ある日クローゼットのなかフェアリーリングに出会った
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時代を感じる洋館風の邸宅、玄関先には立派な円形の噴水、邸宅の両側には手入れの行き届いたバラ園、
更に邸宅の裏は広大な芝生の庭が広がっており、いかにもすてきなお嬢様が住んでいそうな館ーーー
「ガッシャーン!」
窓ガラスが割れる音が邸宅に響いた。
「ごめんなさーい!」
庭で1人サッカーをしていると、うっかりボールを蹴りそこねて、邸宅の1階の応接室の窓ガラスにボールが当たり、派手にガラスが割れたのだった。
長い髪を左右それぞれ輪っかにして結ったヘアスタイルの女の子が割れた窓ガラスに近づいていった。
「今月で割ったの何枚目だっけ…」
ひなたは指折りしながら、割れて落ちた窓ガラスを見つめた。
やばいな今晩、お父さんからマジ説教パターンだ。
「ひなたお嬢様ー!お怪我はありませんでしたか?」
邸宅の中からハウスメイド達が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫だよ。窓ガラスを割ってごめんなさい。みんな怪我しなかった?」
「皆、大丈夫でございますよ」
良かった、誰も怪我なくて。それは不幸中の幸いかな。
「私共が片付けますので、ひなたお嬢様は近づいたりなさらないようにされて下さいね」
邸宅の応接室の中で割れたガラスを片付けながら、ハウスメイドがひなたに声をかけてきた。
「ありがとう」
ひなたはハウスメイドに聞こえるように言うと、足下にあったボールを手にとり玄関から邸宅へ入っていった。玄関のエントランスの上にはクラシックな作りのシャンデリアが飾られ、左右から弓のように伸びる2階までの階段には濃いグリーンの絨毯が敷いてある。
2階のドアが開く音がした。
あっ、お母さんがくるかも。
奥の方からショートボブヘアに可愛らしく整った顔立ちの女性が出てきた。
やっぱりお母さんだ。
2階から降りてきて、ひなたの前に来ると、目を合わせて困ったように微笑み、毎回恒例のセリフを口にした。
「ひなたってば、今月で窓ガラス割ったの5枚目よ。ひなたが元気なのはとっても嬉しいんだけどね。蓬介さん、今夜はさすがに説教するわよ」
毎回恒例なのでわかってはいたが、ひなたにはとんでもなく恐ろしいセリフだった。
ひなたはがっくりとうなだれた。
「お母さん、わかっているんだよぅ」
お父さんの説教めちゃくちゃ長いんだもん。もう考えただけで疲れちゃう。
「先に蓬介さんにごめんなさいのお手紙でも書いて机の上に置いておきましょうね。お母さんが上手に蓬介さんに言っておくから。ね、そうしましょ、ひなた」
そして毎回この恒例のセリフーー
「お母さん、ありがとう。今から書いておくね」
お母さんは、いつも優しい。私の味方だ。
ひなたはお母さんにギュッと抱きつくと、すんとお母さんの匂いを嗅いだ。
安心する匂いーー。
お母さんから元気をもらうと部屋に戻って行った。
部屋に戻ると、ひなたは白地に小さい花柄の印刷がされた便箋を取り出し、これまた毎回恒例の文をさらさらと書くと便箋を折りたたみ、封筒にしまうと手紙を持って、お父さんの書斎の机を目指した。
書斎は1階の東側のいちばん奥の部屋になっていて、なかには沢山の古美術品が置かれている。
それがいつの時代のものなのか、どこの国のものなのかもわからないものまで置いてあり、どこかの国のお面なんかは、ひなたをにらんでいるように見えるからおっかなくて、毎回毎回、よし、入るぞ!と気合いを入れて入るのだ。
ひなたはふうっと息を吸って吐き出すと、お父さんの部屋のドアノブを回し、そおーっと開けた。
ドアを開けると、ぷうんと少しだけ異国の匂いがする。
その匂いにちょっと鼻が慣れたかなと感じ始めた頃、部屋の奥のクローゼットからブゥーン、ブゥーンと
スマホのバイブ音みたいな音が聞こえてきた。
お父さん、スマホ忘れていったのかなぁ。
2畳ほどの幅のあるクローゼットの扉を開けるとーー




