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37.いざペタロドへ

出発の日。

牧場近くに集合した。


「ここらへんに外に出る洞窟があるの?」

「いや、ないと思うけど」

俺達はなぜこの集合場所になったのか理解していなかった。


少しすると、ベアトリスさんとジル師匠がやってきた。

後ろにはゲーダとアガン達が付いてきていた。


「待たせたのじゃ」

「いえ。ところでなんでここに集合なんですか?」

「いつも使ってる洞窟はこのボスロックフロッグが通れんじゃろ」

言われてみればアガン達は通れそうだが、ゲーダは無理だ。


「なので特別なルートを使うのじゃ」

「特別な?」

「ああ。そうじゃ。街のほとんどの人が知らない道じゃ」

ベアトリスさんはそういうと壁に手を触れた。


ゴゴゴゴゴゴゴ!

大きな音が鳴り響き、壁が扉のように開いていった。


「ベアトリスさん」

「なんじゃ?」

「本当に街のほとんどの人が知らないんですか?」

「ん?どういうことじゃ?」

どう考えても街の反対側からでもわかるレベルで壁がドアのように開いていた。


「いや……」

俺が言うか迷っているとジル師匠が口を開いた。

「ギルドマスターにしか開けられないんだ。知ってても知らなくても関係ない」

「そ、そうですね」

「早く出発するぞ」

「は、はい」


俺達はジル師匠に付いて行き、街の外へと向かった。


「頑張って鍛えてくるのじゃよ!」

ベアトリスさんは手を振り、見送ってくれた。


▽ ▽ 


街の外に出ると、扉は自然と閉まった。


「よし。みんな準備はいいか?」

「「「「はい!」」」」

「ペタロドまでは10日程かかる」

「レムチャとあんまり変わらない距離なんですか?」

「いや、ゲーダ達に乗るからそれくらいで到着するだけだ。ウマなら15日以上はかかる」

俺の想像以上にゲーダ達は速いようだ。


「じゃあ、みんな乗るぞ」

「「「「え?」」」」

「ジルさん。山を降ってからじゃないんですか?」

珍しくオータルが動揺している。


「大丈夫だ。さあ乗るぞ」

俺はジル師匠に言われた通り、アガンに跨った。


「アガン、よろしくね。」

ゲコゲコ!

アガンもだいぶ俺に懐いてくれたみたいだ。


「出発!」

ジル師匠が叫ぶと、目の前にいたゲーダが大きく跳び上がった。

「「「「え!?」」」」


驚いている俺達を気にもせず、アガン達も同じように跳び上がった。

「「「「あああああああああ!」」」」


山を跳んで下るなんて誰が想像できたか。

「ああああああああああ!」

元の世界のどのジェットコースターよりも恐怖を感じた。


「これって、着地大丈夫なの?え?え?ええ?」

身体が浮き上がりそうになったが、アガンの舌が俺の身体に巻き付いていた。

「み、みんなは平気か?」


俺はみんなの様子を確認した。

メアとミランはグタっとしているから、たぶん気絶している。

オータルは笑顔で腕を振り回して楽しんでいた。


徐々に地面が近づいてくる。

まさか1回のジャンプで山を下ることになるとは。


だが俺は知っている。

着地の瞬間に尻に衝撃が走ることを。

俺は地面に着地する瞬間、身体に力を入れた。


ピョン!

ダガルは着地するとすぐにまた跳び上がった。

しかもプニプニボディのおかげで衝撃が全くない。


「え?まじでウマよりすごいじゃん」

馬車の揺れで尻を痛めていた俺からしたら最高の乗り心地だった。


▽ ▽ ▽


1時間ほど移動した。

ダガルの乗り心地は最高だった。


俺が想像するカエルは高く跳ぶイメージだったが、ダガル達は遠くへ長く跳ぶ。

そのおかげで、ひと跳びでものすごい進む。


ゴブリンやオークなどのモンスターと遭遇するが、ものすごいスピードで通り過ぎていった。

本当に快適だ。


メアとミランは何回か目覚めたが、そのたびに気絶している。

慣れるまで時間がかかるだろう。


▽ ▽ ▽


出発してから4時間。


先頭のジル師匠が止まった。

「ここでいったん休憩するぞ」

「「はい!」」

「「は、はい……」」

ミランとメアは疲れ切っていた。


俺とオータルは昼食の準備をし、ジル師匠はゲーダ達に餌をあげていた。


「お!大口喰らいか?」

「はい。ダンジョン用にかなり作ってもらいました」

「よし。2人の体調が良くなったら食べよう」

「「はい」」

メアとミランが復活するまで15分くらいかかった。


俺達は食事を始めた。

「ジル師匠。ペタロドでも獣人の姿の方がいいですよね?」

「うーん。時と場合によるとしか言えないな」

ジル師匠は難しい顔をした。


「ペタロドは獣王国の中でも荒くれ者が多い。それに人族もいる。当然ゼネバース皇国の人間もいるだろう」

「獣人を嫌っているのに?」

「ああ。人間の王国で良い思いをできていない冒険者が、獣人相手なら偉そうにできると思ってやってきているのだろう」

「クソ野郎ですね」

ゼネバース皇国の話を聞くたびに胸糞悪くなる。


「ペタロドのダンジョンは獣王国にあるダンジョンの中では一番危険性が少ない。だが危険なのはモンスターだけではない」

「同じ冒険者」

「そうだ。浅い階層ほど冒険者は多く、深くなればモンスターが強い。絶対に気を緩めるな」

「「「「はい!」」」」

ジル師匠の言葉で改めて気を引き締めることができた。


オータルが口を開いた。

「ジルさん。攻略はしないんですか?」

「ああ。攻略は国で禁止されている」

「攻略?」

俺は首を傾げた。


「ダンジョンの最上層にはダンジョンボスが居て、そいつを倒してダンジョンコアというものを破壊するとダンジョンは消滅する」

「消滅?」

「ああ。文字通り無くなるんだ。ペタロドはダンジョンのおかげで街が回っている。だから消滅させるのは国から禁止されているんだ」

「なるほど」

異世界感満載の話で俺のテンションは上がった。


「まあダンジョンボスまで行ける人間はほとんどいないだろう」

「そうなんですか?」

「俺が知っている限り、ペタロドのダンジョンボスを倒したことがあるのは10組もいないだろう」

「そんなに少ないんですか」

「ああ。ペタロドのダンジョンは若い時に1度来ただけだから、俺もボスは倒したことがない」

ジル師匠はなぜかニヤニヤしている。


「え?もしかしてボスまで行くつもりですか?」

「ああ。まあ様子を見てだけどな」


俺はものすごい不安を覚えた。




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