですが種族はそのままですね。異能はただ今ロアン様が手に入れたものになっております。」


(あー、ここで鬼族全員の異能をチェックしているってのもあるのか。なんか地味な支配だな)


「この中で一番重要になる項目が年齢となります」

「年齢?なぜ?」

「年齢の高さが固有技能の習得の可否にかかわってくるのです。1つ目は三立の儀を行えば習得できますが、2つめはこの年齢が20に達したとき、そして3つ目はこれが60に達したとき、4つ目が100に達した時といわれています。そのためロアン様はこれから2つめの異能習得もできますがいかがいたしますか?」


(2つ目か…今行ってさっきの二つから選ぶとかだったら目も当てられないな…日を改めた方がいいかねー。焦る乞食はもらいが少ないっていうしね)


「いや、今日はやめておこう。あまりに多くのことをやりすぎても身につかないよ」


俺は、適当なことを言って辞退した。正直、ジャガイモと性転換はいらんわ。


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