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EX2.ゼネバース皇国の勇者達②

右の扉に入ると兵士の人に案内されて部屋に入る。

中には紬ちゃんと芽衣が居た。


先に右の扉に入った藤井先生や小田切くんの姿はなくて少し安心した。

藤井先生の『パパ活』はすぐに受け入れられない。

それに小田切くんはクラスの中心人物で頼れるカリスマ的存在だが楽観的なところがあるので命を預けるのは少し不安なところがあった。

信頼ができるのは生徒思いの紬ちゃんとあんまり話したことないけど永田くんと久米くんくらいだ。


私に気付いた芽衣が近づいてきた。

「咲!!一緒でよかったー」

「大丈夫だった?」

「うん。紬ちゃんが居る所に来れたし、作戦成功だね」

「まあね。色々バレちゃったけどね……」

私は裏アカがバレたことを思い出して少し凹んだ。


「あっ。私がコスプレしてることバレたんだった……」

芽衣も長年秘密にしていたことが公になって落ち込んでいた。


芽衣は中学の時にコスプレにハマり、イベントに行ったり、SNS投稿などをしていた。

私も芽衣の付き添いで何回かイベントに行ったことがあった。

高校に進学する直前、芽衣のコスプレ投稿がプチバズりした。

それが原因で身バレ防止のために前髪を伸ばして眼鏡をかけて目立たないように生活していた。


「私は芽衣にも話してない秘密がバレたよ」

「え?私に秘密にしてた事なんてあったの?」

「うん……。私のスキル『裏アカ委員長』だって」

「裏アカって不満とかよく書いていたやつ?」

芽衣は首を傾げていた。


「実はもう1つあるの」

「アカウント?」

「うん」

私は芽衣にもう1つのアカウントの話をした。


「はぁー。何してるの?ネットに投稿したものは一生残るんだよ?」

「はい。ごめんなさい」

「私と親友ならそういうのよくわかるでしょ?」

「はい。ごめんなさい」

芽衣は自身がネットに写真を投稿して後悔することもあったせいか、ネットリテラシーについては厳しかった。


芽衣の説教を受けていると、紬ちゃんが近づいてきた。

「2人共、大丈夫?」

「はい。色々バレたくないことがバレちゃって……」

「私もよー」

紬ちゃんは顔を押さえてしゃがみこんでしまった。


「え?紬ちゃんのスキルでおかしい事ありました?」

「『癒やしの総長』よ?なんで総長が入ってるのよー」

「総長?何がおかしいんです?偉い人とかまとめる人みたいなことじゃないんですか?」

芽衣がそう言うと紬ちゃんは顔をあげた。


「そ、そう!そうよ」

「紬ちゃん?もしかしてそう言う意味じゃないんですか?」

「え、あっ!」

「まさか総長って暴走族とかの総長なんですか?」

「あーーー!」

私は絶対あり得ないと思いながら聞いてみたんだけど、紬ちゃんはまた顔を伏せてしゃがみこんでしまった。


「え?紬ちゃんって元暴走族なの?」

「違う!違うのよ。地元の治安が悪かったの!絡んできた相手を倒してたら、勝手に舎弟を名乗る人が増えちゃったの!!」

「それで総長?」

「ちょっと気分がよくて調子乗ってた時期はあったけど、決して暴走族じゃないの!」

紬ちゃんの顔が真っ赤になってた。


「こんなかわいい総長とかアニメみたい。紬ちゃん!特攻服とか着てたの?」

アニメが大好きな芽衣は目を輝かせていた。


「ちょっとだけだから。本当に乗せられて着ちゃったことがあるだけだから!」

紬ちゃんはまた顔を伏せてしまった。

紬ちゃんが生徒思いの理由が何となくわかってしまった。


紬ちゃんを慰めていると、部屋の扉が開いた。

入ってきたのは霧崎さんだった。

霧崎さんはクールな見た目な美人さん。

無口なのであんまり話したことはないけど、悪い子ではないと思う。


「霧崎さん。大丈夫だった?」

「あっ!えーっと、うん。大丈夫です」

霧崎さんは色白で本当に美人だった。


「どんなスキルだったの?」

「あのー。………」

霧崎さんの声が小さくて聞こえなかった。


「ごめんね。もう1回言って」

そう言うと霧崎さんはさっきよりちょっとだけボリュームを上げて答えた。

「『寂しがりやの雪女』です」

霧崎さんの色白の肌がうっすら赤くなっていた。


「霧崎さんって寂しがりやなの?」

芽衣が聞くと、ますます顔が赤く染まっていく。


「わ、わたし人見知りで……。ほ、本当はいろんな人と仲良くしたかったんだけど3年になっても誰にも声を掛けられなくて……」

「そうなんだ。じゃあ私達が友達になるよ」

「え?い、いいんですか?」

「うん!じゃあまずは隠してたコスプレの趣味がみんなにばれて落ち込んでいる私を慰めてもらおうかな」

「え?え?」

芽衣は霧崎さんの手を引き、紬ちゃんの元へ連れて行った。

霧崎さんは芽衣のペースに飲み込まれてずっとあたふたしていた。


結構時間が経ち、再び部屋の扉が開く。

次に入ってきたのは永田くんだった。

そして永田くんの後ろには神山凪さんがいた。


「あれ?2人一緒に?」

「ああ」

「そうなんだ」


永田くんと神山さんは幼馴染だったはず。

神山さんも無口で、喋った姿を見たことなかった。

いつも永田くんが神山さんのフォローをしていた。

永田くんが異様な雰囲気をしているので、神山さんは話さなくてもいじめられたりすることはなかった。


永田くんは入るなり部屋を見渡した。

「右の扉に入ったのはもっといたはずだけど」

「たぶん別の部屋に案内されたんじゃないかな」

「……そうか」

永田くんは何かを考え事をしていた。


「どうしたの?」

「いや大丈夫だ」

永田くんはそう言うが、神山さんは顔が青ざめて震えている。


「神山さんの体調が心配なんだけど」

「凪。座って休むか?」

神山さんは頷いた。

永田くんは神山さんを連れてソファーに座った。


私は永田くんと神山さんに話しかけようとすると、部屋の扉が開いた。

入ってきたのはこの部屋に案内してくれた兵士だった。


「勇者のみなさん。これから生活をしていただく部屋にご案内いたします。私についてきてください」

兵士について行こうとすると永田くんが口を開いた。


「他のみんなとは別なのか?」

「はい。エクストラスキルに応じて配属先が異なりますのでバラバラに生活していただく必要がございます」

「ということはここの6人は同じ配属先?」

「その通りです。詳しい説明は明日行いますので、ご移動をお願いします」

「わかった」


永田くんは立ち上がり、神山さんを支えながら兵士に付いて行く。

私達もそれに続いた。




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